第3章 カナリア色の花々(錦戸アケミ編)前編
秋。あの日から何ヶ月が経ったんだろう。錦戸さんは無事だったが、怪我は治るのにまだ時間が必要だそうだ。
錦戸さん本人には意識があるが、僕は怪我が心配で仕方がない。
六郭星学園 Hクラス教室
錦戸アケミ
「……………………。」
錦戸さんは元気がなさそうだ。
水崎アサヒ
「アケミ。本当に大丈夫なのか?」
水崎さんも心配している。もちろん秋葉さんも。
秋葉サヤ
「アケミ…………。」
錦戸アケミ
「だ、大丈夫よ。これくらい…………くっ。」
真瀬莉緒
「錦戸さん!」
僕は倒れそうになる錦戸さんを抱えた。
真瀬莉緒
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
錦戸アケミ
「莉緒…………。…………ごめん。」
真瀬莉緒
「えっ…………。」
水崎アサヒ
「とりあえず今日は休んだほうが良いだろう。先生には言っておくから、寮に戻りたまえ。」
真瀬莉緒
「そうですね。秋葉さん、お供をお願いします。」
錦戸アケミ
「…………いや。私は莉緒が良い。」
真瀬莉緒
「ぼ、僕ですか…………?」
錦戸アケミ
「他に誰がいるのよ。お願い。」
真瀬莉緒
「……………………。」
女子寮に入るのは少し気が引けるけど、そこまで言うなら仕方ない。
真瀬莉緒
「わかりました。」
すると、教室に矢次先生が来た。
矢次由佳里
「話は聞こえたわ。私も同行するから、莉緒。一緒に行きましょう。」
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いします。」
僕は矢次先生と一緒に、女子寮に行くことにした。
六郭星学園寮 志奈・アケミの部屋
僕は矢次先生と錦戸さんを連れて、寮の部屋に入る。
真瀬莉緒
「はい。錦戸さん。ベッドで寝ましょう。今日は安静にしてください。」
錦戸アケミ
「ええ…………。」
錦戸さんはベッドに横になる。
矢次由佳里
「さ、戻りましょう。ここにいても迷惑だし。」
真瀬莉緒
「は、はい。」
錦戸アケミ
「はぁ…………はぁ…………。」
真瀬莉緒
「錦戸さん?」
錦戸さんの呼吸が荒くなる。意識がもうろうとしているのだろう。
錦戸アケミ
「キョウゴ…………どうして…………?」
真瀬莉緒
「えっ…………?」
錦戸アケミ
「キョウゴ…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
なぜ、綿垣さんのことを…………?
真瀬莉緒
「錦戸さん…………。」
矢次由佳里
「行きましょう。今は1人にさせておきましょう。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
六郭星学園 中庭
矢次先生と別れたあと、僕は中庭に来た。
秋風が肌寒い中、僕は綿垣さんと錦戸さんのことを考え込んでいた。
真瀬莉緒
「錦戸さんと綿垣さん…………か。」
考え込んでいると、そこに眩い光が辺り一面を照らした。
真瀬莉緒
「な、なんだ!?」
光が消えるとそこには1人の女性がいた。
真瀬莉緒
「あ、あなたは…………?」
虹谷アヤ
「あなたが真瀬莉緒ね。私は虹谷アヤ(にじや あや)。」
真瀬莉緒
「なぜ僕の名前を…………?」
虹谷アヤ
「気にしないで。いずれわかるわ。」
真瀬莉緒
「は、はぁ…………それで、一体何をしに…………?」
虹谷アヤ
「私はある人物を追っていてね…………。その人物は容疑者なの。」
真瀬莉緒
「よ…………容疑者?一体誰が…………?」
虹谷アヤ
「あなたのパートナー。錦戸アケミよ。」
真瀬莉緒
「錦戸さん…………!?」
虹谷アヤ
「ええ。錦戸アケミ。彼女は容疑者。しかもものすごい大きい罪。」
真瀬莉緒
「そんな…………。」
虹谷アヤ
「それじゃあ、彼女を連れて行くわよ。」
真瀬莉緒
「ま、待ってください!!」
僕は思わず、虹谷という人の腕を掴んだ。
虹谷アヤ
「離して。」
真瀬莉緒
「ダメです。僕が保証します。錦戸さんは何もしていない。あんな性格でも根は良い子なんです。そんな錦戸さんを捕まえるだなんて…………僕が許しません!」
虹谷アヤ
「……………………。」
真瀬莉緒
「どうかお引き取りください。お願いします。」
虹谷アヤ
「仕方ないわね…………。だけど…………後悔しないことね!」
虹谷という人がそう言うと、再び辺り一面が光に包まれた。
真瀬莉緒
「くっ…………!」
再び光が消えると、虹谷という人はいなくなっていた。
真瀬莉緒
「一体なんだったんだろう…………?」
僕は頭を切り替えて、教室へ行くことにした。
六郭星学園 Hクラス教室
教室に向かうと、そこには水崎さんたちだけでなく、姉さんのクラスメイトの土原さんと雪谷さんがいた。
水崎アサヒ
「ちょうど良いところに!ガクとマコトに、キョウゴについて話をしていたところなんだよ。」
真瀬莉緒
「綿垣さんですか?…………ああ。そうですね…………。」
僕も色々と話すことがある。2人に聞いてみようか。
真瀬莉緒
「雪谷さんと土原さんは綿垣さんのストーカーの話は聞いたことありますか?」
雪谷マコト
「ストーカーですか…………?ああ、そういえば気になったことはありますね。」
真瀬莉緒
「気になったこと?」
雪谷マコト
「はい。真瀬さんのお姉さんを含めた4人で遊ぶことが多いんですけど、毎回キョウゴは1人で帰るんです。」
真瀬莉緒
「1人で…………?」
土原ガク
「キョウゴは1人が好きなのかなー?」
雪谷マコト
「ガク。静かに。」
土原ガク
「はいはい。」
雪谷マコト
「1人で帰るというよりかは…………毎回、いろんな女子に絡まれるというか、喧嘩を売られるんですよ。キョウゴはそれに渋々、乗っかっているんです。その喧嘩のあとに女の人は怪我をしているんですよ。」
真瀬莉緒
「それって、まさか綿垣さんが…………って思いますね。」
雪谷マコト
「ええ。ただ、ストーカーがいるって聞くと、キョウゴ以外の可能性も高くなりますね。」
秋葉サヤ
「綿垣さんか…………ストーカーはどうして綿垣さんを…………?」
土原ガク
「好きなのかもしれないねー!」
水崎アサヒ
「いや、それはないだろう。本人に聞いてみるしかないかもしれない。」
土原ガク
「それじゃあみんなで行こうじゃないか!」
雪谷マコト
「いえ。何人かにしましょう。キョウゴも嫌がりますし。」
真瀬莉緒
「そうですね。じゃあ…………誰が行きましょうか?」
雪谷マコト
「ここはやはり、真瀬さんにお願いしましょう。2人のほうがキョウゴも話しやすいでしょうし。」
水崎アサヒ
「私も賛成だ。莉緒。すまないが頼む。」
真瀬莉緒
「わかりました。僕も綿垣さんとは話したほうが良いと感じていますし、ここは任せてください。」
雪谷マコト
「よろしくお願いします。錦戸さんのためにも、キョウゴのためにも。」
真瀬莉緒
「………………はい。」




