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何なのかわからない。アーカイブ  作者: 中松弘子
シーズン壱
1/52

第一話 A MEI



頼む誰か、助けてくれ。私はこのまま、狂ってしまう。

                       

                      ―精神科医A氏の手記より抜粋



 その日、私はAさんから電話があり、Aさんとファミレスで、ランチを一緒に食べていました。


 最初は、近況や今日あった出来事など、食事をしながら、たわいもない会話をして楽しんでいました。そしたら急に、Aさんが、実は……って私に、話をしてきたんです。


 その日、Aさんはいつも通り、自分が勤務している病院で、診察をしていました。


 一日の半分の業務が終わって、昼休憩をとっていると、あるメールが、病院のパソコンに送られてきたんだそうです。それは以前、Aさんが診察していた、ある、患者さんの母親からのメールでした。



 A先生助けてください。息子が、自分の手首を切りました。何故かはわかりません。でもずっと、“虫が”とか“あいつら”とか、訳の分からない事を呟いています。


 何とか病院に行って、傷の手当てをしてもらったんですが、その病院の先生に診てもらっても、何も分かりません。


 それに、その日から息子は、どこから持ってきたのか包丁を振り回して、家の中を、やたらめったらに切り刻んでいるんです。


 先生お願いです。このままじゃ私たち夫婦は、息子に、殺されてしまいます。


          ―A氏のパソコンから発見された元患者の母親からのメール



 それでAさんは、そのメールを読んですぐに仕事を終わらせると、患者さんの自宅に向かったそうなんです。その患者さんの自宅というのは、閑静な住宅地にある、二階建ての、大きな家だったそうなんですが、その大きな二階建ての家に向かうと、庭の草木は物凄く生い茂り、まるで、人が住んでいないかのようだったそうなんです。


 それで、その患者さんの自宅のインターホンを押して、そこの患者さんの母親に出迎えられたそうなんですが、その母親は、物凄くやせ細り、本当に、骨と皮だけになっていたそうなんです。


 その様子に、Aさんは驚いたらしく、驚きながらも、その患者さんの母親に案内され、二階にある、患者さんの部屋に向かったそうなんですが、二階の患者さんの部屋に入ると、患者さん、何もない真っ白な部屋の壁を叩きながら、ぶつぶつ、独り言を言っていたそうなんです。


 それで、診察が始まって、Aさん、患者さんに話しかけてみたそうなんですが、まったく答えてくれず、ずっと、壁を叩きながら、ぶつぶつ、独り言を繰り返していたそうなんです。


 それで、Aさん、その様子に困ってしまって、一人、ため息をついたそうなんです。そしたら、


「虫ぃ……」


 って急に、患者さんが、真っ赤な目でこっちを見て笑いかけてきたそうなんです。


 その様子に、Aさん、怖くなってしまって、その日はそのまま、患者さんの母親に適当なことを言って、家に、帰ったそうなんです。それで、その日以降、一度も、診察には、行かなかったそうなんです。


そうして、しばらく経ったまたある日、また、いつものように病院で診察をしていると、今度は、電話がかかってきて、患者さん、二階から飛び降りて亡くなったそうなんです。


 Aさん、罪悪感を感じてしまって、後日、その患者さんの家にまた行ったそうなんですが、患者さんの家では、お葬式をちょうどやっていて、お経が、家の外まで聞こえていたそうなんです。


 それで、Aさんが患者さんの家に入って、患者さんの両親と会話をし、患者さんのご遺体の前に手を合わせて座ると、患者さんの顔、全体が、真っ黒になっていたそうなんです。


 最初、何か黒い布でもかぶせられているのかと思ったらしいんですが、どうもそれは、違うようなんです。


 患者さんのご遺体の顔全体が、小さな大量の黒い虫に、覆われていたそうなんです。


 それに気づいた瞬間、黒い虫たちは一斉に、Aさんの方に飛んできて、Aさん、叫び声をあげて、その場に後ろ向きに倒れこんだそうなんです。でも、次の瞬間には、何もいなくなっていて。


 それでAさん、呆気にとられてしまって、その場にいる皆さんに謝って、その日は家に、帰ることにしたそうなんです。


 その日からというもの、Aさんの周りでよく、黒い虫を、見るようになったんだそうです。


 それは、直径2ミリ程度の黒い丸い虫で、足がたくさん生えていて、それが、色んな所に飛んでいるらしいんです。


 家や森の中、街、様々な所で見るようになったんだそうです。


 それでとうとう、Aさん、自分も頭がおかしくなったのかと思ってしまって、知り合いの脳外科医の先生に診てもらったそうなんですが、結果は、異状なし。どこも、悪くはなかったんだそうです。


 それでまた、数日が経って、いよいよAさんが、軽い、ノイローゼみたいになってしまった時、たまたまネットで見かけたサイトに、自分が見ている虫と特徴が一致する、黒い虫を調べているサイトを発見したそうなんです。


 どうやらそのサイトは、どこかの大学の教授が個人で作ったサイトらしいんですが、あまりにも特徴が一致しているので、Aさん、その教授に、会いに行ったそうなんです。


 Aさんが会いに行くと、教授は快く出迎えてくれたらしくて、親身に黙って話を聞いてくれたそうなんです。


 それで、教授がおっしゃるには、その虫というのは、太古の昔から生きている生物らしくて、進化の過程で、他の生物には見えないよう、透明に、消えることができるようになったんだそうです。


 本来は、普通の人間には見えないんだそうですが、時たま、その虫が見える人間がいるんだそうです。


 しかも、この虫の特徴として驚くのが、人間の体内に入り込み、その人間の精神を、食べてしまうんだそうです。


 でも、誰が信じますか? 精神を食べる黒い虫ですよ? 私はAさんが、私の事を、馬鹿にしているとしか思えませんでした。だってそうですよね。見えない透明な黒い虫とか。


 でも、今になって、こういうことが起こってしまって、もしかするとと思ってしまうんです。


 ちゃんと、話を聞いとけばよかった。


                          ―A氏の友人B氏の話



 今日風呂から上がり鏡を見ると、私の右胸のあたりに、あの黒い虫が、一匹止まっていた。あの教授は嘘をついている。どんなことをしても、この虫たちを止めることなどできない。鏡で見つけ、すぐ取ろうと手を伸ばしたが、あいつは体内に入っていく。もう終わりだ。私はこのまま、あいつらに、食われてしまうんだ。もう嫌だ。助けてくれ。私は、私は、私は、私は、わたしは、わたしは、わたしは、わたしは、わたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしはわたしは(ここから先は、文字が乱れており、私には解読することができない)


                     ―精神科医A氏の手記より抜粋


 ヒロ&アキト´s解説


 ヒロ「これは不思議な話だね」


 アキト「人間の精神を食べる虫かぁ」


 ヒロ「よく、薬物中毒の人なんかが、幻覚で虫が見えるとか言っているよね」


 アキト「あれもひょっとするとほんとに見えてるのか?」


 ヒロ「まさかぁ」

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