002
…
……
………
そうだ。
ここか何処かハッキリしていないんだ。
家族でいつも遊びに来ている公園の筈なのに、
初めて来たかのような新鮮さを感じている。
これは一体……
いや、そもそもこの公園の名前は何だ。
それすら思い出せなくなっている。
もしかして……
俺は最悪の結末を予想してしまった。
周りを見渡して実感した。
少しずつ、しかし確実に
人間の時の記憶と意識が無くなっている。
このままでは数時間後にはこの記憶は
完全に無くなってしまうだろう。
つまり、俺は「ただの怪獣」になってしまう。
そうなってしまう前にせめて
最後に愛する家族に会いたい。
俺は勢い良くと立ち上がり
住んでいた町に向かって走り出した。
俺の急な動きに人間は騒ついた。
大人しい恐竜と思っていた生き物が
いきなり活発に動きだしたのだ。
住民は叫びながら逃げ出して、
警察は近隣住民やマスコミに退避を命令し
準備していた簡易バリケードを展開する。
しかし高さ数メートルのバリケードなぞ
20メートルある俺の障害にはならない!
太い尻尾で一掃した。
人間は状況が一変したのを認識しただろう。
当初考えていたシナリオは完全に破綻してしまった。
障害を排除して公園の外に出た所で
遂に自衛隊も攻撃を開始した。
機関銃程度の火力ではこの身体を
傷つける事は出来やしない。
しかし心は別だ。
俺は人間では無い事をこの銃弾は
心に刻んでいくのだ。
……
住んでいるマンションが見えてきた。
あそこに行けば家族に会える。
薄れゆく記憶と意識の中、
それだけを願い走る。
……
絶え間ない機関銃による多少の痛みと
悲鳴をあげるような心の痛みを受けながら、
そして消えていく記憶を忘れまいと
家族の顔を必死に思い出しながら、
どうにかマンションの手前まで来れた。
その時、俺は安堵で気を抜いてしまった……
………
……
…
目の前の建物を覗いてみた。
窓の向こうには女性と子供が一人いた。
二人は何故か部屋から逃げる事はなく
俺の顔をじっと見つめている。
何故だろう、嬉しいけどすごく悲しい。
そして、何故俺はここに来たのだろう。
居た堪れない。辛い。悲しい。
思い切り叫びたい。狂ったように叫びたい。
全てを無かった事にしたくて。
全てを終わらせたくて。
思いっきり叫ぼうと
息を可能な限り吸い込むと
胸がこれまでになく熱くなった。
その熱さは胸から喉へ、そして
喉から口へ急速に上がって行く…
**** 選 択 肢 ****
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