第3章 茶色い枯葉の中に(秋葉サヤ編)後編
サアヤを探すこと、数十分。見つからない。
諦めの領域に達そうとしたとき、1つだけ通り抜けられそうな、穴があった。
僕はここにいると確信し、その穴へと入っていった。
穴の中は枯葉で包まれているが、制服が汚れそうな様子はない。
穴の中を進んでいくと、広いところへでた。
そこにはサアヤがいた。
僕は声をかけようとしたとき、サアヤの様子がおかしかった。
??
「ああ……どうしてあんなことしたんだろう。サアヤなんて人格、はじめからないのに…………。」
真瀬莉緒
「えっ…………?」
??
「あっ…………。……………………。」
秋葉さんは僕を見ると黙り込んでしまった。
真瀬莉緒
「秋葉さん…………?」
秋葉サヤ
「……………………。」
真瀬莉緒
「詳しく話を聞かせてください。」
秋葉サヤ
「……………………はい。」
僕は秋葉さんの話をじっくりと聞くことにした。
真瀬莉緒
「えーっと、つまりサアヤの人格は自作自演だったと…………。」
秋葉サヤ
「ええ。そうなるわね…………。」
真瀬莉緒
「どうしてそんなことをしたんですか?」
秋葉サヤ
「それは…………自己防衛よ。」
真瀬莉緒
「自己防衛ですか…………?」
秋葉サヤ
「私の親は…………転勤族なのよ。」
真瀬莉緒
「それは…………聞きました。雪谷さんに。」
秋葉サヤ
「それなら話は早いわね。親に反抗するにはこの人格しかなかった…………。」
真瀬莉緒
「それで生まれたのが…………サアヤですか。」
秋葉サヤ
「ええ。でもサアヤの人格と私の人格で共通しているのが1つだけあるの。」
真瀬莉緒
「1つだけ…………?」
秋葉サヤ
「私…………一目惚れしちゃったの。莉緒くんに。」
真瀬莉緒
「えっ…………!?」
秋葉サヤ
「花火が鳴ったとき、莉緒くんの顔をもっと見たかった。だから私はメガネをかけて、本当のことを話そうと思った。…………でも、マコトたちに邪魔されて…………。悔しかった。私はまたサアヤの殻に閉じこもってしまった。」
真瀬莉緒
「秋葉さん…………。」
秋葉サヤ
「でも嬉しかったこともあった。莉緒くんはサヤの方が好きって…………そう言ってくれた。でもサアヤも好きになってくれないと…………もしかするとサヤも嫌いになるんじゃないかって思って、あんなことをしてしまったの…………ごめんなさい。」
真瀬莉緒
「あのとき怖かったんですからね!…………でも、本当のことが聞けてよかったです。」
秋葉サヤ
「ねえ、莉緒くん。」
真瀬莉緒
「…………?」
秋葉サヤ
「私のこと、どう思っている?」
真瀬莉緒
「そうですね…………。時間をいただけますか?」
秋葉サヤ
「もちろん。楽しみに待ってます。」
真瀬莉緒
「それじゃあ、戻りましょうか…………?」
秋葉サヤ
「待って。」
真瀬莉緒
「どうかしましたか?」
秋葉サヤ
「莉緒くんとの作曲で、少し良いフレーズが思い浮かんだの。少し聞いてもらえるかしら。…………ここに楽器を持って来ているから…………。」
真瀬莉緒
「…………わかりました。聞きましょう。」
秋葉サヤ
「ありがとう。じゃあ…………。」
秋葉さんは思いついたフレーズを演奏をする。そのフレーズはとてもピッタリとあっている。
真瀬莉緒
「すごい…………これなら…………!」
秋葉サヤ
「莉緒くんも演奏してみて。あなたなら弾けるはず。」
真瀬莉緒
「わかりました。…………では楽器をお借りします。」
僕は秋葉さんから聞いたフレーズを含めて、演奏を始める…………
演奏が終わった。とても良い曲になった……。
真瀬莉緒
「秋葉さん。ありがとうございます。」
秋葉サヤ
「礼を言わないで…………私が色々迷惑をかけたんだから。」
真瀬莉緒
「そんなことないですよ。…………本当のことを聞けましたから。」
秋葉サヤ
「…………ありがとう。」
六郭星学園 中庭
中庭に戻ると、みんなが待っていた。
矢次由佳里
「良かった…………。無事で…………。」
先生方もみんなも安堵をしていた。
秋葉サヤ
「みんなに迷惑をかけました。ごめんなさい…………。」
錦戸アケミ
「あれ…………?元に戻ったの?」
秋葉サヤ
「あ、うん…………まあね。」
真瀬莉緒
「あの…………秋葉さんのことですけれど…………。」
そう言うと秋葉さんが僕の服を掴む。
秋葉サヤ
「(…………お願い。サアヤの人格が嘘だってことは内緒にして…………。)」
真瀬莉緒
「秋葉さん…………。」
僕はサアヤのことについては話すのをやめることにした。
綿垣キョウゴ
「何かあったのか?」
真瀬莉緒
「い、いえ。なんでもありません。人格が元に戻っただけです。」
土原ガク
「それは良かったねー!それじゃあ解散しましょー!!」
その言葉で土原さんたちは寮へと戻っていき、先生方も職員室に戻った。
水崎アサヒ
「サヤ。よく戻って来てくれた。…………さ、我々も戻ろうではないか。」
錦戸アケミ
「ええ。2人ともおやすみ。」
水崎さんたちも寮へと戻っていった。
雪谷さんはまだ残っている。
雪谷マコト
「サヤ…………。」
秋葉サヤ
「マコトくん…………。」
真瀬莉緒
「……………………。」
雪谷さんには言ったほうが良いのかな…………?
僕は口を開こうとすると…………
秋葉サヤ
「ごめん。あの人格は…………サアヤは…………!」
秋葉さんが自分の本当のことを話そうとする…………そうすると雪谷さんは。
雪谷マコト
「…………僕とサヤは知り合って数年。サアヤって人格も全部、サヤだって知ってたよ。」
秋葉サヤ
「マコトくん…………知ってたの…………?」
雪谷マコト
「…………うん。」
秋葉さんはホッとしたのか、冷たい地面に座り込んだ。
秋葉サヤ
「なんだ…………マコトくん…………。」
雪谷さんも秋葉さんに連れて、地面に座り込んだ。
雪谷マコト
「大丈夫。…………きっと。」
秋葉サヤ
「………………ふふ。」
秋葉さんは少し、微笑みを浮かべた。
雪谷マコト
「莉緒さん。ありがとうございます。」
秋葉サヤ
「ありがとう。」
真瀬莉緒
「何もしてない気もするけど…………。でも……………………。」
秋葉サヤ
「…………?」
真瀬莉緒
「いえ………なんでもありません。」
秋葉サヤ
「そう…………。」
真瀬莉緒
「さあ、戻りましょうか。」
秋葉サヤ
「ええ…………。」
作曲も一通り完成し、あとは声優さんに聞いてもらうだけ。
そして…………秋葉さんへの返答もある。
僕は残り少ない学生生活を楽しむんだ…………。




