お茶会
夜会が終わってからミーシャにはたくさんのお茶会の招待状が送られてきた。
聖女との繋がりを持ちたい貴族の思惑がひしひしと伝わる。勿論、中には純粋に仲良くなりたい人もいるだろうがミーシャには心の中までは分からない。
「あぁ……どうしよう」
『お茶会? そんなに嫌だったら行かなくていいんじゃない?』
『そうだよ! 凄い上から目線のこの人なんか意味分かんない』
『ミーシャは聖女の仕事で忙しい』
「そうもいかないのよ。 全部は無理だけど1つぐらいは行っとかないとね……でもどこに行けば」
聖女という立場上、同じ派閥の所に行ってしまうと変に勘ぐられてしまうから出来るだけ影響がなく中立のところに行きたいのだが……それが難しい。
「うぅーん」と悩んでいると1つだけ豪華な紋章が付いている手紙を見つけ飛び上がる。
「こ、これは!! 王妃様からの招待状!」
まさかの王妃からの手紙に冷や汗が止まらない。
大量にあるから見逃してしまう所だった……。
すぐに参加の返事を書いて送ってもらった。
「危ない危ない。 それにしても王妃様かぁ……」
ヘンリー殿下と婚約し王妃様とは数えられるぐらいしか会ったことがない。その時も会話は最小限だった為、正直王妃様の事は何も分からないのだ。
「ヘンリー殿下とも少し違う雰囲気なんだけど読めないんだよね」
王妃主催のお茶会となるとそれなりのドレスやマナーに気をつけなければ……
『王妃のお茶会だったら美味しい物たくさんあるかな!』
『僕たちのお菓子があるかもね』
『チョコ……』
のんきな妖精たちを尻目に溜め息をつくミーシャであった。
※
「あれ?」
お茶会では遅れてはいけないと思い、早めには出たものの通された庭園には誰もおらず椅子も2つしかない。
「え、まさか……ね」
嫌な予感を感じこめかみに汗が流れる。
「待たせたわね」
まさかだったぁぁぁ!!
「王妃様、この度はお茶会にご招待頂き誠にありがとうございます」
「今日は2人だけなんだし楽にしてね」
やっぱり2人なんだ……。
にこにこと笑顔を装備しているが内心焦りまくりのミーシャ。
「貴方とはお話しする機会があまりなかったでしょう? だからこれを機会に話したくて」
「お気遣いありがとうございます。私も王妃様とのお茶会楽しみにしておりました」
「わたくしも娘が出来たようで嬉しいわ」
ほっ。
良かった、いきなり息子はあげないわ! みたいな事言われたらどうしようかと思っていたけど。
「ところでミーシャさん」
「え、はい」
「わたくし、貴女にお話があるのだけれど……」
「は、はい」
え、やっぱり。私何か粗相した?
それとも息子に相応しくないわ的な?
「ヘンリーの事なのだけれど」
「は、はい! (うわ、きたぁ!)」
ドキドキしながら王妃様の言葉を待つ。
「ヘンリーは貴女を大事にしているかしら?」
「へ?」
予想と違う質問に変な返しをしてしまう。
「あの子頭が固いというか少し…思ったことに対して意見を曲げにくいというか」
「はは……」
「ヘンリーの事はもちろん大切よ。でもお嫁さんを大切にしないのは良くないもの」
「あ、ありがとうございます」
思ったより王妃様はちゃんとしてた。いや、ちゃんとって失礼だけれど息子第一じゃなくてよかった。
「殿下は確かに1つの事にしか目がいかなくなってしまう事もございますが、お茶をご一緒にしようと時間を作ってくださったりしています」
「あら、意外とまめなのね」
「はい」
「それなら良かったわ。 何かあれば遠慮なくわたくしに言ってちょうだい」
「ありがとうございます王妃様」
『良かったね! ミーシャ』
『王妃様優しいね!』
『チョコ……』
「……あ、あの王妃様申し訳ありませんが、こちらのお菓子を少し頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろん構いませんよ。 今召し上がっては?」
「いえ、私ではなくその……精霊達が食べたいと言っておりまして……」
「まぁ、精霊?」
「はい」
「やはり聖女には精霊がついているのですね。 わたくしには見えないので分かりませんが」
『まぁね、僕達は聖女にしか見えないから』
『偶に見える子もいるけど子どもとかかしら』
『大人は無理だ。 心が穢れてるからな』
(偶に見える子いるんだ)
「いくらでも持って行ってちょうだい」
「ありがとうございます」
お菓子を大量にもらってほくほくな精霊達であった。