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第7話 初デート?

理解してくれる幼なじみがいるのはいいですね。

 元々女の子が周囲の視線を集めていてたせいか、突然の最低という言葉に周りの人達も何事かと俺の方を見てくる。


 いきなり最低と言われて驚いたが、まさかひょっとしてこの娘がエリカさんなのか?


「私はエリカです。今日サラ先輩に言われてしかたなく来ましたが、お互い乗り気ではなかったようですね」


やっぱりそうか。


「いや、そんなことはないぞ。けど遅れてごめん」


 エリカさんはメチャクチャ怒ってる。だが40分も遅刻した俺がどう見ても悪い。何を言われても仕方ないな。


「謝らなくていいです! 汗だくで服もデート用ではないし⋯⋯何だか私だけ張り切っていたようでバカみたいです⋯⋯」


 そう言ってエリカさんは悲しそうな表情をする。


 確かにそうだ。急ぐあまり汗をかいているし、服も魔物討伐用の物だからとてもデートに来る格好ではない。

 そして俺に比べてエリカさんは絹のような髪に薄くメイクをして、服装も清楚な感じで俺とは雲泥の差だ。


「申し訳ない」

「ですから謝らなくていいです! 今日は他に用事があったのに⋯⋯こっちを優先しなければ良かった。さよなら⋯⋯もう2度と会うことはないと思いますが」


 そう言ってエリカさんはこの場から去って行った。


 何も言い返すことができなかった。けどたとえどんな事情があろうと遅れてきた自分が悪いし、今さら追いかけて理由を話すのもな。

 ただサラには悪いことをした。せっかく紹介してくれたのに。


「おい、あいつあんな可愛い娘とデートなのに遅れて来たんだって」

「まあ確かにあの格好はありえないよね」

「女の子は可愛い服を着てたのに⋯⋯」


 今のエリカさんとのやり取りを見物していた周囲の人が、俺を哀れんだ目で見てくる。


 と、とりあえずここから離れるか。

 俺は周りの人の目から逃げるようにこの場を後にし、自宅へと向かった。


「ただいま」

「おかえり⋯⋯て! 兄貴帰ってくるの早くない⁉️」


 げっ! セレナだ。まためんどくさい奴がいたものだ。


「はっは~ん⋯⋯さては兄貴振られたな? どうせデート中にエッチなことでもしたんでしょ?」


 実際はデートすらしてないけどな。


「ねえねえ⋯⋯サラ姉の後輩ってどんな人だったの? 教えてよ」


 こんなセレナでも年頃の娘なのか、デートの話しに興味津々ようだ。


「いや、一分くらいしか会ってないからよくわからない」

「えぇぇ! 何それ」


 正直俺としては話したい内容じゃないので、セレナのことを無視して階段を昇り、自分の部屋へと向かうことにした。


 俺は部屋に入ると部屋着に着替えてベットに横たわり天井を見つめる。


「あ~あ⋯⋯今日は失敗したな」


 オークに襲われたノエルを助けたまでは良かった。けどその後リボン探しに夢中になってデートの時間を忘れるとは。

 そして俺はエリカさんを待たせた挙げ句、汗だくで着替えることも忘れていた。


「エリカさん⋯⋯可愛かったなあ」


 もしもう一度会うことが許されるならちゃんと謝罪をしたい。


 そして俺はどうやってエリカさんに謝罪をしようか考えていると気がつけば睡魔に襲われ、ベットで眠ってしまっていた。



「⋯⋯い」

「⋯⋯きろ」


 ん? やばい。知らないうちに寝てしまったようだ。

 今日のデートが楽しみで昨日眠れなかったり、ノエルのリボンを探したりしてたから疲れてたのか。

 でも何か聞こえてきたような⋯⋯。


 俺は覚醒しようと目を開けるとそこにはサラの顔があった。


「くっ! ここは地獄か」

「何言ってんの! ここは天国に決まってるでしょ」


 俺のボケに対して透かさずサラが突っ込みを入れてくる。


「おはよ。良い夢は見れた?」


 夢を見たかどうかは覚えてないけどエリカさんに最低と言われたことが頭にちらつき、少なくとも良い気分ではない。


「あんたエリカと何があったのよ? あの娘理由を聞いても教えてくれないし」


 どうやらエリカさんは俺がデートに遅れたことをサラに言ってないようだ。


「サラ⋯⋯すまん」


 何はともあれまずはサラに謝罪する。

 今回の件で、サラとエリカの仲が悪くなってしまう可能性もある。そう考えると申し訳なくて謝らずにはいられない。


「だから何があったのよ? 理由がわからないとその謝罪を受けることはできないわ」

「その⋯⋯遅刻した」

「えっ? 遅刻?」

「後、服も魔物討伐用のもので、汗だくになって行ったから怒られた」

「あんたバカ? 今日はエリカの初デートだったのよ! それを⋯⋯」


 マジで? あんなに可愛いのに初デート⋯⋯だと⋯⋯。


「申し訳ない!」


 俺はサラに向かって土下座をする。


「それ⋯⋯私じゃなくてサラに言ってよね」

「それはもちろんだ。ただもう一度会ってくれればだけど」

「そうね⋯⋯あの娘頑固だから私の言葉に耳を傾けるかどうか⋯⋯」

「それもそうだけど⋯⋯サラの顔に泥を塗るようなことをしちまったから」

「私? 私には別に謝らなくていいわよ」

「えっ? なんで? 今頃エリカさんはサラ先輩変な男を紹介してきてって絶対怒ってるぞ」

「だから私には謝罪はいらない。だってあんたが遅刻してきたのって何か理由があるんでしょ?」


 さすが幼なじみ⋯⋯するどい。


「まあ本当に寝坊して遅刻したならぶっ飛ばすけどあんたが理由もなく遅刻する奴じゃないってわかってるから」

「サラ⋯⋯」

「私がエリカの機嫌を治してあげるから、あんたはその時にちゃんと謝りなさいよ」

「あ、ああ」

「それじゃあさっそくエリカの家に行ってきますか。上手く行ったらあんた奢りなさいよ」


 そう言ってサラは部屋を出ていった。


 普段お互いに憎まれ口を叩くけどサラが俺のことを理解してくれて正直嬉しかった。


「ちくしょう。サラに貸しが出来ちまった」


 しかし素直に慣れない俺は誰もいない部屋で1人、そう呟くのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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