第2章 むらさき花火の悲劇(秋葉サヤ編)中編
六郭星学園 音楽室
秋葉サヤ
「なるほど……。莉緒くんはこんなことをしていたのね。」
僕は苦手の克服と最高の曲を作るために、秋葉さんに協力をしてもらうことにした。
秋葉サヤ
「それで…………どんな声優さんに曲を作るんですか?」
真瀬莉緒
「ああ、はい…………。この人です。」
秋葉サヤ
「…………!この人!?」
秋葉さんは目を丸くして、驚いている。知っているのだろうか?
秋葉サヤ
「ごめんなさい取り乱して…………私の知っている声優さんだったから…………。」
真瀬莉緒
「そうなんですね。それじゃあ早速…………。」
秋葉サヤ
「ええ。私の実力を見せてあげる。」
そう言って、秋葉さんは演奏を始めた。
初めての演奏の割にそつなくこなしている。
というよりなかなかの演奏技術だ。僕よりも上手いかもしれない。
真瀬莉緒
「すごいですね。…………僕よりも上手いかもしれません。」
秋葉さんは少し自慢げに喜んでいた。
秋葉サヤ
「ありがとう。でもこの楽器しか弾けないの。」
真瀬莉緒
「そうなんですね。…………でもすごいです。」
秋葉サヤ
「そう言われると照れるわね……。」
恥ずかしそうにそう言うが、僕はあまり顔に微笑みを浮かべることができなかった。
秋葉サヤ
「あの…………やっぱりあのことが…………?」
真瀬莉緒
「…………はい。ちょっと怖いです。」
秋葉サヤ
「そうなんだ…………。」
真瀬莉緒
「でもこれから溝を埋めていけば良いわけですし…………まあ、お互いに頑張っていきましょう!」
秋葉サヤ
「…………はい!」
こうして僕たちは日々練習を繰り返すことになった。
六郭星学園 莉緒・マコトの部屋
練習を切り上げたあと、僕は自分の部屋に戻ることにした。
真瀬莉緒
「ふう…………疲れるな…………。」
僕は部屋のドアノブに手をかけようとすると、ドアの向こうから怒号が聞こえた。
真瀬莉緒
「雪谷さん…………?」
雪谷マコト
「どう言うことだ!あれほど言ったのになんでやめなきゃいけないんだ!」
全く怒らない雪谷さん。今日は珍しく怒っている。
雪谷マコト
「絶対にやめないからな!この学園だけは…………!!」
そう言うと電話を切る音が聞こえた。誰かに話をしていたのか?
僕は恐る恐る、ドアを開ける。
真瀬莉緒
「雪谷さん…………。」
雪谷マコト
「莉緒さん…………!今の聞いていたんですか?」
真瀬莉緒
「…………はい。」
雪谷マコト
「そうですか……。いや、その…………。」
雪谷さんはうろたえている。そんなに気にしなくても大丈夫と僕が言うと、雪谷さんはホッとし、近くの椅子に座り込んだ。
雪谷マコト
「僕はあんまり……この学校にはいれないんです。」
真瀬莉緒
「え…………?それってどう言うことですか?」
雪谷マコト
「転勤族なんです。合併前の1ヶ月前にここに転校したわけです。」
真瀬莉緒
「そうなんですね。…………転校……しないですよね?」
雪谷マコト
「まさか…………しないですよ。」
真瀬莉緒
「それなら良かったです。これからもよろしくお願いします。」
雪谷マコト
「もちろんです。よろしくお願いします。」
僕たちは一息つくと、雪谷さんがある質問をする。
雪谷マコト
「そういえば、サヤから聞きましたよ。あの曲をサヤに聞いてもらったって。」
真瀬莉緒
「ああ…………声優さんからも許可が降りたので、一緒に演奏しようと思ったんです。」
雪谷マコト
「そうだったんですね。どうですか?サヤには何もされてはいませんか?」
真瀬莉緒
「いえ、今のところは…………。」
雪谷マコト
「それなら良かったです…………。メガネをかけさせないように気をつけてくださいね。」
僕はメガネという単語を聞き、ある疑問が浮かんだ。
真瀬莉緒
「…………ちなみに、秋葉さんは目が悪いんですか?」
雪谷マコト
「ああ、当然悪いですよ。コンタクトレンズも試しましたが…………結果は変わらずでした。」
真瀬莉緒
「そうなんですね…………どうりで黒板の1番前にいるわけですね。」
雪谷マコト
「まあ…………とりあえず気をつけてくださいね。あとは…………良い曲を楽しみにしています。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。頑張っていきます。」
そして…………数日後。
六郭星学園 音楽室
僕は秋葉さんと共に作曲の練習をしていた。
真瀬莉緒
「さすがですね…………。」
秋葉サヤ
「ありがとう。でも、もっと頑張るわ。」
あれから何回か練習をしているが、特に変わった様子もなく、練習を繰り返している。
秋葉さんの実力は間違いなく本物だ。…………その分、僕は不安と期待の狭間にいる。
未だにあのことが怖い…………けれどこの曲はどんどん秋葉さんの力が欠かせなくなっている。
秋葉サヤ
「莉緒くん…………?…………やっぱりあのことが心残りなんですね…………。」
真瀬莉緒
「…………はい。」
そう答えると秋葉さんはため息をつき、椅子に座り込んだ。
秋葉サヤ
「実は…………そのときのことを憶えていないの。」
真瀬莉緒
「えっ…………?」
秋葉サヤ
「私が人格が変わるのは知っているけれど、人格が変わったときのことはアサヒやアケミから聞かないとわからないの。」
真瀬莉緒
「そうだったんですか…………。知りませんでした。」
秋葉サヤ
「ごめんなさい…………。ひどい思いをさせてしまって…………。」
真瀬莉緒
「い、いえ…………大丈夫ですよ…………はい。」
僕はなんとか気持ちを立て直して、練習に戻った。




