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何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン死
43/52

第四十話 狭間



「それはわかったが、これからどうする」


 再びネットカフェの個室に戻った二人は、座椅子に座り、目の前のパソコンを起動する。


「とりあえず、これからここへ行こう」


 泉がパソコン画面を指さす。そこには「振り向いてはダメな道」という都市伝説が書かれていた。


 二人はとりあえず、その日はネットカフェに泊まり、朝になったら石を使って、その場所に移動した。すると、その道路は二人の目の前にあり、辺りはもう、夕方になっている。


「時間はかかるんだな……」


 泉が呟く。


「ここがその、”振り向いてはダメな道”か……どこにでもある、何の変哲もない道だな」


 すると、佐藤の横に少年が立っていた。


「うわぁっ! 何だ!」


 佐藤は驚く。


「おっさんたち誰」


 少年は、横にいる佐藤達を見つめ尋ねる。


「えっ? えーと……俺たちは不思議研究……」


「同好会だ」


 泉が眼鏡を上げながら答える。


「ふーん……」


 少年は適当に、相槌を打つ。


「おっさんたちも、自分たちのいた世界に戻りたいんだね」


 二人は驚いて、少年を見つめた。


「まさか、君も俺たちの世界から来たのか?」


「……うん、でも、もう戻れないんだ……俺」


「そうか……振り向いたんだな?」


「違う……振り向かれちゃった……」


 少年は、泉の質問に俯いて答える。泉と佐藤は、互いに顔を見合わす。


「もう……会えないんだ……俺の友達たちに……」


「なぁ少年、ちょっとここで待っててくれるか? 俺たちが今からあの道を通って君を戻す方法を見つけてくるから」


「佐藤!」


 泉は驚いて佐藤を見つめる。少年は、両目に涙を溜めていた。


「まだ戻れるかどうかの確証はないんだぞ。そんなこと約束して大丈夫か」


「でも、この子あまりにもかわいそうじゃないか」


 佐藤は、真面目な顔で泉に答える。泉は軽く、溜め息を吐く。


「はぁー、わかった……少年、安心しろ。戻れるぞ」


「ほんと?」


 少年は、顔を上げ二人を見る。二人は、頷く。


「それじゃあ行くぞ……」


「ああ!」


 前を向き、二人は歩き出す。


「とりあえず少年、そこで待っとけよ! すぐ戻ってくるからな!」


 振り向かず、佐藤は少年に右手を振る。そのまま二人は、少年の前から消えた。



 泉と佐藤の周りは、一気に霧が広がっていた。辺りは急に暗くなり、コツコツと、二人の足音だけが聞こえている。


「振り向くなよ……振り向くなよ……」


 泉が呟きながら、佐藤とともに歩いている。佐藤は無言で、前を向いて歩く。


 すると、二人の周りの霧が晴れた。目の前に普通の一本道が現れる。


「あれ……? 終わったぞ」


「え?」


 二人とも呆気にとられている。辺りを見まわし、話し合う。


「そうか……俺たちは、元々ここの人間じゃないから関係ないのか……」


「そうか!」


 泉が気付き、佐藤は驚く。二人は、互いの顔を見合わして笑顔になる。


「そうと決まれば! 辺りを探索するぞ!」


 佐藤は右肩をぶんぶん回しだす。二人は一本道を、力強く歩き始めた。


 泉と佐藤には、確信はなかった。だが、何となく理解をしていた。異様な噂話がある所には、必ずそれを発生させている存在があるということを。そして、その存在を利用すれば、異次元間を移動することができると。


 しかも、こっちには自分たちを色んな場所に転送できる石の装置がある。


 二人は、道なりに歩き、ふと立ち止まった。


「何だあれ……」


 見ると、ちょっと先の道路右端の電信柱に、茶色の長いコートと白いマスク、山高帽みたいなものをかぶった長髪の高身長の人間が、大きい頭のない人型の人形を抱きしめ立っていた。


「すげぇな……ありゃ何だ」


 佐藤も驚いている。泉は近づく。


「お前は誰だ。いったい何者だ」


 すると、その長髪の人間は無言でマスクを外す。見ると、口は真っ赤に血塗られ、白いギザギザした牙のような真っ赤な歯が、たくさん上下についていた。


「うわ! こいつ、人間じゃない!」


 瞬間、長髪の人間は涙を流し始める。そこで、二人は気づく。


「まさか、女性の異生物か……何でこんなところに……」


「ココニ……クレバ……モドレルッテ……」


 女は泣きながら、左手に持っているスマホを見せる。泉はスマホを、恐る恐る覗く。


「なるほど……お前もこの都市伝説を信じて来たんだな……」


「ンッグ……ココデ……カレヲ……イキカエラセタクテ……」


 女が抱きしめていたのは、頭のない男の遺体だった。


「何か知らないが、だいたい想像はつくな……お前も、戻ってやり直したいんだろ」


「おい、どういう事だ」


 佐藤が走って近寄ってくる。泉は佐藤に説明する。


「多分、彼女は今抱きしめている彼を食ってしまったんだろう。愛していたが、本能には抗えなかった……」


「……ウアアアアアアアア!」


 女は崩れ、野獣のように大声で泣き叫ぶ。相当、今まで辛かったようだ。


「で、どうするつもりなんだ」


 佐藤は泉に尋ねる。泉は答える。


「そうだな。うーん……こいつも連れていくか」


「は?」


「一緒についていった方が、何かあったときにいい即戦力になるはずだ」


「でも、その何かあった時の”何か”になる可能性もあるんだぞ」


「大丈夫だろ。彼女は大切な人を失ったんだ。俺たちと同じで」


「いやぁー、でも……」


 泣いている女を見つめながら、佐藤は不安そうに首を傾げる。泉はきっぱりと、女に告げる。


「お前も一緒についてこい! 俺たちも、お前の彼を助ける手助けをしてやる」


「ホントニ……」


 女は涙を流しながら、顔を上げる。泉は右手を差し出す。


「大丈夫だ。行こう」


 女が左手で泉の手をとり、その場に立ち上がる。女は、両目の涙を片手で拭う。


「それじゃあ行くか!」


 泉が再び歩き出す。三人は、再び一本道を歩き始めた。


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