第３章 モーブスカイ（水崎アサヒ編）後編
真瀬莉緒
「な、なんだ！？」
光が消えるとそこには１人の女性がいた。
真瀬莉緒
「あ、あなたは…………？」
虹谷アヤ
「あなたが真瀬莉緒ね。私は虹谷アヤ（にじや あや）。」
真瀬莉緒
「なぜ僕の名前を…………？」
虹谷アヤ
「気にしないで。いずれわかるわ。」
真瀬莉緒
「は、はぁ…………それで、一体何をしに…………？」
虹谷アヤ
「私はある人物を追っていてね…………。その人物は容疑者なの。」
真瀬莉緒
「よ…………容疑者？一体誰が…………？」
虹谷アヤ
「決まっているでしょ？水崎アサヒ。彼女よ。」
真瀬莉緒
「水崎さんが！？一体何故…………？」
虹谷アヤ
「それは…………あなたにとっては後悔するだけよ。聞いても無駄って意味よ。」
真瀬莉緒
「無駄？それは一体どういうことですか！！」
虹谷アヤ
「あなたには関係ないわ。…………さ、彼女を連れて行くわよ。」
真瀬莉緒
「……………………！」
僕は虹谷という人の前に立ちふさがった。
虹谷アヤ
「一体、何の真似かしら？」
真瀬莉緒
「…………僕はあなたの言うことが信じられません。それに彼女が何か犯罪を犯すことなんてありえないです。どうかお引き取り願います。」
虹谷アヤ
「しかしね…………。」
真瀬莉緒
「拒んでも無駄です。僕は水崎さんのことを信じます。」
虹谷アヤ
「…………仕方ないわね。でもこれで…………また１人…………。」
真瀬莉緒
「…………？それってどういうことですか？」
虹谷アヤ
「それはあなたが後悔をするだけのことよ。では…………またどこかでお会いしましょう。」
虹谷という人はそう言うと、再びあたり一面が真っ白に光る。そして、光が消えると虹谷という人はいなくなっていた。
真瀬莉緒
「何だったんだ…………一体…………？」
僕はしばらく呆然としていたが、気持ちを切り替えて中庭をあとにしようとしたとき、ある人物に声をかけられた。
？？
「あのー…………どうかしましたか？」
真瀬莉緒
「あ、あなたは…………！」
そこにいたのは、柊木アイ(ひいらぎ あい)。この地域ではかなりの富豪の柊木家の御曹司でこの学園ではかなりの有名人だ。
真瀬莉緒
「どうして、あなたがこんなところに？」
柊木アイ
「今から、食事をとろうと思って、ここに来たんです。」
真瀬莉緒
「食事ですか。邪魔してはいけませんね。」
柊木アイ
「食事と言っても…………これです。」
真瀬莉緒
「えっ…………！？」
弁当箱には、白米に梅干しが付いていただけ。しかも、ご飯は糸を引いている。
真瀬莉緒
「どうしてこんな…………！？」
柊木アイ
「色々あるんです。気にしないでください。」
真瀬莉緒
「……………………。」
柊木アイ
「ところで、誰かを探しているんですか？何かキョロキョロしていた様子が見えましたから…………。」
真瀬莉緒
「……………………水崎アサヒと言う人を探しています。心当たりありませんか？」
柊木アイ
「ああ、彼女なら、音楽室に居ましたよ。」
真瀬莉緒
「音楽室ですか！？何故そこに…………？」
柊木アイ
「それはわかりません。でも何か一生懸命な様子が見られましたよ。」
真瀬莉緒
「一生懸命に…………？まさか…………すみません。ありがとうございました。」
柊木アイ
「う、うん…………。」
僕は柊木さんにお礼を言って、音楽室に向かった。
六郭星学園 音楽室
音楽室に入る。水崎さんは…………いた。柊木さんが言っていた様に、一生懸命に楽器を弾いていた。
水崎アサヒ
「ああ、莉緒…………これは…………。」
真瀬莉緒
「水崎さん。やっぱり、音楽が好きなんですね。」
水崎アサヒ
「……………………。」
水崎さんはうつむいた。
真瀬莉緒
「水崎さん…………協力はできないんですか？この曲には水崎さんの力が必要なんです。」
水崎アサヒ
「…………すまない。やはり協力はできない…………。」
真瀬莉緒
「そんな…………！？」
水崎アサヒ
「すまない…………私は…………！」
土原ガク
「また逃げるのですか？」
そこにはいつの間にか土原さんがいた。あのときのテンションで。
土原ガク
「アサヒ…………あなたの実力は本物です。きっと莉緒の助けになりますよ。あなたの才能を生かしてください。」
水崎アサヒ
「ガク…………その性格は…………！でも…………私にできるのか？」
土原ガク
「ええ。あなたならできます。アサヒ…………。」
水崎アサヒ
「……………………？」
土原ガク
「強くあれ。そして、前だけを向いて夢を追いかけるんです。」
水崎アサヒ
「……………………！」
土原ガク
「僕も…………頑張ります。だから…………アサヒも。」
水崎アサヒ
「ガク…………。ありがとう。」
真瀬莉緒
「水崎さん…………。」
水崎アサヒ
「莉緒。私はもう逃げない。その作曲、ぜひ協力させてほしい。」
真瀬莉緒
「水崎さん…………ありがとうございます。」
土原ガク
「これでオッケーだねー！！それじゃあ、アサヒー！頑張ってね！！」
僕は土原さんに頭を下げ、それを見た土原さんは手を振り、音楽室から出て行った。
真瀬莉緒
「さて…………水崎さん。早速始めますか。」
水崎アサヒ
「ああ。演奏を聞かせてくれ。」
真瀬莉緒
「はい。…………では早速…………。」
僕は水崎さんに作曲した演奏を聞いてもらう……………………。
演奏が終わる。演奏を聞いた水崎さんはとても嬉しそうだった。
水崎アサヒ
「さすがだ莉緒…………。でも、もっとこうすれば…………。」
そう言うと、水崎さんは楽器を持ち出して、演奏を始める。
水崎さんの演奏はかなりの実力だ。それも楽しそうに演奏をしている。何かが吹っ切れたのかもしれない。
真瀬莉緒
「すごいです。さすが、水崎さんです。」
水崎アサヒ
「ありがとう。今、心から楽しいと思えたよ。ずっと苦しんで、楽器を演奏していた。…………けれど、やっぱり音楽は嫌いになれなかった。クラシックコンサートに行ったり、声優さんのＣＤを聞いたり。莉緒のおかげだ。改めてお礼を言いたい。ありがとう。莉緒。」
真瀬莉緒
「水崎さん…………頑張りましょう！」
水崎アサヒ
「ああ。それに、この曲はまだまだ手直しが必要だからな。頑張るぞ莉緒！」
真瀬莉緒
「はい！」
外を見るといつの間にか、紫に空が染まっていた。それだけ時間が経っていたんだろう。
僕は水崎さんとの作曲作りに本格的に始める。短い時間だけど、絶対に合格をして見せる…………！
