第3章 モーブスカイ(水崎アサヒ編)中編
土原さんは淡々と水崎さんのことについて話し始めた。
土原ガク
「アサヒが音楽を嫌うきっかけになったのは、梶木のせいなんです。」
真瀬莉緒
「梶木…………聞いたことのあるような…………?」
土原ガク
「アサヒは元々、コンクールに音源を提出するほどの音楽好きなんです。しかし…………ある人物の主催のコンクールで心をへし折られました。」
真瀬莉緒
「それが梶木…………。」
土原ガク
「はい。ただ…………アサヒはそのコンクールで大賞を取りました。」
真瀬莉緒
「それはすごいじゃないですか!…………でも何故、音楽が嫌いに…………?」
土原ガク
「繰り上げ大賞だったんです。大賞を取った人物が辞退をし…………その結果、大賞は取ったものの…………梶木が気に入らなかったのか…………そのコンクール自体がなかったことになったんです。」
真瀬莉緒
「そんな…………!?酷過ぎます!そんなことをしたら、これまでのやって来たことが…………!」
土原ガク
「その結果、アサヒは音楽を嫌いになったんです。」
真瀬莉緒
「そうだったんですね…………。」
土原ガク
「アサヒの件は以上です。では…………。」
真瀬莉緒
「……………………?」
土原ガク
「やっほー!!莉緒!元気にしてる!?」
真瀬莉緒
「あ、ああ…………。元に戻ったんですね。」
土原さんはいつものテンションに戻り、真面目なときのテンションは他のみなさんには内緒にしてほしいと懇願された。
僕は断ることもなく、真面目な様子の土原さんのことを黙ることにした。
土原ガク
「それじゃあ、出かけようか!」
真瀬莉緒
「出かけるってどこにですか?」
土原ガク
「決まっているじゃない!アサヒのところに行こうよー!!」
真瀬莉緒
「ああ、水崎さんのところですね。…………そういえばなかなか会っていないような気もします。」
土原ガク
「でしょでしょー!だから僕たちからアサヒにアプローチをしに行くんだー!…………名案でしょ?」
真瀬莉緒
「そうですね。せっかくなら水崎さんのところに行きましょうか。」
土原ガク
「それじゃあ、レッツゴー!!」
僕たちは水崎さんのいる女子寮に向かうため、まずは許可取りをするため、職員室に向かった。
六郭星学園 職員室
真瀬莉緒
「失礼します…………。」
職員室には愛森先生がいた。
愛森宇蘭
「おや…………真瀬くんじゃない。今日はどうしたの?」
真瀬莉緒
「実はこういう事情があって…………。」
僕はありのままを愛森先生に話した。
愛森宇蘭
「そうね…………私が同行するなら構わないけれど…………。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。では…………。」
ギギ……ガガ…………。
僕が水崎さんの部屋に行こうとしたとき…………
真瀬莉緒
「えっ…………。」
ギギ……ガガ…………。
耳鳴り……?くっ……苦しい……!
ギギ……ガガ…………。
真瀬莉緒
「ぐっ……ああああ…………!」
愛森宇蘭
「だ…………大丈夫!?」
僕はその一言で何とか意識を取り戻せた。
真瀬莉緒
「はぁ…………はぁ…………。」
愛森宇蘭
「今日は休んだ方が良いかもしれないわね…………。急ぐことでもないんでしょ?」
そういうと、土原さんは沈黙を破り、いつものテンションで答えた。
土原ガク
「莉緒くんは急いでます!先生もどうか協力をお願いします!!」
愛森宇蘭
「土原くん…………わかったわ。行きましょう。」
愛森先生がそう言い、僕たちは女子寮へと向かうことにした。
六郭星学園寮 志奈・アサヒの部屋
愛森宇蘭
「真瀬さん。入るわよ。」
愛森先生は断りを入れて、姉さんと水崎さんのいる部屋に入った。
愛森宇蘭
「良いわよ。入って来て。」
真瀬莉緒
「入るね。姉さん。」
真瀬志奈
「あ、莉緒。」
真瀬莉緒
「ごめんね。急に入って来て。実は…………。」
僕は姉さんに、これまでの経緯を話した。
真瀬志奈
「そうだったのね…………。アサヒね…………。」
真瀬莉緒
「でも無理に音楽をやらせようとしても良い音楽は作れないから…………。」
真瀬志奈
「でもあなたはアサヒに作曲の手伝いをして欲しいんでしょ?」
真瀬莉緒
「そうだけど…………。」
真瀬志奈
「だったらやるしかないじゃない!アサヒはこれまで音楽が嫌いって言ったことはあるの?」
真瀬莉緒
「そういえば…………無いな。」
言われてみれば、水崎さんはクラシックコンサートに誘ってくれたり、作曲を依頼した声優さんのこれまでの音楽を聞いて参考にしたり…………僕のために協力をしてくれていた。もしかすると…………。
真瀬志奈
「アサヒには、あと一押しが必要なのよ!莉緒…………アサヒのためにも頑張って!」
真瀬莉緒
「…………わかった。ありがとう姉さん!」
僕は部屋から出る前に、あることを聞く。
真瀬莉緒
「ところで姉さん。水崎さんのいる場所はわかるかい?」
真瀬志奈
「アサヒのいる場所ねえ…………。そういえば今日は出かけるときに、何も言わずにどこかに出かけて行ったわね。」
真瀬莉緒
「そうか…………手当たり次第に探すことにするか。」
真瀬志奈
「そうね。…………莉緒。頑張ってね。」
僕は頷き、土原さんと手分けして探すために、部屋をあとにした。
六郭星学園 中庭
手分けして探すために、土原さんと別れ、僕は中庭を探すことになった。
真瀬莉緒
「ここには水崎さんはいないのかな?」
僕があたりを見渡すと、一面が真っ白に光った。




