表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン弐
16/52

第十六話 真っ赤な服の女



 某有名出版会社の人気ネットホラー小説家が突然、音信不通になった。


 その当時、その出版会社では、大きな組織との不正行為が表沙汰となり、信頼回復に躍起になっていた。そんなさなか、人気のネットホラー小説家が、どさくさに紛れて行方不明になっていた。


 その小説家を担当していた編集者であるB氏は、行きつけの飲み屋で、心情を、少し酔っぱらいながら吐露していた。


「最近のあれのせいでイメージが悪くなっちゃって、作家さんがどんどん離れて行っちゃってる。何とかテレビやネットを使って本の宣伝をしまくってるが、売り上げは下がる一方だ。どうしたらいいか……」


 すると、その隣の席で飲んでいるテレビ局勤務のC氏がB氏に言った。


「一つ、面白い企画を思いついたんだけどさ、その小説家を探すのを番組にして放映してみないか」


 さらにC氏は続ける。


「見つかれば万々歳だし、見つからなくてもうまく編集でホラーっぽくしちまえばいいじゃん」


「それ、面白そうだな」


 ということで、B氏とC氏は、テレビ番組を作ることになった。


 人気ネットホラー小説家を探す番組企画はどんどん進んでいき、他のスタッフたちと共に、その小説家の家にカメラを持って行くことになった。


 白いテレビ局のバンにカメラマン一人、音声一人、ディレクターのC氏一人、プロデューサー一人、そして、担当編集者のB氏が同乗することになる。


 人気ネットホラー小説家の家というのは、意外にも、結構な山奥にある集落の古民家で、山の頂上に向かって、ピラミッド状に、道路が通っており、上から三段ずつ、家々が密集して区切られている。小説家の家は、その一番下の段の真ん中、一番麓に近いところに建ててあった。


「ここか」


 テレビクルーの面々は、そこに到着すると、白いバンから降りていく。小説家の家の、インターホンを押す。


「やっぱいないな」


 B氏がもう一回、インターホンを押す。ズボンのポケットから、銀色のカギを取り出し、目の前中央にある玄関の引き戸のカギ穴にカギを差しこむ。B氏は、ホラー小説家と仲が良く、いつでも入れるように、合いカギを持っている。


「それじゃあ行きましょう」


 後ろに並んでいるテレビクルーたちに一瞥し、B氏は中に入っていく。テレビクルーたちも後に続き、家の中に入っていく。


「おじゃましまーす」


 ネットホラー小説家の家は、ホコリ臭く、何より、汚い。まるで、誰も何年も住んでいないかのようだった。


「Aさんいますかー」


 皆、靴を脱ぐのをためらいつつ、家の中に上がっていく。B氏は、小説家の名前を何回も呼び、テレビクルーたちも、キョロキョロと辺りを見回している。


 B氏とテレビクルーたちは、小説家の家を、くまなく探索していく。小説家の家は二階建てで、一階を探索し終えると、今度は、二階に上がっていく。


「ここはどうでしょうか……」


 二階もくまなく探索していく。しかし、何の痕跡も見つからず、B氏は、がっかりする。カメラマン含め、それを見ていたスタッフたちも、つまらなそうにその場に佇む。


「もう……行きましょうか」


 何もなかったその日、皆、テレビ局に戻っていった。


 それからしばらくの事、その小説家を捜索することは、一時、中断する事になってしまった。色々忙しくなったのもあったが、その小説家の自宅以外、全く情報が、出てこなかった。B氏はもう、他の小説家を、担当していた。


「はいもしもし……」


 そうして、ネット小説家の捜索が中断していた時、ある所から再び、その出版社に電話がかかってきた。それは、C氏からの電話だった。


「凄いことが分かったから来てくれ」


 早速、B氏は出版社からタクシーを呼んでC氏のいるテレビ局に向かう。テレビ局につき、すぐさま会議室に通される。


「これを、見てくれ」


 会議室にいるC氏が、興奮気味にB氏に近寄ってくる。後ろには大きな薄型のテレビがあり、その前にある会議用のテーブルの上には、コードでテレビとつながれたテレビカメラが置いてある。


 C氏は、振り向いて手に持っているリモコンのボタンを押す。


「Aさんいますかー」


 それは、だいぶ前に行ったネットホラー小説家の家の中の映像だった。しばらく後ろのテレビで映像を流し、C氏は突然、映像を止める。


「これを見てくれ」


 C氏は、映像を止めると、一部分を拡大していく。そこには、小説家の家の二階、大きな部屋の窓が映っている。


 二階の大きな部屋の窓は、雨戸が閉じられ、部屋の中が、真っ暗になっている。


「ここだよここ」


 興奮気味に、C氏はテレビに近寄って指をさす。


 窓の外の雨戸の右端、縦に長い小さな隙間に、小説家A氏の、左半分の顔が微かに映っている。

 

「一瞬だったが、見つけたんだよ」


 C氏は、誇らしげにB氏に喋る。


「でも、何でA氏がこんなところに……一階の瓦屋根の上にA氏が立っていたってことか?」


「俺にもわからないよ。でも、今日もう一回行ったほうがいいな」


 B氏とC氏は、再びテレビクルーを連れ、小説家の家に向かった。


 小説家の家に向かう途中、テレビ局のバンの助手席に座っているB氏が、何かに気づく。


「あれ……」


 それからしばらく時間が経ち、白いバンが、小説家の家の前に到着する。皆、白いバンから降り、持ってきた拡声器で、小説家の名前を叫ぶ。


「Aさん! いるんでしょ! 出てきてくださいよ!」


 拡声器を持って、B氏が叫ぶ。辺りはもう真っ暗で、照明をたかないと、いけなくなってきている。


「Aさん! 出てきてくださいよ! Aさん!」


「うるせぇ!」


 二階の瓦屋根から、青白い顔をしたA氏が飛び出てくる。頬はこけ、ひげ面で、髪は、ぼさぼさになっている。


「一体、どうしたんですか。出版社と連絡を絶って……」


「俺は、気づいちまったんだよ!」


 B氏の呼びかけに、A氏は叫ぶ。


「ある時、俺は気づいちまったんだ! うちの家のほうに、変な女が、この山の頂上から降りてきてんだよ!」


 A氏は、瓦屋根の上から、目の前の山の頂上に向かって、指をさしている。どうやら、ピラミッド状に区切られた道路の頂点から、道路伝いに、変な女が、A氏の自宅に、毎晩、来るそうだ。


「奴は、家の中にも入ってきたんだ! 四つん這いで……見た目は赤い服を着た人間の女なのに、四つん這いで、二階の俺の書斎に入ろうとしてきたんだ!」


 B氏もC氏も唖然としてしまう。A氏は続ける。


「だから俺は、二階の窓を全部雨戸にして、二階の瓦屋根の小さなスペースに隠れて生活してたんだ。あいつに襲われないように……」


「いいからとりあえずそこから降りてきてください。危ないですから。テレビ局か出版社近くのホテル泊まりましょう」


 B氏とC氏はA氏を説得する。


「見ろ!」


 再び、A氏は二階の屋根から山の頂上を指さす。皆振り返るが、向かいの家が邪魔で見えない。しかし、屋根の上に立っているA氏からは、山の頂上から、赤いワンピースを着た女が、四つん這いでこっちに向かって走って来ているのが見えている。


「ああ来る! 来る! みんな、逃げろ!」


 A氏は、恐怖でB氏とC氏たちに警告をする。すると、その様子を見た全員が、A氏に叫ぶ。


「わかりました! Aさん、今からそっちに行きますから待っててください」


 B氏もC氏も、全員、両手を地面につける。


「今から、行きますね!」


 ヒロ&アキト´s解説


 ヒロ「これクルー全員……」


 アキト「行く道中、遭遇しちゃったんだろな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ