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2:結果を入れ替える!

 光速を超える事で、向こうの世界へ乗り移ったのだ。



 速度を落とし、再びの地球へと降り立っていった。

 宇宙船から出ると、そこは前の世界と何らも変わらない地球上……。

 みんなが迎えてくれたのか大声援が響いている。


「確かめに行く」


 手短に結果を伝えて帰った。

 どうせ向こうが信じようが信じまいが私には関係ない。


 帰ってみれば、確かに微妙に見慣れぬ建物などが窺えた。

 前の世界と違う並行世界だからこそか。だが、どうでもいい。まずはヴィゼだ。

 やはり自分の家には誰もいない。

 ヴィゼが写っている写真はあったが、やはりここでも死んでいた。


「結果は変わらない……だと?」


 墓地へ行っても、棺桶が地中にあるであろう墓標がそこにあるだけだ。

 衝動的に掘り起こしたかったが、冷静に神父さんに許可をもらい、数人の男で掘り出してもらった。

 黒く無機質な箱。

 フタを開けてみても、やはりヴィゼは腐食して悪臭を放っている。周囲の人々の声が上がるがどうでもいい。


「ヴィゼ!! ヴィゼ!! ヴィゼェ────ッ!!」


 呼びかけるのも無駄な事と分かっているが、私は何度も狂ったように「ヴィゼ」連呼を続けた。

 神父さんは「おい! もう……」と止めようとしてくるのも、私は振り払った。周囲の有象無象も灰色の景色も目に入らない。


「……この『結果』は認めないッ!! 絶対にだッ!!」


 否定しようと手で払う仕草する。するとスッと滑るように棺桶は掻き消えた。そして裏にあったかのように新しい棺桶がそこにあった。

 やはりヴィゼの腐食死体……。

 さっきの現象が気になって、右手で左から右へと滑らせるように現状の棺桶を飛ばした。


 新しい棺桶にも腐食死体があったが、前のと微妙に違うのに気づいた。


「これは……!?」


 勘ではあるが、私は『対象の物体をスライドさせて光速越えに飛ばして、別の物体を入れ替える』能力を得たのだろう。

 別の並行世界の物体を入れ替える。

 私は『光速越え』を体験する事により、対象をスライドさせる事が可能になった。


「おお……私は、なんという素晴らしい能力を得たようだ」


 つまり望む結果が出てくるまで引っ張ってこれる、という事である。

 また宇宙船を作って光速越えしなくてもいいワケだ。スライドすれば済むからな。

 ヴィゼの死体を否定する為に、何度もスライドし続けていった。


 ついに別人の死体が出てきた。ヴィゼのではない。全く見も知らぬ男の死体。


「……あの、他人の死体を見てどうするんですかね?」


 神父さんの言葉が引っかかった。


「ヴィゼの死体はどこにいる?」

「ヴィゼ? 一体何の話です? そこはデルッサイの──」

「済まなかった。もういい。埋めててくれ」

「は、はぁ……?」



 これでヴィゼは死ななかった事になる、はずだ。


 薄暗い最中、家へ戻ろうとすると明かりが点いているのが気になった。

 まさか、と動転しそうな気持ちを抑えて家へ入っていく。


「あら、おかえり」


 甘美的な声、愛らしい美人顔の笑み、魅惑的な肢体。

 紛れもなく生きているヴィゼ本人だ。

 私の仮説は正しかった。スライドさせる事で結果を入れ替える。これで二度悲劇が起きようとも、同じように取り戻せるのだ。


 心が溶けるような、安堵感。

 彼女の声がこれまでの疲労を吹き飛ばしてくれる。絶頂な幸せである。


「会いたかったよ。ヴィゼ」

「何言ってるの?」


 ヴィゼ当人にとっては分からないだろうが、私には長らく久しぶりな邂逅なのだ。

 抱きしめれば確かな温かさと柔らかさが伝わってくる。


 ────これで、これまでの苦労は報われた。

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