第三十五話 ある大学で起こった出来事
「ちわーっす」
ある大学の実験室に、一人の女子大学生が入ってくる。髪は茶色のボブで、白いブラウス、暗い青色の生地に、暗いオレンジ色のチェックのプリーツスカートを履いている。足元は、黒のドレスシューズを履いている。
「やっぱり、ここにいたんだ」
「何だ」
女子大学生は、研究室に入るとすぐさま、横に長い実験机の前にいる白衣を着た眼鏡の男子大学生に近寄る。眼鏡の男子大学生は、後ろを振り向き、女子大学生に尋ねる。
「いったい何なんだ」
「やっぱり、まだここで研究してたんだね。もう早く帰ろう」
「いや、まだ調べなきゃいけないことがあるから先に帰ってくれ」
眼鏡の男子大学生は、実験机の上のたくさんの実験器具を眺めている。何か青色の液体が入ったビーカーや、フラスコ、バーナーやメスシリンダー、顕微鏡やシャーレ等、様々なものが実験机の上に並んでいる。
「えー、一緒に帰ろうよー。ちょっと寄りたい所もあるし」
「あのなぁ……」
その時、実験室のドアが開く。
「ようお二人さん元気か?」
そこには、赤いタンクトップと赤い半ズボンを履いた茶色い肌の男子大学生が白い歯を見せ立っていた。茶色い肌の男子大学生は二人に近づいてくる。
「いやぁーなかなか大変だった。大会が近いからさ、コーチがなかなか放してくれなくてよ」
「まったく、お前まで来なくていいんだよ。俺は今、重要な実験してんだから」
「いいじゃねえか俺も、一応ここのメンバーだろ?」
茶色い肌の男子大学生は、白い歯を再び二カッと眼鏡の男子大学生に見せ、右肩に右手を置く。眼鏡の男はため息を吐いてうなだれ、女子大学生は尋ねる。
「そういや、佐藤君は掛け持ちしてんだっけ」
「おう、アメフトとこの、都市伝説調査隊」
「不思議研究同好会だ……」
佐藤と呼ばれた茶色い肌の男子大学生は間違え、すぐに眼鏡の男子大学生が訂正する。茶色い肌の男子大学生は頷く。
「あ、ああそうそう。不思議研究同好会だ」
「まったく、入るんならちゃんと覚えろよ」
「ところで、泉君はその実験、どれぐらいかかるの?」
女子大学生に泉と言われた眼鏡の男子大学生は、気難しい顔をして答える。
「たぶん、数時間はかかるだろう。何回か繰り返し実験して、成功した回数をカウントしないといけないからな」
ちらっと、実験机を見つめる。そして、女子大学生に尋ねる。
「お前のその用事、どうしても必要なのか?」
「別に必要ってわけじゃないけど……」
「なになに? 弘子ちゃん、こいつとなんか約束でもしてんの?」
佐藤が、二人の話に割って入る。弘子は、少し俯いて答える。
「うんまあ、そうじゃないんだけど……でも、仕方ないね」
「そうか、すまないな。また、今度にしてくれ」
「わかった……絶対、今度一緒に帰ってよ」
そう言うと、弘子は踵を返して実験室を出ていく。泉と佐藤は、その様子を見つめる。
「お前、いいのか? なんか寂しそうだったぞ」
「いや、遊びに行くのはいつでも出来る……今はこの実験だ」
泉はくるっと、実験机に向かい中断した作業に取り掛かる。佐藤はそれを見てあきれ果てる。
「ほんとに、いいのか……?」
後日、この大学の学生である中松弘子は、大学からの帰宅途中、大学近くの駅前を最後に、消息を絶って消えた。
ヒロ&アキト’s解説
「それじゃあ帰るぞ……」
ヒロ「うわあ!」
「どうした!」
ヒロ「な、なんだよあいつ!」
「あ? ああ、あの人か……」
「……」
「あの人は、鬼米来子さんだ」
ヒロ「鬼米来子……?」
「彼女も、俺たちと同じで、現状を変えたいんだそうだ」
「……」
ヒロ「そ、そうなのか」
「じゃあ行くぞ。手をつなげ」




