第2章 むらさき花火の悲劇(秋葉サヤ編)後編
六郭星学園寮 志奈・サヤの部屋
秋葉さんとの作曲作りが終わったあと、久しぶりに姉さんに会うことにした。
真瀬志奈
「へえ…………サヤと練習ね…………。…………疲れてない?」
真瀬莉緒
「疲れは…………大丈夫。だけれど、ちょっと怖いな。」
真瀬志奈
「まあね…………。…………あ、話は変わるんだけれど…………。」
姉さんがあるものを出した。
真瀬莉緒
「文化祭の出し物リスト…………か?」
真瀬志奈
「ええ、私のクラスはホットドックをやることにしたの。もし良かったら来てね。」
真瀬莉緒
「ホットドックか…………。」
真瀬志奈
「莉緒のクラスは何をするの?」
出し物か…………。たしか…………メイドと執事喫茶だったはず…………。
真瀬莉緒
「メイドと執事の喫茶店。」
真瀬志奈
「おお。それは期待ね。」
真瀬莉緒
「でも俺はいつもの制服で掃除係。あまり期待はできないよ。」
真瀬志奈
「そっか…………。でもまあ、みんなで行くからね。…………キョウゴ以外と。」
真瀬莉緒
「ああ、そうか。錦戸さんと綿垣さんあまり仲良くないんですよね。」
真瀬志奈
「ええ、あまり良い噂も聞かないし…………。」
真瀬莉緒
「…………まあ、せっかくだから来てね。」
真瀬志奈
「ええ、もちろん。楽しみにしているわ。」
そんな話をして、数ヶ月後…………。
六郭星学園 Hクラス教室
矢次由佳里
「さあ、今日はみんな頑張るわよ!」
クラスメイトはみんな、「はい。」と返事をする。
今日は文化祭。年に一度のお祭りで、六郭星学園にとっては記念すべき最初の文化祭。
休み時間は騒がしい廊下も今日はずっと騒がしくなる。先生も生徒も関係なくお祭り騒ぎ。
水崎さん、錦戸さん、そして秋葉さんはメイドのコスプレをしている。
水崎アサヒ
「はははは!こういう服はあまり着ないから新鮮だな!」
錦戸アケミ
「ええ、そうね…………。」
秋葉サヤ
「ねえ、アケミ。やっぱり休んでた方が…………。」
錦戸アケミ
「大丈夫よ。…………多分ね。」
錦戸さんの怪我がさらに増した気がする。少し心配だ。
真瀬莉緒
「無理しないでくださいね。錦戸さん。」
錦戸アケミ
「…………ありがとう。」
矢次由佳里
「さあ、始まるわよ!」
先生がそう言うと、早速お客さんらしき人が来た。
??
「失礼する。」
矢次由佳里
「直輝……!?」
この人は、日比谷直輝先生。あのエリートだらけのSクラスの担任をしている。その先生がなぜここに…………?
日比谷直輝
「生徒会の3人に言われてな。監査…………視察だ。」
矢次由佳里
「ああ、それなら大丈夫よ!みんなしっかりやるから!」
日比谷直輝
「ほお…………それは楽しみだな。では紅茶をいただこう。」
水崎アサヒ
「では準備をします。そちらの席でお待ちください。」
そう言うと、雪谷さんたちがやってきた。
土原ガク
「やっほー!!来ちゃいました!」
雪谷マコト
「失礼します…………。」
真瀬志奈
「莉緒。来たわよ。」
真瀬莉緒
「ああ、姉さん。いらっしゃい。」
早速、メイド・執事喫茶は大繁盛だ。
さらにお客さんが入ってきた。
??
「おお!これはなかなかの大盛況ですな!」
やってきたのはKクラスの古金ミカ(こがね みか)さん。大企業と言われている、古金グループのご令嬢だ。
そしてまだまだやって来る。
??
「やあ、みんな。元気にやっているかい?」
この人は不知火カイル(しらぬい かいる)。学園一のモテ男だ。
さらにもう1人。
??
「あ…………失礼します。」
初杉ジロウ(はつすぎ じろう)。いつも不安そうな様子を見せている。
秋葉サヤ
「みなさんどうぞ、こちらの席に。」
個性豊かな人が揃ったものだ。
日比谷直輝
「土原と古金か…………やかましそうだな。」
日比谷先生は苦笑いをする。
古金ミカ
「これこれ。そこの君!掃除してないで、こちらに座りたまえ!」
古金さんに言われ、僕は古金さんと初杉さんと不知火さんの座る席に相席する。
初杉ジロウ
「君は…………掃除係かい?…………大変だね。」
真瀬莉緒
「いやいや、そんなことはないですよ。」
すると、錦戸さんが飲み物を持ってきた。
錦戸アケミ
「ごゆっくりと。」
そう言って、錦戸さんは足を引きずりながらその場を離れた。
不知火カイル
「錦戸アケミ…………彼女の怪我が心配だよ。彼女はどうしてあんな怪我をしているんだい?」
真瀬莉緒
「いや、それは…………わかりません。」
古金ミカ
「色々あるんですなこれが。」
不知火カイル
「ご令嬢。何かを知っているのかい?」
古金ミカ
「……………………。まあ飲もうじゃないか。」
意味深な間を出し、飲み物を飲む。
しかし、この空間…………僕と秋葉さんが作っている曲に雰囲気がマッチしている。
…………閃いた。この雰囲気は何かのヒントになりそうだ。
僕は秋葉さんに声をかけようとしたとき、秋葉さんから声をかけてきた。
秋葉サヤ
「莉緒くん。ちょっと閃いたことがあるの。音楽室に行かない?」
真瀬莉緒
「えっ…………秋葉さんもですか?…………まあ、良いです。音楽室に行きましょうか。水崎さんあとはお願いします。」
水崎アサヒ
「ああ、任せたまえ!」
僕はお礼をして、音楽室へと向かった。
六郭星学園 音楽室
音楽室に来た僕たちは演奏を始める…………
演奏を終えた。僕はとても驚いた。僕が閃いたのは、秋葉さんの閃いたものと全く同じものだったからだ。
真瀬莉緒
「秋葉さん!」
秋葉サヤ
「莉緒くん!」
僕は秋葉さんの前で初めて心から笑うことができた。
真瀬莉緒
「同じでしたね。僕たちが考えた想いが!」
秋葉サヤ
「ええ!とても良かったわ!」
真瀬莉緒
「これなら…………きっと…………!」
そう言うと、打ち上げ花火が鳴る。
真瀬莉緒
「花火だ…………!」
秋葉サヤ
「屋上へ行きましょう!」
六郭星学園 屋上
屋上へ上がると紫色の花火が打ち上げられていた。
真瀬莉緒
「すごいや…………。こんなことができるなんて…………!」
さすがは六郭星学園。色々できるんだな……。
秋葉サヤ
「莉緒くん…………。」
後ろを振り向くと、メガネをかけた秋葉さんがいた。
真瀬莉緒
「秋葉さん……!?」
メガネをかけた秋葉さんは特に変わった様子はない。
秋葉サヤ
「あなたの顔…………しっかりと見たかった。これでもう大丈夫。」
真瀬莉緒
「……………………。」
秋葉サヤ
「さあ、戻りましょう。みんなが待ってる。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
僕は秋葉さんと手を繋いだ。暖かい手だ。
真瀬莉緒
「秋葉さん…………。」
手を繋いで戻ろうとすると、そこに水崎さんと錦戸さんと雪谷さんが来た。
水崎アサヒ
「莉緒!サヤはど…………」
雪谷マコト
「サヤ!!」
雪谷さんたちは僕たちの手を離し、メガネを外した。
秋葉サヤ
「……………………。」
錦戸アケミ
「大丈夫?サヤに何かされなかった…………」
僕は錦戸さんの手を振り払い、秋葉さんのところへ近づいた。
真瀬莉緒
「秋葉さん…………!」
??
「うふん…………あなたのこと、待っていたのよ…………!」
真瀬莉緒
「秋葉さん…………!?」
メガネを外しているのに、人格が…………変わった…………?
??
「だめ…………!私はサアヤ。あなたのお仲間のせいで、もうサヤは出てこない。」
真瀬莉緒
「そんな…………!」
秋葉サアヤ
「もうあなただけしか見ない。これからは莉緒。あなただけを見るわ…………!!」
真瀬莉緒
「……………………。」
こんなことになるなんて思わなかった。何もわからない状況に、紫の花火が虚しく打ち上げられる。