第4章 水色の水槽に囲まれて(錦戸アケミ編)後編
某所 会議室
僕たちはとある会議室にいた。いよいよ声優さんに音源を聞いてもらう日が来た。
真瀬莉緒
「いよいよですね。緊張していますか?」
錦戸アケミ
「うん…………ちょっとだけね。」
真瀬莉緒
「大丈夫です。優しい人ではありますから。」
錦戸アケミ
「そうだと良いんだけど…………。」
僕たちが話をしていると、会議室のドアがノックされた。
真瀬莉緒
「…………来たみたいです。」
僕は会議室のドアを開ける。そこには依頼してくれた声優さんがいた。マネージャーさんも一緒だ。
真瀬莉緒
「お久しぶりです。今日はよろしくお願いいたします。」
僕は錦戸さんに挨拶を促した。
錦戸アケミ
「はじめまして。錦戸アケミと申します。今回は真瀬さんと協力して作曲に携わらせていただきました。よろしくお願いいたします。」
錦戸さんがそう言うと、声優さんは握手を求めてきてくれた。
錦戸アケミ
「あっ…………ありがとうございます!」
錦戸さんはとても嬉しそうだ。僕もそれを見て嬉しくなった。
席に座ると、軽い雑談が始まった。作曲とは関係ないが、雑談はとても楽しかった。
…………そして、いよいよ本題に入る。
錦戸アケミ
「まずはこちらを見てください。」
錦戸さんは声優さんに歌詞の書いた紙を渡す。
声優さんは歌詞の書いた紙をじっくりと見る。
真瀬莉緒
「音源はこちらです。拝聴の方をお願いいたします。」
僕は音源を流す…………。声優さんは歌詞を見ながら音源を聞いている。
反応はどうだろうか…………?
僕は声優さんの顔を見ると…………
とても喜んでいた。
真瀬莉緒
「それじゃあ…………!」
声優さんは僕たちの作曲した音楽を手直しなしで歌ってくれることになった。
真瀬莉緒
「あ、ありがとうございます!」
錦戸アケミ
「ありがとうございます!」
僕たちは声優さんにお礼を言う。
マネージャー
「こちらこそありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。」
マネージャーさんもお礼を言う。
その後は軽い雑談を再び繰り広げ、ミーティングはお開きになった。
帰り道
真瀬莉緒
「やりましたね。」
錦戸アケミ
「ええ、本当に…………良かった。莉緒…………ありがとう。」
真瀬莉緒
「…………どういたしまして。」
錦戸アケミ
「ねえ、莉緒。この曲が歌われる日に…………話したいことがあるの。」
真瀬莉緒
「話…………ですか?」
錦戸アケミ
「ええ。それまでは内緒だけど、受け止めてくれるかしら…………?」
真瀬莉緒
「…………もちろんです。どんなことでも受け止めます。」
錦戸アケミ
「ふふ…………ありがとう。」
そして、学園が見えてきた。
真瀬莉緒
「着きますね。」
錦戸アケミ
「ええ。莉緒。忘れないでね。この話を。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
そして、僕たちは学園に戻った。
それから数週間後…………大切なイベントが始まる…………。
六郭星学園 大講堂
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
矢次由佳里
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
矢次由佳里
「真瀬莉緒。」
真瀬莉緒
「はい。」
始めに男子が呼ばれる……そして、みんなの名前もそれぞれ呼ばれる。
矢次由佳里
「秋葉サヤ。」
秋葉サヤ
「はい。」
矢次由佳里
「錦戸アケミ。」
錦戸アケミ
「はい。」
矢次由佳里
「水崎アサヒ。」
水崎アサヒ
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
矢次由佳里
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
錦戸アケミ
「みんな同じ大学に進学するのね…………。」
秋葉サヤ
「しかも、期末テストの上位50人が同じ大学に進学するなんてね。」
水崎アサヒ
「不思議なものだな。世の中は。」
そう。僕たちは同じ大学に進学することになった。
水崎アサヒ
「そういえば、今日だったな。2人の作曲の発表は。」
秋葉サヤ
「期待しているわ。きっと良い曲を聴けるはずだから!」
真瀬莉緒
「ええ、今日の夜に動画投稿サイトでミュージックビデオが投稿される予定です。」
錦戸アケミ
「ええ…………。楽しみにしていてね。」
水崎アサヒ
「2人は一緒に聴くんだな。2人の時間を堪能してくれたまえ。」
真瀬莉緒
「はい。今からワクワクです!ね、錦戸さん?」
錦戸アケミ
「……………………。」
真瀬莉緒
「錦戸さん?」
錦戸アケミ
「ん?…………ああ、そうね。」
真瀬莉緒
「……………………?」
錦戸さんはどこかぎこちないが僕は夜を楽しみに待つことにした。
そして、その夜になろうとしたとき…………
真瀬莉緒
「錦戸さんがいない…………!?」
矢次由佳里
「ええ、どこにいるのか…………もうすぐだっていうのに…………。」
真瀬莉緒
「錦戸さんが行きそうなところ…………?」
僕は考えると、ある人物が思い浮かんだ。
真瀬莉緒
「綿垣さん…………!」
僕は急いで綿垣さんのところへ向かう。
六郭星学園寮 莉緒・キョウゴの部屋
綿垣さんは部屋にいた。僕は綿垣さんに錦戸さんの居場所を聞いた。
綿垣キョウゴ
「…………錦戸は…………真瀬。お前と錦戸の知っている場所にいる。」
真瀬莉緒
「…………僕の知っている場所?…………まさか!」
僕は錦戸さんがいるであろう場所に行くことにした。
六郭星水族館
ここだ…………錦戸さんのお気に入りの場所だ。
錦戸さんは…………。
錦戸アケミ
「………………莉緒。ごめん。」
真瀬莉緒
「探しましたよ…………。でも…………どうしてここに?」
錦戸アケミ
「どうしてもここで聞きたかったの。」
真瀬莉緒
「ここで…………?」
ここは錦戸さんにとってお気に入りの場所だ。水色の水槽に囲まれている。
真瀬莉緒
「…………あっ。始まりますよ!」
僕はすかさずスマホを見る。
錦戸さんと僕は肩を並べて音楽を聴く…………。
女性声優
「聞いてください!彼女に秘めた思いと心を…………!!」
声優さんのコールとともに音楽が流れる…………
曲が終わり僕は理解をした。どんなに辛くても、苦しくても…………きっと。
錦戸アケミ
「莉緒。この間の話なんだけど…………。」
真瀬莉緒
「錦戸さん…………。話はわかりました。」
錦戸アケミ
「それでも…………言わせてほしい。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
錦戸アケミ
「莉緒…………。好きです。私じゃ…………ダメですか?どんなに辛くても…………苦しくても…………私はあなたのそばにいます。…………私と付き合ってください!!」
真瀬莉緒
「…………錦戸さん…………決まっているじゃないですか。」
錦戸アケミ
「…………莉緒…………!」
真瀬莉緒
「僕でよければ…………よろしくお願いいたします。」
錦戸アケミ
「ありがとう…………莉緒。」
真瀬莉緒
「アケミ…………。」
僕たちは水色の水槽に囲まれながら、強く抱きしめた。
虹谷アヤ
「彼女は違うのね…………すると他の誰かなのね…………。」
錦戸アケミ 完




