どちら様でしょうか
帰り道では精霊達が王妃様からもらったお菓子を頬張っていた。
「食べ過ぎるとお腹痛くならないの?」
『僕達にそういうのはないよ』
『そーそー! 私たちは元々食べ物食べなくてもいいでしょ? だから吸収はされないの』
『ま、美味いから食べるだけ』
「へぇー、太らないっていいなぁ」
『ミーシャは太ってても可愛いよ』
「いや、気にするから」
王妃様とのお茶会も無事に終わった事で安心する事が出来た。
次の日はいつも通り神殿に通い朝のお祈りをする。
「精霊王様、いつも私達を見守って頂きありがとうございます。 今日も1日平和に過ごせますように……」
いつもならこれで終わりだが今日は違った。
『お主か今年の聖女は』
「え」
目を開けると神殿にいたはずなのに花が咲き誇る森に立っていた。
「ここは一体……」
『ミーシャここは精霊界だよ』
「え! ここが!?」
『うん! 私達が生まれた場所!』
『精霊は花から生まれるんだ』
「そうなんだ、知らなかった……ところでこちらの方は」
大きな木に穴が空いていてそこに座り、先程からじっと見つめてくる男性。
『何言ってんだ。 この方が精霊界の王シャルディア様だぞ』
「え! シャルディア様!?」
長い銀の髪が風に靡き、切れ長の目がミーシャを見つめる。
「シャ、シャルディア様っ、初めましてご挨拶が遅れ申し訳ございません。 今年の聖女を務めさせて頂いておりますミーシャ・グランドと申します」
まさかの精霊王に焦りまくり急いで挨拶をする。
そんなミーシャを見てシャルディアは……。
「よい、堅苦しいのは苦手だ」
「ですがっ……」
「貴族というのはなぜそう堅苦しいのだ」
「……」
『だから言ったでしょう!』
『シャルディア様は心の広い方なんだよ』
『滅多な事では怒らないんだ』
「ほぇー」
シャルディア様はこういうのは苦手で眉間にシワがよっていた。
「こいつらと話す様な話し方でよい」
「え、」
「我が良いと言っている」
「わかり、ました…」
本当にいいのかなと思いつつ、シャルディア様本人が言うんだからいっかと思うミーシャであった。
「では、シャルディア様今日はどうして私を呼んだのですか?」
「別に意味はない。 今年の聖女は前回と違った感じだったしな」
「前回の聖女ですか?」
「あぁ、前の聖女は公爵令嬢だったか。 中々に面白かったぞ」
「はぁ」
「私は公爵令嬢ですのよとか喚いてたな」
(それはまた古典的な令嬢……)
「まぁ、プライドはいっちょ前だからな聖女の仕事は頑張っていた」
「そうですか」
「お前はそうだな……アイリーンに似ている」
「アイリーンって初代聖女様の?」
「あぁ、本当は聖女なんかやりたくない事や」
「へ?」
「その能天気なところとか」
「ちょっ」
「家でのんびりと引き篭っていたいところもだな」
「な、なんで……」
「我は王だぞ。 精霊達が勝手に報告してくる」
「ミルク? マカロン? チョコ?」
なんて事を報告してくれてるんだとじとり……と3人を見る。
『本当の事でしょ』
『本当の事!』
『むしろ何が駄目なんだ?』
「…………」
そうだよね、この3人に言ったところで意味ないか。がくりと項垂れる。