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第5話 ルーファスという王国最強騎士

 白馬に跨る白銀の騎士。

 手綱捌きも完璧だし、お姫様抱っこも板についており普通の令嬢なら即恋に落ちているようなシチュエーションだが、私は思わず突っ込んだ。

「大丈夫でした」とか「無事ですか」とか一切ない。というか、その間に馬車に乗っていた御者(誘拐犯の一人)を斬り伏せている。いつ剣を抜いたのかも見えなかった。さすが王国最強。


「ああ、まったく。今日も襲われてしまいましたね」


 なんでコイツは滅茶苦茶良い笑顔なのだろう。

 イケメンぶりが本当に腹立つ。一発殴ってやろうか。


「ソウデスネ」

「やはり私の護衛が必要ではありませんか」

「イエイエ」

「昨日も帰り道を襲われたばかりでしょう」

「ソウデスカネ?」

「ヴェロニカ姫、なぜ片言なのでしょうか?」


 そう昨日は帰りに市井で新商品の茶葉を購入した帰りだった。その時も、ルーファスが途中から出張ってきたのだ。おかげで私は誘拐されずに済んだ。確かにルーファスがいれば誘拐未遂で済む。けれど誘拐が発生すること自体が問題なのだ。もう八年以上続いてきたが、いい加減誘拐されまくる日々ともオサラバしたい。あとルーファスとも。


「根本的解決をするため父様とギルバート兄様に相談するわ」

「………………私が居ないとダメだというのに。どうして頑なに私を傍に置こうとしないのですか? 寂しくて昨日は部下にみっちり稽古をつけてしまったのですよ。部下から苦情が来ているですが姫の方で何とかしてくれませんか?」

「部下に八つ当たりするからでしょう。私のせいにしないで」

「では、せめて『私が居ないと困る』と、『私ではないとダメ、ずっと傍にいて欲しい』と言ってくださいませんか?」

「嫌よ」


 憂いた瞳で見つめる眼差しは真剣そのものだ。

 心が揺らがないと言ったら嘘になるが、この男の願いなど叶えてやる義理はない。報われない願いがあると思い知ればいい。だいたいこんなに「私のことが好き」みたいな態度をしていたルーファスがいけないのだ。これでは勘違いしてもしょうがない気がする。


「顔が近い。あと危ないから前を見て走りなさい」

「私ぐらいになりますと目を瞑っていてもどこを走っているのか把握できるのですよ。ヴェロニカ姫の目的地である魔法学院まで後、五分と言ったところです」

(五分ぐらいなら飛んで──)


 飛び降りてやろうと思ったのだが、その前に私を抱きしめる腕に力が篭ったのがわかった。笑顔で「離すわけないじゃないですか」と無言で訴えている。

 どさくさに紛れて体を密着させることや、不意にキスをしようとするところが腹立たしい。イタリア人か。いやこの世界にイタリア人はいないけれど。紳士ってなんだろうって最近思う。いや騎士道精神の方もだけれど。

 そう護衛の任を解いたのにお咎めがないのは、彼がことごとく私の窮地を救ってしまうからだ。これでは称賛を受けることはあるにしても非難など出来ない。


(本当に根本的な解決をしなきゃ私の胃と精神が先にやられる)



 ***



(はあー。疲れた)


 やっとのことで教室に入った時には、一時間目ギリギリだった。周囲の視線はいつもの事なので気にせずに席に座る。ケヴィンは父様への報告のため午前中は欠席するらしいが、馬車に置き去りにしていた鞄だけ届けてくれた。


「ヴェラ、大丈夫だった?」

「大変だったな、姫様」

「ええ……」


 声をかけてきてくれたのは、同級生のジョセフ=フーカーと、ナンシー=カークだ。

 ジョセフはクライノート商会の息子で、商人根性あり割と強かではあるが、基本的に気のいいやつである。前世から紅茶好きだった私にとって、ジョセフの仕入れる茶葉は中々に魅力なのだ。他にも前世の知識を生かして事業協力関係が結べればと考えている。


 ナンシーは子爵家の次女で隣の席になったのが縁で何かと話す事が増えた。三つ編みに眼鏡と地味な格好をしているのは目立たないためだとか。目立ちたくないなら私と話すのは人選ミスな気がする。


(正直、ボッチ覚悟だったけれど意外とみんな好意的ね)


 入学したての時は、値踏みするような視線が多かったけれどだいぶ落ち着いてきたようだ。変な取り巻きもいないのもありがたい。とにもかくにも魔法学院の授業は楽しい。前世でもRPGゲームやファンタジー物の小説を好んでいたので、実際に魔法が使えるとなると俄然テンションが上がるというものだ。

 しかも私には光と風の属性があり、空を飛べるのも風魔法の恩恵である。


(魔法学院の入学試験で魔力測定をした時に分かったけれど、複数の属性持ちってあんまりいないものね)


 入学試験の事を思い返していると教室のドアが開き、講師が入ってきた。


「はい、席について」

(ん? なんか聞き覚えがあるような)


 生徒の反応は様々だった。この学院の講師は美女やイケメンが多い。前世の地球だったら俳優やモデルレベルがごろごろいるのだ。顔面偏差値が高いのは目の保養になって良いけれど。


「臨時だが、基礎魔法の授業を受け持つことになったルーファス=オクリーヴだ」

「!?」


 教科書から顔を上げると、黒のタートルネック、黒のズボン、白の外套を羽織ったルーファスがいた。しかもちゃっかり眼鏡をかけている。

 お前は騎士ではなかったのか。いつ転職(ジョブチェンジ)をしたのだろうか。というか伊達眼鏡は必要あるのだろうか──などなどツッコミが追い付かない。


(何しに来たのよ!?)

 

 ルーファスと目が合うと、こちらに向かえってウインクをぶちかまして来た。「キャアー」と黄色い声が上がったが、私としては「ギャアア」と叫び出さなかっただけ偉いと思う。


(本当に何を考えているのか訳が分からない。聞いてもルーファスの思考回路を理解できるかは不明だけれど。あれかしら、本当に騎士としての忠義しか頭にないとか?)

いつも読んでいただき、ありがとうございます(о´∀`о)

毎日更新を予定しておりますが、「良いところで終わってーーーー!」「いつも楽しみです!」と思ってくださったら嬉しいです。


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