第4章 臙脂色のマフラー(水崎アサヒ編)前編
冬。水崎さんが協力をしてくれてから数か月。とても順調に進んでいた。楽曲オーディションもまもなくだ。僕たちはこの楽曲オーディションで優勝をして、声優さんに歌ってもらうんだ。しかし、あることに悩んでいた。
真瀬莉緒
「えっと…………。水崎さんは物理が苦手なんですね?」
水崎アサヒ
「ああ、文学は得意だが理系がな…………。」
そう…………期末テストが始まる。
六郭星学園のテストは1年に1回しか行われない。しかもそのテストは1年間に学んだものが出題範囲になっている……つまりはかなり膨大な範囲のテストが行われる。
真瀬莉緒
「理科なら、愛森先生に聞けばわかるんじゃないですかね?今まで結構、お世話になっていますし、僕たちのことも覚えていると思いますよ。」
水崎アサヒ
「なるほど…………。確かに、有識者に聞くことも大事だな。じゃあ、教室に行こうか。おそらくFクラスの教室にいるだろう。行こうじゃないか。」
真瀬莉緒
「そうですね。では…………行きましょう。」
僕たちはFクラスの教室に行くことになった。
その道中…………
水崎アサヒ
「なあ、莉緒。ちょっと…………。」
真瀬莉緒
「……………………?」
水崎さんは手を差し出してきた。
…………もしかして、手をつないでほしいのかな…………?
水崎アサヒ
「……………………嫌か?」
真瀬莉緒
「いえ。…………僕で良いんですね。」
水崎アサヒ
「ああ…………莉緒。ありがとう。」
真瀬莉緒
「どういたしまして。」
僕たちは手をつないで、Fクラスの教室に向かうことにした。
六郭星学園 Fクラス教室
教室に入ると、みんながいた。
秋葉サヤ
「ああ、莉緒くん。アサヒも…………。」
錦戸アケミ
「もしかして…………2人も勉強しに?」
どうやら、みんなも理系の教科に悩んでいるみたいだ。
それにどうやら、綿垣さんと錦戸さんも和解をしたようだ。2人とも同じ教室にいる。
愛森宇蘭
「ああ、2人ともお疲れ様。勉強しに来たのね。熱心な子は大歓迎よ。色々と教えてあげるわ。頑張ってね。」
真瀬莉緒
「愛森先生。ありがとうございます。」
愛森先生に席に座るのを促され、僕たちは席に座る。
愛森宇蘭
「じゃあ、ここはね…………。」
僕たちは先生に色々なことを教えて貰い、知識を蓄えて、僕たちは自分の寮の部屋に戻った。
六郭星学園寮 莉緒・ガクの部屋
土原ガク
「いやー!勉強になったねー!!」
真瀬莉緒
「そうですね。なんとかなりそうですね。期末テスト。」
土原ガク
「そうだねー!!…………ところでアサヒとの作曲は順調かな?」
真瀬莉緒
「は、はい。なんとか順調に進んでいます。」
土原ガク
「そっか、そっかー!!頑張っていてなによりだよー!!」
土原さんは自分のことのようにとても喜んでいた。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。僕たちの頑張りが形になってきていると思います。これも土原さんのおかげです。」
土原ガク
「照れるなあ…………そう言ってもらえると!」
土原さんはもっと喜んでくれた。
土原ガク
「ところで…………作曲はもちろんだけど、歌詞の方はできているの?」
真瀬志奈
「ああ、それならですね…………。」
僕は土原さんに歌詞を水崎さんに頼んだことを話した。土原さんは微笑みながら頷いた。
土原ガク
「そうかー!アサヒが考える歌詞かー!ドキドキするね!」
真瀬莉緒
「そうですね。頼んだ僕もドキドキしています。オーディションには間に合わせるとは水崎さんも言っていましたから…………。」
土原ガク
「オーディションも近いしねー。頑張ってね!!」
真瀬莉緒
「はい。ありがとうございます!」
そして、その日は疲れた頭を癒すためにひと眠りすることに…………。
その夜…………僕は目を覚ました。
真瀬莉緒
「うーん…………どうやら、まだ夜中みたいだな…………。」
僕は少し外の空気を吸いに、中庭に行くことにした。
六郭星学園 中庭
真瀬莉緒
「ふう…………。涼しいな。」
寒い冬の中だが、今日のこの時間帯は暖かく、涼しい感じがした。
1人きりの中庭だと思っていたら…………1つの足音が聞こえた。
水崎アサヒ
「莉緒…………?」
真瀬莉緒
「水崎さん!」
水崎さんは臙脂色の長いマフラーを着けていた。とても暖かそうだ。
水崎アサヒ
「莉緒も外の空気を吸いに来たのか?」
真瀬莉緒
「はい。ちょっと涼みに…………。」
そう言うと、急激に気温が下がったような気がし、寒気がしてきた。
真瀬莉緒
「うぅ…………急に寒くなってきましたね。」
水崎アサヒ
「そうだな…………。莉緒。」
真瀬莉緒
「……………………?」
水崎さんは、長いマフラーを僕の首に巻き付けた。
真瀬莉緒
「あ…………暖かい…………。」
水崎アサヒ
「それは良かった…………。」
僕たちは、2人で長いマフラーを首に着けて、ベンチに座った。
水崎さんとマフラーをしていると体も心も暖かく感じた。
水崎アサヒ
「莉緒…………オーディションも期末テストも頑張ろう。」
真瀬莉緒
「はい。もちろんです。…………オーディションは歌詞はもう出来ているんですか?」
水崎アサヒ
「ああ、すでに完成している。けど…………オーディションの結果がわかるまでは内緒にしておきたい。」
真瀬莉緒
「……………………水崎さんが言うなら僕は気にしませんよ。」
水崎アサヒ
「ありがとう。莉緒、期待していてくれ。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
水崎アサヒ
「さ、戻ろうか。」
真瀬莉緒
「そうですね。行きましょうか。」
僕たちはそれぞれの部屋に戻ることにした。
 




