第3章 カナリア色の花々(錦戸アケミ編)後編
商店街
あの場所へ向かうためにはバスに乗る必要がある。しかし、もうこの時間は学園からのバスは運行していない。
なので商店街からのバスに乗り、あの場所へ行くことにした。
この時間帯の商店街は人混みがすごい。
真瀬莉緒
「ん…………?あの人は…………?」
以前、夏祭りで会った、名雲さんに遭遇した。
名雲メイ
「真瀬さん?どうしてこんなところに?」
真瀬莉緒
「…………人を探していましてね。名雲さん。錦戸さんは見ましたか?」
名雲さんはしばらく考えると思いついた様子が見られた。
名雲メイ
「さっきここのバスに乗り込んで行ったわよ!確か…………ごめんなさい。行き先は忘れたわ。」
真瀬莉緒
「それで十分です。ありがとうございました。」
名雲メイ
「いえ、また何かあればお会いしましょう。」
僕はお礼を言ってあの場所へと向かうことにした。
六郭星水族館
ここだ。おそらく錦戸さんがいるであろう場所は。僕たちが初めて2人で来た場所であり、錦戸さんが好きな場所だ。
僕が水族館に入ると、人混みは少なかった。これなら探しやすそうだ。
櫻井シオン
「莉緒?」
真瀬莉緒
「シオン!どうしてここに?」
櫻井シオン
「ええ。莉緒のパートナーがいたから、なんとなくついてきたの。あの怪我でどこに行くかと思って…………」
真瀬莉緒
「錦戸さんがここにいるんだね!」
櫻井シオン
「ええ。人混みのない場所にいるわよ。…………何かあったの?」
真瀬莉緒
「シオン。ありがとう。錦戸さんと2人にさせてくれないか?話さないといけないことがあるから。」
櫻井シオン
「……………………わかった。何があったかわからないけど、莉緒を信じているから。」
真瀬莉緒
「ああ。じゃあ、行くよ。」
僕は錦戸さんのお気に入りの場所へ向かうことにした。
…………錦戸さんのお気に入りの場所に着いた。本人は…………いた。
錦戸アケミ
「……………………。」
真瀬莉緒
「見つけましたよ。錦戸さん。」
錦戸アケミ
「莉緒…………。」
真瀬莉緒
「みなさん心配していたんですよ。」
錦戸アケミ
「……………………ええ。」
錦戸さんはあまり良い表情をしていない。
真瀬莉緒
「……………………錦戸さん。」
錦戸アケミ
「……………………?」
真瀬莉緒
「もう心配しなくて大丈夫ですよ。」
錦戸アケミ
「莉緒…………。」
真瀬莉緒
「綿垣さんのこと…………心配なんですよね。もう…………良いんですよ。」
錦戸アケミ
「私…………。」
真瀬莉緒
「だから…………もう帰りましょう。」
錦戸アケミ
「う…………うわああん!!」
錦戸さんは僕を抱きしめて、泣き崩れた。
真瀬莉緒
「辛かったでしょう。さ、戻りましょう。みなさんが待ってます。」
錦戸アケミ
「ええ…………ええ…………!」
僕たちはみんなが待っている、学園へ戻ることにした。
帰り道
帰り道。遠い道を徒歩で帰る。互いに無言の雰囲気が続く。そんなとき、ぼくたちの目には黄色い花畑が見えた。
真瀬莉緒
「あ…………花畑ですね。」
錦戸アケミ
「そうね…………カナリア色の花ね。」
真瀬莉緒
「カナリア…………?」
錦戸アケミ
「黄色い色でカナリア色って言うの。とても鮮やかな色をしているでしょ。」
真瀬莉緒
「へえ…………。」
錦戸アケミ
「そうだわ。莉緒。ちょっと待ってね。」
真瀬莉緒
「……………………?」
僕は錦戸さんが何をするのかを見る。何か花を結んでいる。
錦戸アケミ
「はい。」
錦戸さんは、僕の頭に花飾りを乗せた。
錦戸アケミ
「ふふ…………似合っているわよ。」
錦戸さんの微笑みに僕もつられて笑みを浮かべる。
真瀬莉緒
「ありがとうございます。大切にしますね。」
錦戸アケミ
「ふふ…………。どういたしまして。」
真瀬莉緒
「…………もうしばらくここにいましょうか。」
錦戸アケミ
「そうね。もう少し休んでいきましょう。」
僕たちはしばらく休んだあと、学園に戻ることにした。
六郭星学園 校門
学園の校門に着くと、矢次先生たちが迎えてくれた。綿垣さんもいる。
矢次由佳里
「良かった…………心配したのよ!もう…………。」
凪野雪緒
「まあまあ。真瀬もよく頑張ったな。」
真瀬莉緒
「僕はそんなに頑張ってませんよ。錦戸さんが頑張りました。」
凪野雪緒
「そうか…………。そうだな!」
錦戸アケミ
「……………………。」
綿垣キョウゴ
「錦戸。」
真瀬莉緒
「あ…………綿垣さん…………。」
綿垣キョウゴ
「その…………なんといえば良いのか…………。」
錦戸アケミ
「もういいの。…………私も…………悪かった。」
綿垣キョウゴ
「錦戸…………すまなかった。…………俺も…………逃げない。」
錦戸アケミ
「ええ。頑張って。」
真瀬莉緒
「……………………良かった。」
どうやら2人は和解できたようだ。
錦戸アケミ
「莉緒。」
真瀬莉緒
「………………?」
錦戸アケミ
「改めて…………ありがとう。」
真瀬莉緒
「…………どういたしまして。」
僕たちはそういうと、それぞれの部屋に戻り、深い眠りについた。
それから数日が経ち…………
六郭星学園 音楽室
僕たちは音楽室で久しぶりに作曲を行っていた。錦戸さんの傷はすっかりと癒えて、身体が軽いようだ。
そのせいか、得意な楽器を演奏すると、前よりも上手くなっている。お見事だ。
錦戸アケミ
「いよいよね…………この曲の完成が近いのは。」
真瀬莉緒
「はい。では…………全体を通して演奏しましょう。」
錦戸アケミ
「ええ、じゃあ…………行くわよ。」
僕たちは本番のときのように演奏を始める…………!
演奏を終えると僕たちは互いに笑みを浮かべる。
錦戸アケミ
「決まったわね。」
真瀬莉緒
「はい。今までで最高の演奏になりましたね。」
錦戸アケミ
「ええ。これならきっと…………!」
錦戸さんは自信満々だ。その自信に僕も自信がわく。
この調子なら、良い曲が完成できそうだ。
でもその前にはまず、声優さんに音源を聞いてもらわないといけない。
道のりは正直長いかもしれない。
錦戸アケミ
「大丈夫よ。莉緒とならきっとできるわよ。この曲は大切な思い出になるわ。」
真瀬莉緒
「錦戸さん…………そうですね!頑張りましょう!」
錦戸さんからエールをもらった。錦戸さんの自信から考えると多分、大丈夫そうだろう。
僕らの曲、声優さんに認めてもらうんだ!




