第1章 オレンジ色の街並み(秋葉サヤ編)後編
秋葉サヤ
「あ…………あれ…………?真瀬さん?」
真瀬莉緒
「え…………?秋葉さん…………?秋葉さんですよね?」
秋葉サヤ
「は、はい。」
水崎アサヒ
「良かった……。」
錦戸アケミ
「雪谷さん。そろそろ教えてあげたほうが良いと思うわよ。」
雪谷マコト
「はい。わかっています…………。」
雪谷さんは重たい口調で秋葉さんの秘密を明かす。
雪谷マコト
「サヤはメガネをかけると人格が変わるんです。」
真瀬莉緒
「メガネをかけると!?」
不思議なものだ…………メガネを外すと人格が変わるとは聞いたことはあるけれど、その逆とは…………。
水崎アサヒ
「驚くのも無理はない。こんなことありえないからな。私も驚いた…………。マコトに聞くまではあまり信じられなかったよ。」
錦戸アケミ
「不思議よね…………。サヤはいつからそうなるようになったの?」
秋葉さんはそう言われると考え込んでしまった。
秋葉サヤ
「そうね…………。」
秋葉サヤ
「……………………。」
次第に秋葉さんは落ち込み始めた。
錦戸アケミ
「サヤ?」
秋葉サヤ
「ごめん。話すことはできないです。色々あって…………。」
雪谷マコト
「む、無理に話させるのもやめましょう。サヤにも色々ありますし……。」
真瀬莉緒
「…………そうですね。授業もありますし、今はこの話は切り上げましょう。」
錦戸アケミ
「そう…………わかったわ。」
雪谷マコト
「じゃあ僕はこの辺で……。」
雪谷さんは秋葉さんから外したメガネを秋葉さんの机に置いて、教室から出ていった。
水崎アサヒ
「さあ、切り替えていこうじゃないか!他のクラスメイトたちもそろそろ来る頃だ。」
水崎さんはみんなの気持ちを切り替えようとすると、秋葉さんがこんなことを話した。
秋葉サヤ
「あの、みんなでどこかに行きませんか?」
その言葉を聞くと、水崎さんは少し驚いた表情をしていた。
水崎アサヒ
「ほお……サヤからこんな話を聞けるとは……!」
錦戸さんも秋葉さんの話に興味を持っている。
錦戸アケミ
「せっかくの話だし、行くしかないわね。」
2人は行こうと思っている。多数決には従うしかない。
真瀬莉緒
「わかりました。行きましょう。」
水崎アサヒ
「そうこなくてはな!…………で、どこに行こうか?」
真瀬莉緒
「そうですね…………うーん…………。」
??
「それなら、六郭星ランドはどうかしら?」
そう言ってきたのは矢次先生だった。
矢次由佳里
「チケットがあるから、行ってきなさい。お代はいらないからね!」
水崎アサヒ
「先生…………ありがとうございます!」
水崎さんがお礼を言うと、すぐに僕たちもお礼を言った。
矢次由佳里
「それじゃあ、他のみんなも来るからそろそろ席についてね。」
僕たちはそれぞれの席に座り、授業を受けた。
そして、放課後…………
六郭星ランド
真瀬莉緒
「ここが六郭星ランド…………。」
六郭星ランドに来た。六郭星学園のすぐ近くにある遊園地で、六郭星学園の学生もよく出入りをしている。
水崎アサヒ
「さあ、行こうではないか!」
錦戸アケミ
「あ、ちょっと…………!」
水崎さんは我先にとアトラクションに乗り込もうとする。それを錦戸さんは追いかける。
僕と秋葉さんは取り残された。
真瀬莉緒
「……………………。」
秋葉サヤ
「どうしましょうか……?」
秋葉さんは少し困惑している。僕も困ったが、せっかくの課題のペアだ。スキンシップを兼ねて、2人でアトラクションに乗り込もう。
真瀬莉緒
「観覧車に乗りませんか?」
秋葉サヤ
「観覧車ですか…………良いですね。乗りましょうか。」
僕たちはそう言って観覧車に乗り込んだ。
観覧車の中はとても暖かく、居心地が良かった。ちなみに僕たちは緑のゴンドラに乗っている。心なしか秋葉さんも少し楽しそうだ。
観覧車は少しずつ周り、どんどん地上から離れていく。
秋葉サヤ
「空高くあがりましたね。」
真瀬莉緒
「そうですね。…………秋葉さんも楽しそうですね。」
秋葉サヤ
「そうですね……私はリボンの色の通り、緑が好きなんです。観覧車も緑のゴンドラなので、少し嬉しいんです。」
真瀬莉緒
「秋葉さんは緑が好きなんですね。…………あ、もうすぐ頂点ですよ。」
観覧車が1番高いところまで登った。空を見るとすっかりとオレンジ色に輝いていた。
真瀬莉緒
「ああ…………とても綺麗ですね。」
オレンジ色が照らす街並みに、僕は思わずこう言った。
秋葉サヤ
「そうですね…………よく見えないですね…………メガネをかけましょうか…………。」
真瀬莉緒
「え?」
秋葉さんはメガネをかけると…………
秋葉サヤ
「うふん…………。」
人格が変わった。
秋葉サヤ
「また会ったわね……!ねえ…………こっち見て…………!」
秋葉さんの手が僕の頬に触れる。
僕は振り払うように暴れるも、身動きが取れない。
秋葉さんは舌で唇を潤し、顔を近づける。
真瀬莉緒
「う……うわああああ!!」
その後…………。
水崎アサヒ
「本当にすまない!私が遊びすぎたばかりに…………。」
錦戸アケミ
「あのとき、放っておけば良かったのかしら…………。」
真瀬莉緒
「全くですよ。もう!」
秋葉サヤ
「真瀬さん…………すみません。」
真瀬莉緒
「………………。」
幸いにもキスからは逃れられた。なんとかメガネを外すことができたからだ。
でも…………秋葉さんは苦手だな。そう感じた。
真瀬莉緒
「しばらくは課題のとき以外は話さないでください。」
秋葉サヤ
「……………………はい。」
こうして、六郭星ランドを苦い思いであとにした。
六郭星学園寮 莉緒・マコトの部屋
六郭星ランドから部屋に戻り、僕は気持ちを切り替えるように声優さんから依頼された曲作りに没頭していた。
曲作りの最中も秋葉さんのことを考えてしまう。
真瀬莉緒
「くそ…………なんなんだ一体。」
僕は思わず机を叩く。
なんとか気持ちを切り替えて、僕は曲をほんの一部だけ完成させた。
せっかくだから誰かに聞いてもらおう。
真瀬莉緒
「雪谷さん。」
雪谷マコト
「どうしました?」
僕は色々説明をして、雪谷さんに曲を聞いてもらうことにした。
雪谷マコト
「なるほど…………では聞かせてください。」
真瀬莉緒
「はい。では…………。」
僕は作った曲を演奏する…………。
演奏が終わる。雪谷さんは驚きながら拍手をしていた。
雪谷マコト
「さすが…………志奈さんの弟さんだ。」
真瀬莉緒
「ありがとうございます。」
ただ、雪谷さんは何かを考え込んでいた。
真瀬莉緒
「雪谷さん…………?」
雪谷さんはしばらくするとこう呟いた。
雪谷マコト
「サヤなら…………もっと…………。」
真瀬莉緒
「え……?」
雪谷マコト
「ああ、すみません。サヤならこの曲をもっと良くしてくれると思いましてね。サヤはああ見えて、音楽を演奏できるんだ。」
真瀬莉緒
「そうなんですね。…………秋葉さんか…………。」
秋葉さんにああ言った手前、どう言えば良いのか…………。
雪谷マコト
「まあ、サヤは難しい性格ですし…………。無理知恵はしません。」
真瀬莉緒
「そうですか…………わかりました。」
雪谷マコト
「今日は切り上げましょう。色々とあったみたいですし。」
真瀬莉緒
「そうですね。ありがとうございます。」
そう言って僕たちは身支度をして、布団に入った。
秋葉さんの演奏か……。
僕は考えながらも深い眠りについた。




