第2章 黄緑色の水風船(錦戸アケミ編)中編
六郭星学園 音楽室
運動会から日にちが経ち、僕と錦戸さんは音楽室にいた。
錦戸さんに今現在の曲のフレーズを聞いてもらう。
錦戸さんは曲を聞き終わると、拍手をしてくれた。
錦戸アケミ
「なるほど…………確かにこれは私にも弾けるわ。楽器を貸して。」
真瀬莉緒
「良いですけれど…………大丈夫ですか?その怪我で楽器を弾くなんて…………。」
錦戸アケミ
「大丈夫よ。ほら!」
錦戸さんは意気揚々と楽器を演奏をする。怪我というハンデを背負いながら、この演奏技術とは…………本物だ。演奏が終わると僕は拍手をしていた。
真瀬莉緒
「お…………お見事です。」
錦戸アケミ
「ありがとう。私はこの楽器が弾けることだけが取り柄なんだから。」
真瀬莉緒
「そんなことないですよ。」
錦戸アケミ
「そ、そう?そう言われると嬉しいわね…………。」
真瀬莉緒
「ええ、僕と錦戸さんの演奏技術があれば、この曲も良い曲になるはずです。…………協力してくれませんか?」
錦戸アケミ
「うーん…………。」
錦戸さんは音楽室の窓を眺めながら、しばし考え込んでいた。しばらく考え込んでいるうちに僕のところへ戻ってきた。
錦戸アケミ
「………………良いわ。協力してあげる。…………ただ、きっとあいつの助言でお願いしたんでしょ?」
真瀬莉緒
「………………はい。」
僕は隠すことなく、答えた。
錦戸アケミ
「そこは納得できないけれど…………まあ良いわ。よろしくね。莉緒。」
真瀬莉緒
「はい。よろしくお願いいたします。」
こうして、僕たちの特訓が始まろうとしている。
錦戸さんの演奏はお見事だ。僕は錦戸さんの力を借りながら、曲を完成させる。
しばらく練習すると、ある程度のフレーズが完成できた。
真瀬莉緒
「思いの外、スムーズに進みましたね。」
錦戸アケミ
「ええ、これなら順調に進みそうね。」
真瀬莉緒
「はい。…………どこかに行きましょうか?」
錦戸アケミ
「それ、名案ね。じゃあ、どこへ行くの?」
真瀬莉緒
「そうですね…………うーん…………展望台に行きますか。」
錦戸アケミ
「良いわね。行きましょう。」
真瀬莉緒
「はい。」
僕たちは山の上の展望台に行くことにした。
六郭星学園 中庭
中庭に行くと、見覚えのある、女子生徒がいた。
??
「あ、莉緒!」
真瀬莉緒
「おお、シオンか!久しぶり!」
この子は櫻井シオン(さくらい しおん)。かつて六郭星学園が合併する前に僕が在籍していた学校のときのクラスメイトだ。僕は時々、彼女に音楽のことで色々と教えあっていたが、合併後はあまり接点を持つことはなかったが、こうして会うと楽しくなる。
櫻井シオン
「久しぶりね!元気にしてた?」
真瀬莉緒
「ああ、なんとかね。」
櫻井シオン
「…………そう。この子は…………もしかして莉緒の課題のパートナー?」
錦戸アケミ
「ええ。…………錦戸アケミ。よろしくね。」
櫻井シオン
「あっ…………。あなたが…………。そう…………莉緒も大変ね。」
真瀬莉緒
「そんなことはないよ。俺は錦戸さんと組めて良かったと思うよ。」
櫻井シオン
「おっ…………!それって…………?」
錦戸アケミ
「ちょっと…………照れるじゃない…………。」
錦戸さんは頬を赤らめた。余計な一言だったのかな…………?
櫻井シオン
「まぁ…………とりあえず頑張ってね。私は行くから。」
シオンは心配そうに僕のことを見て、その場をあとにした。
真瀬莉緒
「それじゃあ、行きましょうか。展望台の方へ。」
錦戸アケミ
「そうね。…………莉緒。」
真瀬莉緒
「……………………?」
錦戸アケミ
「ありがとう。私のことを。組めて良かったって。」
真瀬莉緒
「…………どういたしまして。」
僕はお礼を言って、展望台に向かう。
六郭星展望台
展望台に着いた。特に目的はないが…………僕は何をしようか迷っていた。
錦戸アケミ
「……………………。」
錦戸さんを少し戸惑わせている。
真瀬莉緒
「錦戸さん…………あの…………。」
錦戸アケミ
「景色…………綺麗ね。」
真瀬莉緒
「…………そうですね。」
錦戸アケミ
「さっきはありがとう。改めてお礼を言うわ。」
真瀬莉緒
「錦戸さん…………。」
錦戸アケミ
「…………くっ。」
真瀬莉緒
「錦戸さん?」
錦戸さんの腕が震えていた。以前に怪我をしたところだ。
真瀬莉緒
「大丈夫ですか!?今すぐ保健室に行きましょう。」
錦戸アケミ
「え、ええ…………。」
僕たちは保健室に向かうことにした。
六郭星学園 保健室
??
「…………怪我ですか。」
真瀬莉緒
「はい…………急に腕を痛め始めて…………。」
僕は近くにいた、成瀬実先生に報告をして、矢次先生に怪我の様子を見てもらっている。
成瀬実
「やっぱり…………彼が…………?」
真瀬莉緒
「彼って…………?」
成瀬実
「綿垣キョウゴくんです。彼には良くない噂がありますからね…………ただ…………。」
真瀬莉緒
「ただ…………?」
成瀬実
「どうも彼にはストーカーがいるみたいなんです。」
真瀬莉緒
「ストーカー?」
成瀬実
「ええ。まだ確証ってわけではないですが…………。」
真瀬莉緒
「そうですか…………。」
そう呟くと保健室のカーテンが開く。錦戸さんの手当が終わったみたいだ。
真瀬莉緒
「錦戸さん…………。大丈夫なんですね。」
錦戸アケミ
「え、ええ…………なんとかね。」
矢次由佳里
「今日は安静にしていたほうが良いわ。…………無理しないでね。」
錦戸アケミ
「…………はい。」
錦戸さんはそう言うと僕の手を繋ぎ、保健室を出ようとする。
僕はその流れに身を任せ、廊下へ出た。
六郭星学園寮 莉緒・キョウゴの部屋
綺羅星メルマ
「みんなー!!今日も元気にしてたかな!?今日も盛り上がりましょー!」
錦戸さんと解散したあと、僕は自分の部屋に戻った。今はメルマの動画を視聴している。
真瀬莉緒
「メルマ…………。」
メルマと呟くと、綿垣さんが戻ってきた。
綿垣キョウゴ
「……………………ただいま。」
真瀬莉緒
「ああ、綿垣さん。おかえりなさい。」
綿垣キョウゴ
「今日は…………どうだったんだ?…………錦戸と演奏していたんだろ?」
真瀬莉緒
「…………ええ。おかげでスムーズに進んでいます。」
綿垣キョウゴ
「そうか。」
真瀬莉緒
「はい。」
綿垣キョウゴ
「……………………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
綿垣キョウゴ
「……………………。」
真瀬莉緒
「あの…………それで?」
綿垣キョウゴ
「………………?」
真瀬莉緒
「いや…………いいです…………。」
綿垣キョウゴ
「…………俺のことで何か言いたげだな。」
真瀬莉緒
「…………綿垣さん。」
僕は思い切って質問をすることにした。




