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3:奇妙な増殖!

 その翌日、私は目を疑った。


「おはよう」

「おはよう」


 ヴィゼが並んで二人いた。全くの瓜二つ。


「ヴィゼ……? 隣のは誰だ? 双子か? 姉か妹か?」

「え? 何言ってるの? そんなワケないでしょう!」

「何言ってるの? わたし()()はヴィゼだよ!」


 自分で『たち』と言っている?


「何言っているんだ!? どっちがヴィゼだか分からないと不便じゃないのか!?」

「なにが?」

「特に?」


 ヴィゼ二人は互い顔を見合う。そして不思議そうに私へ首を傾げてくる。

 全くの瓜二つ。

 本人が二人いる。しかもこの現象に疑問を持っていない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()


 恐ろしい思考に至り、背中は冷や汗でべったり濡れた。


「二人ともヴィゼなのか?」

「うん」

「うん」

「……疲れたのかな?」

「今日はなんだか様子が変だね」


 私がスライドして二人にした? いや、何もしていない。

 朝起きたら二人になっていた。

 嫌な胸騒ぎがする。何事も起きなければいいのだが……。


 どう考えても違和感を禁じ得なかった。




 翌日になっても、いつもの通り二人のヴィゼがいた。


「おはよう」

「ええ、おはよう」


 ピンポーンと鳴って、反射的に玄関へ行ってドアを開けるとギョッとした!


「おはよう! 元気だった?」


 なんと三人目のヴィゼが訪問してきたのだ!

 私は思わず腰を落としてしまう。

 二人のヴィゼがやってきて「もぉ~ヴィゼ、急には来たらダメだよ」と玄関のヴィゼを叱る。


「あ、ゴメン……。朝に会いたかったから……」


 ()()()()()()()()()()()


 三人のヴィゼは当たり前のようにリアクションしている。

 突然二人になろうが三人になろうが、なぜか()()()()()()()()()()ように認識を改められている。


「落ち着け……」


 私にはスライドして望む結果を引き寄せる能力があるではないか。

 つまりは逆の事もできる。なので玄関のヴィゼをスライドして、滑るように掻き消えた。

 今度は二人いるヴィゼの片方をスライドした。


「ヴィゼ、お前が二人いたのはびっくりしたな」

「わたしが二人……? 何言ってるの? なにか見えた?」


 一人になったヴィぜは首を傾げる。最初っから一人だったかのように。




 その晩──!


「スープできたよ」

「今度は自信作のスープだよ」

「さぁみんなで食べましょ!」

「うん! 五人で一緒にね」


 怖気が背筋を走った。


 一気に四人のヴィゼが呼びに来ていたからだ。

 いつ増えたのかも定かではなく、最初っから四人いたかのような挙動だ。


「ふ……増えた?」


「なにが?」

「どうしたの?」

「顔色悪い?」

「風邪? 休む?」


 気が動転して、慌ててババッと手でスライドして全員消してしまった。

 あ、と思ったが不思議と安心してしまった。

 へたりこんで腰を抜かす。まだドキドキ心音は高鳴っている……。


 誰一人いない部屋。もちろんスープ作ってくれたというが、キッチンに行っても何もない。


「やるべきではなかったのか? 死んだ人を呼び戻すなど……」


 苦悩と、顔を両手で覆う。

 最初は死んだはずのヴィゼが現れた時は舞い上がるほど嬉しかったはずなのに……。


「風呂湧いているよ?」


 ひょんな所からヴィゼがなに食わぬ顔で現れて、ゾッとした。

 湧いてきた!?


「おまえっ……!?」

「なに? ひどく怯えて……??」


 キョロキョロ見渡す。また湧いて出てこないかとドキドキ動転している。

 今日は一人だけだったので少し落ち着けたが、疑心は収まらなかった。

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