最終話 エピローグ・後編
数年後──。
オクリーヴ家の屋敷には、いくつもの絵画が飾ってある。
五年前に一番好きだったのは結婚式の絵画だ。
白の花嫁衣装は、プリンセスラインで、上半身はぴったりとしており、ウエストから裾にかけて広がった華やかなドレスだ。金と銀の刺繡をふんだんに使われており、宝石も散りばめられている。長い髪を編み込みでまとめており、白薔薇の生花をアクセントに着けてもらった。銀のティアラとヴェールを付けてもらい完璧な花嫁姿だ。
当時、部屋を訪れたルーファスの姿に固まっていたのをよく思い出す。前からいい男だとは思っていたが、三割増しでかっこよかった。白銀の髪に、真紅の瞳、整った顔立ちだけでも心臓に悪いのに、今日のタキシードは彼の良さを際立たせる。何よりも白の衣服にたいして赤薔薇のコサージュとの組み合わせ素晴らしく、思わず見惚れてしまう。写真に収めたい。出来る事なら録画もしたい。と思ったほどだ。
三年前に気にいっていた絵画が変わり、家族四人の絵画を中央に飾ってもらった。
双子の家族が増えたからだ。ルーファスは「自分の子供に対してどう向き合えばいいのか分からない」と困惑していた時もあったけれど、共に過ごすうちにその悩みも解消していった。
アイシア領は二年ほどかかったが見事な復興を遂げ、現在ではカルム王国の経済を支える国中心の貿易都市となった。人々も活気に満ち溢れ、様々な商品がこの地に流れてくる。人もそうだ。
私はオクリーヴ夫人として屋敷の事や慈善活動など夫、ルーファスと共に活動をしていたが、妊娠後は屋敷の事と子供たちの育児に専念させてもらっている。
「私のように寂しい想いをさせるような幼少時代は迎えたくありませんから」と彼は子供が出来たと告げた時に、私に語ってくれた。
現在。また新しい絵画を描いてもらうため、近々絵師を屋敷に呼ぶだろう。
新しい家族が増えた記念に。
「ルーファス、今でも寂しい?」
「私は──ヴェラ、貴女と出会った時から寂しくはありませんでしたよ」
日に日に賑やかになる屋敷の中で、ルーファスも子供との会う時間を捻出してくれた。双子の兄のエルと妹のティアはルーファスが顔を出すたびに駆け寄って抱っこを請求する。
賑やかな声に反応して、私のお腹の中にいる子が動いたような気がした。
もう彼の中で孤独で、灰色だった屋敷の思い出を上書きが出来たのだろうか。ずっと孤独と温もりと本当の愛を知らなかった少年は──ルーファスは幸せだろうか。
「ヴェラ」
「母様」
「かーさま」
てこてこと擬音語が聞こえそうな双子の子供たちと、愛しの旦那様を迎えるように、私は両手を大きく広げた。
「愛しているわ。ルーファス、エル、ティア」
END
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