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何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン死
40/52

第三十七話 失敗



「それでどうするよ泉」


「あのなぁ、お前のせいでこれだけしか取れなかったんだろ」


 ある大学の実験室で、白衣を着た眼鏡の男が、赤いタンクトップの男に小瓶を見せて話している。小瓶の中には、少量の赤い液体が入っている。


「でも、まさかあの植物の種があんなに狂暴だったなんて……」


「俺たちの世界とは違う場所に自生している植物だから、何が起こるかわからないのは当たり前だ。それに、あの男もじっとしていなかったからいけなかったんだ」


「まぁ、あんな無理やり後ろから羽交い絞めにしたら暴れだすのも無理はないけどな」


 赤いタンクトップの男は少し、白衣の男を責めるように呟く。


「しかし、あの世界から救出してやったんだからよかったろ?」


「まぁ、あの植物が自生している真っ暗な世界よりはましか……」


 すると、眼鏡の男は溜息を吐いた。


「はぁー、俺は失敗した……こんな量じゃ、大した効果は出せない……」


「とにかく、培養液かなんかにつけて、その液体を増やすしかないんじゃないか?」


「多分効果はだいぶ薄まるが、何とか奴らをだませるぐらいのことはできるか……」


「まぁ、うまくいったらだけどな……」



 それから数日が経ったある日。


「おーい来たぞー」


 実験室のドアを開け、赤いタンクトップの男が入ってくる。


「佐藤、いいところに来た」


 眼鏡の男は、赤いタンクトップの男が実験室に入ってくると振り向かず、実験机の上のビーカーを見続ける。


「培養は成功したようだ。何の暴走もしていない」


「よかった。ならいよいよだな」


「ああ、いよいよだ」


 二人はビーカーに蓋をし、大学前の駐車場に止めてある黒いバンへと向かう。そのまま、黒いバンに乗り込み、どこかへと向かう。


「よし、着いたぞ」


 目的地に着き、黒いバンから二人は降りる。目の前には、オンボロの、木造アパートがあった。


「大丈夫か?」


「ああ、いよいよだ……」


 赤いタンクトップの男は震えながら、眼鏡の男に尋ねている。赤いタンクトップの男は不安があった。


「もし、失敗したらどうなるんだ?」


「多分、あのカップルみたいになるだろうな」


 タンクトップの男の頭に、玄関前で白髪になったアヤとリョウの姿が思い出される。顔面はしわだらけで、うつろな目で空中を見ていた。  


「とにかく、この液体を全身に塗るぞ」


 二人は、全身をビーカーの中の真っ赤な液体で塗りたくった。二人は全身真っ赤になり、傍から見れば異常な光景だった。


「よし、行くぞ」


 眼鏡の男は、目の前の木造アパートへと歩いていく。アパート右についている階段を登り、2階の、一番左の部屋にある木製のドアへと向かう。


「よし、入ったらここで暗くなるのを待つぞ」


 二人はそのまま、目の前の部屋の中に入る。そして、畳敷きの部屋の上に胡坐をかく。


 時間は経ち、部屋の外は真っ暗になっていく。部屋の中も闇に包まれ、瞬間、上から何かがグググと降りてきた。


「ふふふ……」


 それは、長い髪の女性の顔だった。それが、二人の前にゆっくりと現れる。


「ふふふ……」


 長い髪の女性の顔は、満面の笑みで二人を見つめながら笑っている。


「俺たちを、そっちに連れてってくれないか」


 無表情のまま、眼鏡の男は長い髪の女の顔に喋りかける。


「何……?」


 長い髪の女の顔は、急に真顔になる。


「……ついてきなさい」


 瞬間、長い髪の女の顔は再び天井に上がっていく。


 二人は立ち上がり、天井に手を伸ばした。


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