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何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン弐
22/52

第十九話 廃校



 すっかり暗くなってしまった深い森の中で、その場には似つかわしくない灰色のビジネススーツに身を包んだ長髪の女性が、大きな学校の校門の前に立っている。

 

「まったく……」


 女性の背後には、これまた似つかわしくない、黒塗りの高級車が止まっている。車体前方に立っているその女性に向け、明るい、オレンジ色のヘッドライトを当てている。


 プルルルル……


 突然、女性のスーツの右胸ポケットにある薄型のスマートホンが鳴り響く。女性は、スマートホンを右胸のポケットから出し、電話に出る。


「はいもしもし、あの……もういいですか? いつまで待ってるんですか? 私、もう、1時間くらい待ってるんですけど」


 スマートホンから「いやぁ~もうちょっとかかるかなぁ~」と、相手の煮え切らない返答が返ってくる。女性は、電話の相手に叫ぶ。


「もう、いいです! そっちに行きますんで!」


 ビジネススーツの女性は、スマホを握ったまま大股で、目の前の校門へと歩き出す。鉄でできた重い門を、両手で右横にスライドさせる。


 この学校は、既に廃校になっている。少子化という理由もあるが、そもそも、建てられた場所が都会の中とかではなく、田舎の、高い山の上に建てられている。


 辺りには森しかなく、イノシシや狸、狐などが、よく、出てくるような場所だ。


 しかも、人々が住んでいる住宅地は、何キロも下にある山の麓で、この学校に通うためには、その距離を、徒歩で登ってこなければならない。


 そんなことで、建てられた当初はたくさんいた生徒たちも、年々減少し続け、この学校は、二十数年で閉校になっていた。


 それから数十年が経ち、辺りの木々は生い茂り、もう誰も、見向きをしなくなった頃、突然、その場所の管理をしていた市役所の方に連絡が入った。


 それは、どこぞの会社の社長からで、その廃校を、買いたいというのだった。


 そういうわけで、その廃校を買取りたいというどこぞの会社の社長と、今、その社長がいる校舎に向かおうとしている女性所員、そして、社長と共に、校舎の内見に来たその女性所員の先輩男性所員は、黒塗りの高級車で、この廃校に来ていたのだった。


「どこにいるんですか!? もう向かってますよ!」


 女性所員は、暗い廊下を歩きながら、スマホに向かい尋ねている。すると、スマホから、あやふやな返答が返ってくる。


「さあ、どこだろ……」


「はぁ?」


 女性所員は、唖然とする。こいつ、マジか。


「いやぁどこだろ……社長、どこですかね?」


 先輩男性所員は、どうやら、男性所員の近くにいる社長に尋ねている。社長の声が聞こえてくる。


「私が知るわけないだろそんなこと」


 ちょっと語気が強い。どうやら、切れる寸前のようだ。


「とりあえず、私がめぼしい所に行きますんで、そこでじっとしといてください」


 女性所員はこの日のため、その先輩男性所員から何回も、この廃校に行くよう指示されていた。そのおかげか、どこに何があるかは十分、熟知していた。


「あの、とりあえず、そこに何が見えるか、ヒントになるようなものはありませんか?」


「そうだな……し」


 突然、通話が切れる。


「あの……もしもし! もしもし!」 


 女性所員は電話を切られ、驚いてスマホを見つめる。そのあとも、に電話を掛けるが、先輩男性所員が、出ることはない。


「ったく、ふざけんなよ!」


 スマホを握りしめながら、女性所員は悪態をつく。いったん怒りを抑え、スマホのライトで廊下を照らす。


 女性所員は、ふと、思い出す。


 それは、この校舎がまだ子供たちに使われていた時のこと、ある噂が、学校中に広まっていた。


 この学校に、朝早くに来すぎると、神隠しに逢ってしまう。


 その当時、この学校の生徒が、突然、行方不明になったなんて話は、全くない。しかしその噂が、何故か学校中に広まっていた。


 手に持っているスマホで時間を確認すると、今は午前2時50分。時間にしても、朝早くなんて時間ではない。


 でも、ここを通っていた子たちはいつも、朝の5時出発で、一時間以上かけて学校へ通っていたりする。いや、いやいやいやいや、考えすぎだ。


 そんなことを考えながら、女性所員は、夜の真っ暗な廃校の中を、スマホの明かりを頼りに進んでいく。


 ふと、壁から、大きな物音が聞こえてくる。


 そこは、実験器具などがたくさん置いてある理科室があった場所で、中から大きな物音が、ドンドン、ガンガン響いている。


「え……」


 思わず、女性所員はその場で動けなくなってしまう。理科室の中では、ドンドンガンガン、何かが暴れているような物音が聞こえ続けている。


「どうしよう……入ろうか、いや、それとも、このまま帰るべき?」


 入る勇気がなかなか湧いてこず、女性所員は一回、深呼吸をする。


「すぅー、はぁー……よし」


 思い切り、理科室のドアを開ける。すると、暗闇の中、ドアを開けたその先に、黒い塊が、ウネウネウネウネ暴れ回っている。


「そ、そこにいるのは誰!」


 女性所員は、恐る恐るスマホのライトをそれに向ける。瞬間、大きな悲鳴を上げる。


 目の前に、手足を縛られた社長が、眼鏡をかけたスーツの男に、羽交い絞めにされていた。


「お前は、いったい誰だ!」


 眼鏡の男は、社長の口元を左手でふさぎ、女性所員に尋ねている。女性所員は、叫ぶ。


「あああ、あんたこそいったい誰よ!」


「俺は科学者だ! この学校には、実験をするために入ってきたんだ!」


 社長の口元を左手で抑えながら、眼鏡の男はまくしたてる。すると、理科室の電気が点く。


「何とかいけたぞ!!」


 眼鏡の男の右側にあるドアが勢いよく開き、中から、赤いタンクトップの男が出てくる。肌は茶色く日焼けしており、赤い半ズボンを着て、赤い運動靴を履いている。


「どうも」


 赤いタンクトップの男は、笑顔で女性所員に会釈する。


「何なのよあんたたち!」


 すると、縛られていた社長の口から、白い液体が吹き出し始める。眼鏡をかけた男は、手を放す。


 社長の口から、勢いよく、何かが上に向かって飛び出してくる。


「やばい!」


 それは、巨大な、一本の触手だった。触手の先端には、何か、見覚えがあるものがついている。


「ァァァァァァアアアアアアアアア!」


 触手の先端から、甲高い奇声が発せられる。触手の先端には、小さな、白目をむいた社長の顔が、ついている。


「出ちまったか。ちくしょう! 抑えるのは無理だったか」


 眼鏡の男は、尻もちをついてその光景に呟く。


「仕方ない、やるぞ」


 赤いタンクトップの男は、再び右のドアの中に入っていく。ガサゴソと音が聞こえ、勢いよく、ドアから飛び出してくる。


「よっしゃあ、いくぞー!」


 赤いタンクトップの男は、右手に持ったチェーンソーの電源を入れる。とてつもない轟音が室内に響き渡り、赤いタンクトップの男は、チェーンソーをその触手に向け振り回す。


「ギィヤアアアアアアアアアアアアアア!」


 触手が一気に真っ二つに切られ、物凄い断末魔が、触手の先端から吐き出される。校舎中の窓ガラスというガラスがすべて粉々に割れ、校舎内のガラスでできたものもすべて粉々に割れる。室内の電気はバチッと音をたてて消え、女性所員は、耳をふさいでその場に倒れる。


「よっしゃあ! やったぞ!」


「いや、やりすぎだ!」


 赤いタンクトップの男は、眼鏡の男にガッツポーズをしてみせる。眼鏡の男は、たしなめるように赤いタンクトップの男に叫ぶ。


 室内中、触手から噴き出された真っ赤な液体で、ドロドロになっている。


 ヒロ&アキト´s解説


 アキト「こいつら、七話の奴らだろ」


 ヒロ「確かに。こいつら七話の奴らだね」


 アキト「いったい何をしてんだろうこいつら、うっぷ」


 ヒロ「大丈夫?」

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