第三話 テレビ番組
あるテレビ局には、不思議な、噂がある。
ある理由で放送されず、お蔵入りになった、いわくつきの、テレビ番組があるというのだ。
それは、テレビ局地下にある保管室に保管されており、結構簡単に、見つけることができるらしい。
というか、隠されていない。
それは何故かというと、こういうことが、あったからだ。
あるテレビ番組のディレクターが、局の特番を作るため、保管室で、資料を、探していた。
その番組は、よくある、過去の色々な番組映像を、芸能人たちと面白おかしく、楽しむ番組で、その資料のため、過去の色々な番組映像を、探していた。
そんな中、そのテープは発見された。
どこかのスタジオで撮られており、芸能人たちがそれぞれ、面白い話をして、観客席の人たちの、爆笑を取っている。
それはもう、凄いくらいに爆笑を取っており、観客の声がデカすぎて、他の音が、聞こえないくらいだ。
所々、映像や音声が乱れており、だいぶ無音が続いていたりして、芸能人たちが、何を言っているかまではわからない。しかし、動作から察するに、何かを、捨てている話だ。
そして、その芸能人たちが、横に流れてくるエンドロールの中、カメラに向かって、手を振って終了している。
何の変哲もない、ただの、バラエティ番組だ。
しかし、その映像は、少し、おかしな部分があった。
その番組に出ている芸能人たちが、誰一人、誰も知らない芸能人たちだった。
立ち振る舞いは、芸能人たちそのもので、たくさんのスタジオにいる観客の爆笑や反応を見ても、芸能人たちであることは間違いない。しかし、誰も、テレビで一度も、見たことがない。何なら、その撮影された年の、タレントのデータを調べてみても、出てこない。無名の芸能人たちが、謎の、バラエティ番組をやっている。
昔のスタッフたちや素人たちが、番組のリハーサルや職場体験などで、映像を撮っていたのかとも思ったが、その人物たちは、昔のスタッフたちでもなく、ましてや、職場体験中の映像でもない。
もう一つの可能性として、地方のローカルタレントの可能性も考えたのだが、ローカルタレントを扱う番組は、この映像を作った当時、まだ、作られていない。
じゃあいったいこの映像は何なんだということになるのだが、最後の可能性として、ここのテレビ局で作られた映像では、ないんじゃないかと考えた。
それでもう一度、ディレクターは、記録されたテープを再生してみた。
すると、その映像の中の人物が、一人、増えていた。
しかも、芸能人たちはそいつ以外、全員後ろを向いて丸椅子に座っている。
そいつが突然口を開き、何かを捨てる仕草をする。すると、けたたましい観客の、笑い声が聞こえてくる。
ディレクターは、これはやばいと思い、そのテープを止め、すぐさまその場でテープを叩き割った。粉々に破壊し、編集室のごみ箱に投げ捨てる。
あれ以上見たら、何か、起こると思ったのだそうだ。
そして、しばらく経ち、再び、保管室に番組映像を探しに行った時、保管室の同じ場所に、そのテープが、置かれてあった。
何度処分しても、何度も保管室に置かれてある。
どうやら、局内にいる“何か”が、そのテープを、置いているらしい。
ヒロ&アキト´s解説
ヒロ「この人、何のビデオを見たんだろ」
アキト「世の中には、選択の数だけ世界が存在しているとか言われているな」
ヒロ「そうなの?」
アキト「ああ。もしかするとこの人、その世界のものを見ているのかもな」
ヒロ「そうかも」