第2章 千歳緑の葉が舞って(土原ガク編)中編
六郭星学園 音楽室
私は土原さんと音楽室にいた。例の曲を聞いてもらうためにだ。
真瀬志奈
「……………………。」
私は一生懸命に演奏をする。土原さんは…………。
土原ガク
「……………………。」
いつになく真剣な表情で聞いていた。
真瀬志奈
「土原さん…………?」
土原ガク
「あっ…………。うん!とても良い曲だよー!!」
真瀬志奈
「本当ですか!?良かったです…………。」
土原ガク
「でもこれって…………。うん。」
真瀬志奈
「な、何かありましたか?」
土原ガク
「いやー。それがね…………僕のことを考えて作ったのなら、ちょっと違うかなー…………って。」
真瀬志奈
「そうですか…………やっぱり、水崎さんも同じことを言っていたので…………。」
土原ガク
「……………………。」
真瀬志奈
「あの、土原さん?さっきから様子が変ですけど…………?」
土原ガク
「えっ?…………いや、大丈夫だよー!!…………うん。でもこの曲でいこうかー!僕のことじゃなくてもとても良い曲だよー!!」
真瀬志奈
「あ、はい。わかりました…………。じゃあ、次は土原さんの演奏技術を見せてください。」
土原ガク
「良いよー!!じゃあ…………。」
土原さんは楽器を取り出した。
土原ガク
「いくよ…………!」
土原さんは演奏を始めた。その演奏技術は私を凌駕するほどの演奏技術だ。
すごい…………。とにかくすごいとしか言えない。莉緒にも聞かせたいくらいの実力だ。
だけど…………何か土原さんには言いたいことがありそうな気がする。
土原ガク
「どう!?すごいでしょー!」
真瀬志奈
「はい!…………とてもすごいです!」
土原ガク
「ありがとー!それじゃあ、練習しようか!」
真瀬志奈
「はい。頑張りましょう!」
私たちはお互いに頷き、練習を始めた。
六郭星学園 Bクラス教室
教室に戻ると、何か騒がしかった。
雪谷マコト
「ああ、2人とも!大変なことになりました!」
真瀬志奈
「大変なこと…………?」
そこには莉緒のクラスの秋葉さんもいた。
秋葉サヤ
「アケミと綿垣くんが…………!」
秋葉さんが指をさす方向を見ると綿垣さんと錦戸さんが言い合いを繰り広げていた。
真瀬志奈
「これは…………大変ですね。」
土原ガク
「……………………。」
真瀬志奈
「土原さん?また何か黙り込んでますけど…………?」
土原ガク
「うん。止めてくるよ。」
真瀬志奈
「えっ…………?」
土原さんは言い合っている2人のところへと向かう。
土原ガク
「ねえー!2人ともやめようよー!!こんなことをしてもみんなに迷惑かかるって!」
綿垣キョウゴ
「土原…………少し黙っていてくれ。」
錦戸アケミ
「こっちは色々迷惑なのよ!引っ込んでくれるかしら!」
土原ガク
「うーん。聞こえなかったのかなー!!」
土原ガク
「やめろって言ってるだろ。」
綿垣キョウゴ
「……………………!?」
錦戸アケミ
「……………………!?」
綿垣キョウゴ
「…………すまなかった。」
錦戸アケミ
「…………今日はこの辺にしておくわ。」
すごい…………!土原さんが2人を黙らせた…………?
土原ガク
「…………うん!これでよし!!じゃあねー!」
土原さんは私たちのところへ戻って来た。
雪谷マコト
「ガク…………あなたすごいですね。」
秋葉サヤ
「少し見直したかも…………。」
騒ぎを聞きつけた先生も来たようだ。
やって来たのは柳原先生だった。
柳原悠香
「あら…………騒ぎは終わったのかしら?」
雪谷マコト
「はい。何とか…………。」
土原ガク
「いやあ、本当に大変でしたよー!!」
柳原悠香
「そう…………何かありましたらまた教えてください。…………ではこれで…………。」
柳原先生は教室から離れ、すれ違いざまに水崎さんが入って来た。
水崎アサヒ
「……………………。」
真瀬志奈
「水崎さん?どうかしましたか?」
水崎アサヒ
「ガクが止めに入ったって聞いたが…………。どうやって止めに入ったんだ?」
真瀬志奈
「そうですね…………なんか…………」
私が言いかけると、土原さんが遮るように発言をする。
土原ガク
「止めに入ったって…………普通だよー!!いつものように、明るく止めに入ったんだー!!」
水崎さんは少し首をかしげたが、しばらくして納得をしたようだ。
水崎アサヒ
「そうか…………。なら構わない。でも、ガク…………もしかしてだが…………。」
土原ガク
「あは!いいからいいから!これで良いんだよー!!」
水崎アサヒ
「…………ああ。ガクがそれで良いなら。じゃあ、そろそろ部屋に戻るとする。」
水崎さんは納得はしていたが、どこか不服そうな様子で教室をあとにした。
真瀬志奈
「それじゃあ、私たちも寮に戻りましょうか。」
土原ガク
「そうだねー!!じゃあ、僕も戻るよ!莉緒くんも待っているし!…………ふぅ。」
真瀬志奈
「ため息…………?」
何か…………一瞬ため息が聞こえた気がする。不思議に思った私だが、聞き出すこともできず、寮の部屋に戻ることにした。
六郭星学園寮 志奈・アサヒの部屋
部屋に戻ると、一足先に戻っていた水崎さんが何かを考えていた。
真瀬志奈
「水崎さん、大丈夫ですか?…………何かを考えこんでいませんか?」
水崎アサヒ
「な、何でもない。…………そう言うと嘘になるな。…………少しガクのことでな。」
真瀬志奈
「土原さんですか?」
水崎アサヒ
「あのテンションでキョウゴとアケミを止めるのはなかなか難しい。どうやって止めたのか知りたいんだ。」
真瀬志奈
「……………………。」
私は思い切って、本当のことを話すことにした。




