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何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン壱
9/52

第九話 山の木こり



 むかしむかし、ある山の頂上に、一組の、老夫婦が住んでおりました。


 おじいさんは、山の木こりをしており、山の木を切り倒しながら、生計を立てておりました。


 そんなある日のこと、おじいさんが、山で木を切っていると、山の木々の中から、こんな声が聞こえてきました。


「山の木こりは力持ち、山の木全部切り倒す……山の木こりは力持ち、山の木全部薪にする……」


 おじいさんは、不思議に思い、その声のする木々のほうを見てみました。すると、そこに、小さい二本足の白い生き物が、ゆらゆらゆらゆらと、左右に揺れ、後ろを向いて立っていました。


 おじいさんは、狐か狸が、化けて人を驚かそうとしているんだろうと思い、再び木を切り始めました。すると、


「山の木こりは力持ち、力があっても金はなし……」


 と、おじいさんを馬鹿にするようなことを言い始めました。


「何をあの化け物、わしが無視をするんで、わしの悪口を言い始めたな」


 そう呟くと、おじいさんは腹が立ち、持っていた斧を、その白い生き物に向かって思いっきり投げつけました。すると、


 スパンッ!と何かが真っ二つに切れる音がし、その白い生き物が、縦に真っ二つに切り裂かれてしまいました。


「山の木こりは力持ち、力を出して人殺す……」


 切られた白い生き物はそう言って、おじいさんの目の前から消えていきました。


 おじいさんは、投げた斧を取りに行き、その斧を拾うと、再び木を切り始めました。 


 そして、次の日のこと。


 また、おじいさんがいつものように木を切り倒していると、


「なんだありゃ」


 おじいさんの真上の空に、お天道様とは別の、大きく光る光の玉が、ぷかぷかぷかぷか浮いていました。


「こりゃあ大変だ。光がこっちに向かってくるぞ!」


 光の玉は、どんどんおじいさんのほうへ近づいていきます。おじいさんは、その場で、後ろに尻もちをついてしまい、なかなか逃げることができません。


 光の玉は、おじいさんの目の前に落下し、その光の玉の中から、真っ白な、人型をした生き物が現れます。


「山の木こりは力持ち、山の木全部切り倒す……」


 白い人型の生き物は、昨日聞いた、白い生き物が言っていた言葉を、そのまま繰り返し言ってきます。その生き物は、おじいさんに、どんどんと近づいてきます。


「山の木こりは力持ち、山の木全部薪にする……」


 おじいさんは、唖然としたまま、その白い人型の生き物を見つめます。すると、その白い人型の生き物は、右手をすっと出し、おじいさんの額に、右手を当ててきました。


「山の木こりは力持ち、力があっても金はなし……」


 そう言うと、おじいさんの前から、光の玉とともに、その白い人型の生き物は、ふっと消えてしまいました。


 唖然としたおじいさんは、そのまましばらく尻もちをついています。


「なんじゃ……」


 それからというもの、おじいさんは元気になり、山の木々をたくさん切り倒せるようになりました。たくさん薪を作り、たくさんお金を稼ぎます。


「いやぁ、あの白い光のおかげで、大金持ちになれた」


「よかったですね。おじいさん」


 そうおばあさんと毎日話し合って、楽しくおじいさんは暮らしておりました。そんなある日のこと、


「ばあさんや、ちょっと来てくれ」


 おじいさんにそう呼ばれ、おばあさんが行くと、囲炉裏の前でおじいさんが、腕を抑え座っておりました。


「どうしたんですかおじいさん……」


「わしの腕が痛むんじゃ」


 おじいさんは、腕を抑え、苦しそうにしています。おばあさんは言いました。


「使いすぎですよ。この頃ずっと、山の木を切り倒していたんですから」


「そうかもしれんのぉ……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


 おじいさんは、急に苦しみだし、抑えていた腕を前に出すと、すくっとその場に立ち上がりました。


「どうしたんですかおじいさん! 何してるんですか!」


 おばあさんは驚いて、後ろに尻もちをついています。おじいさんが、おばあさんに近寄っていきます。


「山の木こりは力持ち、山の木全部切り倒す……」


「どうしたんですか! おじいさん! やめてください!」


 おじいさんは、おばあさんに馬乗りになり、おばあさんの首に両手で掴みかかります。


「おじいさん、苦しい、おじいさん……」


「山の木こりは力持ち、山の木全部薪にする……」


 おばあさんが嫌がっても、その手を、放そうとはしません。おじいさんは、繰り返し何やら、ぶつぶつ独り言を呟いています。


「山の木こりは力持ち、力はあっても金はなし……」


「やめて、おじいさん、やめて……」


「山の木こりは力持ち、力を出して人殺す」


「やめでぇー!」


 ぼきっと骨が折れる音がし、おばあさんは、動かなくなりました。


「……はっ、ばあさんや、しっかりしろ! しっかりしろ!」


 おじいさんは、そこで気がつき、目を見開いたままの、口を開けたおばあさんの肩を揺すります。


「ばあさんや、しっかりしろ! ばあさん……痛いっ!」


 再び、おじいさんは腕を抑えます。痛みが強すぎて、思わず天井を見上げてしまいます。


「ばぁさぁん! ああああああああああ!」


 おじいさんは、叫び声をあげます。ぶちぶちぶちっという音が聞こえ、おじいさんの両腕、両脚、頭は、何かに引っ張られるように、その場で四方に吹っ飛んでいきました。


 ヒロ&アキト´s解説


 ヒロ「おじいさんたちかわいそうだね」


 アキト「それにしても、この白い生物ってあれだよな」


 ヒロ「光る物体もそういうことだし、昔話としては珍しいよね」

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