第3章 さわやかな青模様(雪谷マコト編)後編
翌日…………
目が覚めると、サヤが私の分のコーヒーを作っていた。
真瀬志奈
「あ、サヤ…………ありがとう。」
秋葉サヤ
「どういたしまして。…………マコトくんは無事なのよね?」
真瀬志奈
「多分…………。無事であることを祈っているわ。」
秋葉サヤ
「そう…………。」
サヤはしばらく黙り込むとこんな話をする。
秋葉サヤ
「志奈。ちょっと勝負しない?」
真瀬志奈
「勝負…………?」
秋葉サヤ
「ええ、志奈が勝ったら、今回の誘拐のきっかけになっているかもしれない理由を教えてあげるわ。」
真瀬志奈
「本当?…………それなら勝負してみる理由はあるわね。」
秋葉サヤ
「ええ…………やるわよね?」
真瀬志奈
「もちろん。やるしかないじゃない。」
秋葉サヤ
「決まりね。じゃあ…………いくわよ。」
私はサヤと勝負をする…………
勝負が決まった。結果は私の勝ちだった。
真瀬志奈
「私の勝ちね。…………教えて。誘拐された理由を。」
秋葉サヤ
「ええ。莉緒くんの言うとおり、マコトくんが誘拐されたのは母親が原因ね。」
真瀬志奈
「その母親と雪谷さんの仲は…………?」
秋葉サヤ
「仲はあまり良くはないかもね…………親は転勤族っていうのは知っているかしら?」
真瀬志奈
「んん…………?初耳かもしれません。」
秋葉サヤ
「私の両親とマコトくんの両親は違法な研究の研究員なの。その研究はたくさんの支部があるみたいで…………。転勤も多いらしいのよ。それで私たちも何度、転校を余儀なくされたか…………。」
真瀬志奈
「そんなことが…………。」
秋葉サヤ
「それでマコトくんは次第に反抗をし始めたの。けれど私はできなかった。サヤとしては…………。だから偽るしかなかったの。サアヤという人格を。」
真瀬志奈
「サアヤ…………?もしかしてあのときの?」
秋葉サヤ
「ええ…………。私はサアヤになることで反抗の姿勢を表していたの。」
真瀬志奈
「そうだったのね…………。」
秋葉サヤ
「マコトくんはおそらく無理矢理に転校させられそうになるのを拒否した結果、誘拐された。それはきっと間違いないわ。」
真瀬志奈
「そんな…………そんなことが…………!?」
秋葉サヤ
「私からは話せるのはここまでね…………。あとは…………マコトくんの無事を祈るしかないわね。」
真瀬志奈
「雪谷さん…………。」
すると、ドアから勢いよく、矢次先生が入ってきた。
矢次由佳里
「2人とも、朗報よ!雪谷くんが…………無事に保護されたわ!」
真瀬志奈
「本当ですか!?」
秋葉サヤ
「マコトくんは…………マコトくんの様子は!?」
矢次由佳里
「ええ、命に別状はないみたい。今こちらに向かっているわ。」
真瀬志奈
「良かった…………。ここではあれですから、場所を変えて詳しく聞かせてください。」
六郭星学園 職員室
職員室に行くと、そこには綿垣さんたちもいた。
綿垣キョウゴ
「真瀬…………雪谷が誘拐されてたってのは本当なのか?」
綿垣さんは少し威圧的に私に言う。
真瀬志奈
「…………はい。黙っていてすみませんでした。」
綿垣キョウゴ
「……………………過ぎたことだ。もう良い。雪谷が無事なら。」
土原ガク
「まあまあ!無事ならそれで良いよ!!」
真瀬志奈
「みなさん…………。」
錦戸アケミ
「…………ふう。」
そういえば…………錦戸さんと綿垣さん。一緒にいるけれど…………大丈夫なのかしら?
すると水崎さんが後ろから声をかける。
水崎アサヒ
「彼らはもう大丈夫だ。今はマコトの無事を確認するだけだ。」
真瀬志奈
「水崎さん…………そうですね。」
凪野雪緒
「やはり、誘拐したのは雪谷の母親だった。雪谷は自宅に監禁された状態にあったみたいだ。」
真瀬志奈
「……………………。」
凪野雪緒
「雪谷の母親は概ね容疑を認めたらしい。計画のためだ…………と。」
真瀬志奈
「計画…………?」
凪野雪緒
「計画の内容は…………わからない。」
真瀬志奈
「そうですか…………。」
??
「失礼します…………!」
真瀬志奈
「あっ…………あっ…………!!」
雪谷マコト
「心配おかけしました。真瀬さん。」
真瀬志奈
「マ…………マコトくーん!!」
私はマコトくんを強く抱きしめた。
真瀬志奈
「良かった…………無事で…………。」
雪谷マコト
「すみません。色々と迷惑をかけて…………。」
真瀬志奈
「良いのよ…………頑張ったんだもん…………。」
すると雪谷さんからお腹の音が鳴る。
雪谷マコト
「さすがにお腹空きましたね…………。」
綿垣キョウゴ
「1週間も食べてないからな…………。」
凪野雪緒
「じゃあ、みんなで食事でもするか!今日は俺の奢りだ!!」
土原ガク
「やったね!!これは期待だよ!!」
綿垣キョウゴ
「…………メイド喫茶は勘弁してくださいね。」
凪野雪緒
「ああ。わかっている。」
その日は凪野先生の計らいでたくさんの料理を食べた。
マコトくんはとても楽しそうだった。そんなマコトくんを見れて、ホッとしている。
その翌日…………
六郭星学園 音楽室
私たちは音楽室にいた。
以前、マコトくんが文化祭のときに閃いたアレンジを演奏するからだ。
真瀬志奈
「では…………マコトくん。お願い。」
雪谷マコト
「はい。」
私はマコトくんのアレンジを一緒に演奏する…………
演奏が終わる。私は喜びと驚きを隠せなかった。
真瀬志奈
「すごい!さすがマコトくんね!」
雪谷マコト
「ありがとうございます!…………真瀬さんも良かったです!」
真瀬志奈
「ありがとう。マコトくんのおかげよ。」
雪谷マコト
「真瀬さん…………!」
真瀬志奈
「今日はこの辺にして、どこかに行きましょう。…………2人で。」
雪谷マコト
「良いですね!では…………行きましょう!」
六郭星学園 中庭
中庭を通ると、マコトくんは立ち止まった。
真瀬志奈
「マコトくん…………?」
マコトくんは空を見上げていた。そして、とても笑顔だった。
雪谷マコト
「空が…………青いですね…………。」
ずっと暗い部屋に閉じ込められていたんだ。久々の空は気持ち良いんだろう。
真瀬志奈
「良かったね。」
雪谷マコト
「…………はい!」
マコトくんとの残りの学校生活…………楽しみです。




