第四十二話 観覧車
それから、いろんな出来事が起こり、ヒロと泉と佐藤と来子は、ヒロの家の前で手をつないでいた。
「全員つないだか」
右手に正方形の石を持ち、左手で泉の右手をつなぎながら、佐藤が皆に確認を取る。皆、頷く。
「よし、行くぞ!」
瞬間、4人はどこかに移動する。気がつくと、辺りはたくさんの人々が歩いていた。
「なんだこれ」
「おい、どうなってる」
佐藤と泉は、困惑する。ヒロは黙って、辺りをキョロキョロ見ている。
「どうやらここ、遊園地みたいだな」
泉が口を開いた瞬間、ヒロと手をつないでいた来子が、どこかへ勢いよく走りだした。
「アアアアアアアアアアア!」
走りながら、叫んでいる。見ると、来子の先に、二人組の、カップルが歩いている。
来子と、フード付きのパーカーを着た男だ。
「来子……」
パーカーの男が、走ってくる来子を見て驚く。瞬間、来子が抱いていた頭のない男の遺体を投げつけ、もう一人の来子は吹っ飛んでいく。そのまま、頭のない男の遺体とともに、遠くの地面に激突する。
「ハァ、ハァ、逃ゲテ……」
息も絶え絶えに、来子は横にいるパーカーの男に告げる。
「来子……」
「……アアアアアアアアアアアアア!」
突然、大きな奇声が響き渡り、辺りは騒然とする。もう一人の来子が、起き上がっている。
「ガアッ!」
瞬間、今度は来子が吹っ飛ばされていた。もう一人の来子は、その場から飛び出し、来子に摑まって吹っ飛んでいく。来子は、もう一人の来子とともに、泉たちの方向に向かって飛んでいき、顔面を、地面に思い切り押さえつけられる。物凄い地響きとともに顔面を血だらけにし、来子は、泉たちの前で速度を止める。
「グアアアアア!」
もう一人の来子が雄たけびを上げ、来子の首に嚙みつき始める。来子は、痛みに悲鳴を上げる。
「ギャアアアアアアア!」
「この野郎!」
すぐに、佐藤がもう一人の来子に殴りかかる。しかし、右手で振り払われ、泉とともに、後ろに吹っ飛んでいく。
「ぐはっ!」
二人とも、地面にぶっ倒れ、起き上がることができない。ヒロは、唖然としてその光景を眺めている。
「あ、ありえねぇ。ど、どうしたらいいんだよ」
「ギャアアアア……グッ!」
悲鳴を上げていた来子は、急にもう一人の来子の長い髪を右手で掴む。そのまま、右に放り投げ、もう一人の来子は右に、吹っ飛んでいく。
「グッ……ハァハァハァハァ……」
全身真っ赤になりながら、来子は立ち上がる。吹っ飛ばされたもう一人の来子も立ち上がり、両手両足をついて、その場に、身を構える。
「グルルルルルル……」
「ギギギギギギギ……」
「ガァッ!」
「ギャァッ!」
二人の来子が激突する。人々は逃げまどい、泉と佐藤、ヒロは、茫然とする。来子たちは、互いに噛み合い、血だらけになりながら、あっちへこっちへ互いに吹っ飛んでいく。
「おっ……そうだ!」
突然、その状況を倒れながら見ていた泉はひらめき、上に乗っている佐藤から横にスライドして出ていく。遠くで佇んでいる、パーカーの男に近寄る。
「ちょっと、手伝ってくれ」
泉は、パーカーの男に耳打ちをする。すると、パーカーの男は一歩前に出て、暴れている来子に向かい突然叫んだ。
「来子!」
大声で、掴みあっていた来子たちは手を止める。
「俺を、俺を……く、食っていいぞ!」
瞬間、もう一人の来子が男の方へ走り出し、来子は、その後を追って走る。もう一人の来子の手が男の顔面にかかりそうになり、男は目を閉じる。瞬間、大きな悲鳴が上がった。
「ガァアアアアアアアアアア!」
もう一人の来子の顔面が、地面にめり込んでいた。来子の右腕が思い切りもう一人の来子の頭に突き刺さり、もう一人の来子は地面ごと、その場にめり込んでいる。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
息も絶え絶えに、来子はその場に立ち上がる。来子の拳についたもう一人の来子の脳みそがぽたぽたと地面に滴っている。
「来子!!」
パーカーの男が、走って来子に抱きつく。来子もぎゅっと、パーカーの男を抱きしめる。
「来子……来子ぉ!」
「ゴメンナサイ……」
「来子! 愛してる! 愛してる!!」
男は抱きながら、来子に愛を叫んでいる。しかし、泉は気づいていた。
「あいつ、消えるぞ……」
来子の姿は、どんどん透明になっていく。昔の自分を殺したため、今の自分も、消えてしまうのだろう。
「ごめん……ごめんな……こんな……来子……」
「アリガトウ……」
来子は、そのまま笑顔で消えてしまう。4人は、その場に佇んでいた。




