第三十九話 遭遇
それからしばらくの間、泉と佐藤は何の当てもなく、ネットカフェで寝泊まりすることになった。幸い、二人のいた世界と、この少し違った世界は、そんなに変わってはいない。一応、持って来ていた資金が役に立つ。
「この、絶対に振り向いたらダメな道路ってどうだ。これが次の世界に行ける方法なんじゃないか?」
自分たちの個室のパソコンの前の座椅子に座り、佐藤が、隣の座椅子に座っている泉に尋ねる。
「だめだ。場所が書いていない」
「じゃあこれは」
そこには、ある物理学者が時空を調べる実験を行い、失敗して、行方不明になった事が書かれていた。
「だめだだめだ。こんな有名な大学にどうやって行くんだ。この世界の俺たちと遭遇するかも知れないだろ」
「そうか……」
佐藤はパソコンの右についているマウスのホイールをスクロールする。すると、ある項目に目を止める。
「これはどうだ!」
しばらく時間が経ち、二人は、山の中にいた。
「こんなところにほんとにいるのか?」
泉は、疑問を佐藤に投げかける。ネットカフェから出て行った二人は、ネットカフェでコピーした地図を頼りに、電車を使って、その山がある駅に降りて徒歩で山まで歩いて行った。かなり時間がかかってしまい、出発時は朝だったのにもう、辺りは暗くなるほど真っ暗になっている。
「とりあえず、これにかけよう。時間もちょうど、目撃談と同じ時刻だし」
「ほんとに出会えるのか?」
泉は終始疑わしげだった。佐藤が見つけた情報には、ある山で二本足の宇宙人っぽい生き物に遭遇したと書かれていた。
「まぁまぁ。しばらく待とうぜ」
佐藤が後ろにいる泉に振り向く。瞬間、佐藤の前の道が明るく白い光に照らされる。
「おい!」
瞬間、その照らされた場所に、真っ白な人型の生き物が現れる。
「うわ、マジかよ」
佐藤は驚いて、少し泉の方に近づく。真っ白な人型の生き物は口を開く。
「山の木こりは力持ち、山の木全部切り倒す」
「おい、何か喋ったぞ」
「あいつ、俺たちにコンタクトを取ろうとしているんだ」
泉は冷静に行動を把握しようとする。真っ白な人型の生き物は近寄ってくる。
「山の木こりは力持ち、山の木全部薪にする」
「おい、あいつ近寄ってきたぞ」
「落ち着け。奴は俺たちに何かを伝えたいんだ」
「山の木こりは力持ち、力があっても金はなし」
「おい、目の前に来たぞ!」
「大丈夫だ。攻撃的な動きはしていない」
すると、その真っ白な人型の生き物は、右腕を目の前に出した。その腕の先端、手の部分には、四角い正方形の石が置いてある。
「何だ?」
出された四角い正方形の石を手に取り、佐藤はまじまじと見つめる。泉も、眼鏡右下のフレームを上に上げる。すると、光は瞬時に消え、真っ白な人型の生き物も、二人の目の前から消えた。
「消えた……」
「何だったんだ」
「とにかく、帰ろう……」
佐藤が泉に帰るよう促し、二人は山を下山しようとする。すると、
「えっ!」
目の前の景色が、今朝いたネットカフェの個室になっている。
「おい、俺たち、ネットカフェに転送されたぞ!」
「これってまさか……」
佐藤は、右手の正方形の石を見つめる。佐藤の手に握られていた正方形の石のような物体は、何かの、転送装置のようだ。
「これで、俺たちどこでも行けるぞ!」




