第四十六話 非常事態
「お前たちはいったい何者だ」
「だから、俺たちはただの大学生と小学生と配信者と小説家だって」
佐藤は、イラつきながら説明をする。目の前のサングラスの男は、無表情のまま喋る。
「お前たちは、大学生なのはわかった。だが、そこの小学生は、半年前に行方不明になった少年だ。それに、小説家だと言われているそこの男は、身元確認をしても何も出てこなかった。それに、そこの配信者と言われている男もだ……」
「嘘をついているって言うのか!」
小説家は、サングラスの男に怒りをぶつける。サングラスの男は、動じず話を続ける。
「それに、そこにいる少年は監視対象者だ。いったいお前たちは、何者なんだ」
一番右端にいる拘束具を体に巻き付けた少年を指さし、サングラスの男は皆に告げる。横一列に並んで椅子に座らされた佐藤と泉たちは、サングラスの男に尋問されていた。
「知らないよ。勝手に襲われたんだ……」
「んー! んー!」
突然、右端の拘束具をつけた少年が呻く。サングラスの男が頷き、横にいる別のサングラスの男が、口元の拘束具を外す。
「お前ら、うるさいんだよ!」
再び拘束具を口につけられ、サングラスの男はため息をつく。
「はぁー……何が何やら。お前たち、違う次元から来た人間だろ」
急に5人に顔を近づけ、サングラスの男は尋ねる。皆、無表情でサングラスの男を見る。
「……どうしてそれを」
佐藤が口を滑らせる。
「お前ふざけんなよ!」
「おいどうすんだよ!」
「おっさん!」
「あほ……」
口々に、佐藤に向かい悪態をつく。すると、サングラスの男は大声を上げた。
「静かに! お前ら、やっぱり来訪者か。今まで何体も見てきたが、ちゃんとした人間なのは初めてだ」
「やっぱり、昔からいたんだな……」
泉は、サングラスの男に尋ねる。サングラスの男は頷く。
「ああ。始まりは紀元前から。ずっと、この次元と他の次元とでたくさんの生物が勝手に行き来をしていたんだ……」
5人とも目を見開き驚く。泉は尋ねる。
「お前たちはずっと、それを監視していたのか」
「ああ……だが、監視を始めたのはごく最近だ。それまでは、行き来し放題だった」
「じゃあ、世の中の不思議な現象って全部、異次元の行き来によって起こってるってことなのか」
ヒロは驚いて呆然とする。サングラスの男は頷く。
「そうだ。全部、それによって起こってる。幽霊騒ぎも、UAPも、神隠しも」
「じゃあ、弘子ちゃんの事件もお前らは監視してたんだな!」
泉は鋭い目でサングラスの男を睨んだ。しかし、サングラスの男は無表情のまま答える。
「いや、そこから我々の部署は出来たんだ。その、中松弘子の事件をきっかけに」
佐藤と泉は同時に顔を見合わす。隣にいるヒロが、サングラスの男に尋ねる。
「何でそんなに教えてくれるんだ」
「ん?」
「そんな機密情報、俺たちに教えたら大変だろ」
「……それはな」
「俺たちの記憶を消すからだろ」
小説家が、吐き捨てるように呟く。
「どうせ、お前らみたいなヤバい組織は全部そうだ。俺たちの記憶を、よくわからない装置か何かですぐに消しちまう」
「物分かりがいいな……」
サングラスの男は、笑顔になった。
「ふざけんじゃねぇぞ! 俺は嫌だぞ! そんな無茶苦茶な理由で、全部の記憶を消されてたまるか!」
ヒロは椅子に座りながら、暴れだす。5人とも、椅子の背もたれに腕を回し手錠で縛られ、ロープでぐるぐる巻きにされている。
「まぁ、仕方ないんだ。諦めろ……」
サングラスの男は、5人から離れていこうとする。瞬間、何かの機械音がけたたましく鳴り響く。
「緊急事態発生! 緊急事態発生! 直ちに職員は、現場に急行せよ」
物凄い機械音とともに、警報を告げる機械音声が、大音量で聞こえてくる。すると
バーンッ!
という大きな爆発音とともに、5人の後ろの壁が爆発する。5人は前のめりに倒れ、5人の座っていた椅子は、手錠の真ん中の鎖とともに粉々に壊れる。
「ぎゃああああああああああ!」
人間の大きな顔が、壁の穴から現れている。たくさんの触手が顔から生え、その触手の一本が、拘束具をつけた少年の横にいるもう一人のサングラスの男を巻き付ける。
「うがっ!」
触手がサングラスの男の首をポキッと折り、顔のでかい化け物は、部屋の中に入ってくる。目の前のサングラスの男も部屋の奥の壁に吹っ飛ばし、拘束具をつけた少年の方へ触手が伸びていく。触手を、少年の拘束具に巻き付ける。
すると、見る見るうちに、少年の拘束具が外れる。
「行くぞ……」
少年は、触手のついた顔の化け物とともに、どこかへ行こうとする。5人は、その場に残される。
「はぁ……はぁ……あぶねぇ……とにかく、俺たちも行こう」
ヒロが物凄く焦りながら、その場から立ち上がる。他の4人に話しかけ、5人は、施設を脱出することにした。




