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第31話 いざ天へと続く島へ

 朝日が上り暖かい日が照らし始めた頃中央通りの噴水にて


 俺は天へと続く島へと向かうためパーティーメンバーと待ち合わせをしていた。


「何かドキドキしますね。楽しみでもありますし⋯⋯少し怖くもあります」


 俺の横には心臓に手を置いたアイリちゃんとサラがいる。


 ドキドキしているアイリちゃんも可愛いなあ。こう⋯⋯なんていうか護って上げたいオーラを出しているよな。


「ほんとドキドキしちゃう~⋯⋯何かあったら護ってねトウヤ♥️」


 サラが両手を組んでしなをつくって来たので俺は気持ち悪くて無視する。


「アイリちゃんのことは俺が護るから安心してくれ」

「ありがとうございます。私もお兄さんを護れるようがんばります」


 そう言ってアイリちゃんは両手でグッとガッツポーズをする。


「ちょ、ちょっとちょっと! アイリちゃんだけではなくここにもかよわい女の子がいるんですけど!」

「かよわい?」


 何を言ってるんだこの糞アマは。


「かよわい女の子はジェネラルオークに単身突っ込まないけどな」

「そ、そんなことないわ! 世界中探せば1人くらいそんな女の子がいると思う」


 その世界に1人は自分だと言いたいのか。


「ちょっと先輩方! 御二人の漫才が周囲に聞こえてますけど」

「「漫才ちゃうわ!」」


 待ち合わせに現れたエリカの言葉に俺とサラは突っ込みを入れる。


「トウヤ先輩のせいでサラ先輩まで変な目で見られてしまいますからバカなことしないで下さい」

「元はと言えばサラが⋯⋯」

「ほんとやめてよねトウヤ!」


 この野郎! 一連の騒ぎを全部俺のせいにするつもりか。

 サラがエリカの後ろで俺の方に向かってあっかんべーをしてきた。


「腹立つわぁ」

「まあまあお兄さん」


 俺はアイリちゃんになだめられ、何とかサラに対する溜飲を飲む。


「なになに? 何かあったの?」

「お前らのバカ騒ぎが離れた所でも聞こえたぞ」


 ノエルンは手を振りながら、リョウは欠伸をしながらめんどくさそうな感じでこの場に現れる。


「何もないよ。それじゃあ天へと続く島への試練に行こう~」


 サラは先程の出来事はなかったかのように振る舞っていた。

 ほんと良い性格してるよな。だがそのポジティブな所がサラの長所でもある。


「あら? 皆集まってどうしたの?」

「あっ! 店長! おっはようございます~」

「おはようございます」


 リストランテの店長であるスカーレットさんが噴水の前を通り、サラとエリカが挨拶をする。


「おはようございます店長」

「お、おはようございます」

「おはようございます。今日も一段と男男(おお)しいですね」

「ウィース」

「みんなおはよう。爽やかな朝に不穏な言葉が聞こえたけど気のせいかしら?」


 そう言ってミスタースカーレットはポキポキと指を鳴らして近づいてくる。


「気のせいじゃないですか?」


 あの筋肉マッスルの拳に殴られたら死んでしまう。ここは全力で惚けるしかない。


「まあいいわ。あなた達その格好からすると魔物退治に行くの? 助かるわ~」

「いえ、俺達は天へと続く島に挑戦するんです」

「そうなの? 最近魔物の数が多いからてっきり⋯⋯」


 そうなんだよな。今各地で魔物が増えてきている。大きな損害があったとは聞かないがもしアストルムが魔物に襲われることになったら天へと続く島へ向かうのは諦めてしばらく街の警護に着いた方がいいかもしれない。


「ごめんなさい変なこと言って。あなた達なら良いところまで行けると思うわ」


 そしてミスタースカーレットは軽く手を振ってこの場から立ち去っていく。


 良いところまで行けるか⋯⋯俺もそう思う。パーティーメンバーのバランスは良いし、多少値は張ったが各階層にいるボスのデータも情報屋から仕入れているからな。


「店長から()期待されちゃったね」

「他に期待してくれる人いたか? あっ!? シーラ姉さんか」

「違うわよ。セレナ! さっきあんたの家で言われたでしょ」

「えっ? いやいや一言も言われてないよな。むしろ俺をイライラさせたというか⋯⋯」


 サラが言っていることが全く理解できなかった。セレナに言われたことは

 ⋯⋯。


 1時間前自宅のリビングにて


 俺とアイリちゃん、セレナ、そして自分の家のように過ごすサラと朝食を食べていた。


「セレナにしては今日起きるの早いわね」

「昨日夜更かししちゃってさ」


 サラの問いかけに答えるセレナ。だが夜更かしすると何故早起きになるんだ? 妹だがいまだにこいつのことは理解できない。


「なるほど⋯⋯朝食を食べたらまた寝るのね」

「ハハッ! そんなわけないだろ。サラは何を言って⋯⋯」

「そうそうアイアイの朝食はやっぱり暖かいうちに食べたいからね」


 なん⋯⋯だと⋯⋯。


 実はセレナは俺の妹じゃなくてサラの妹なんじゃないかと思ってきたぞ。


「バカ兄貴は変なこと言ってないで早くご飯食べなよ」


 お前の生活習慣の方がバカだろと思ったが朝から体力を使いたくないから黙っている。


「昨日アイアイに聞いたんだけどサラ姉達これから天へと続く島に挑戦するの?」

「そうよ! 私が最初にクリアして歴史に名前を刻んで見せるわ!」


 サラは猪突猛進な所があるから刻むのが墓標じゃなきゃいいがな。


「私、サラ姉とアイアイのこと応援してるからがんばってね」

「俺は?」

「バカ兄貴は⋯⋯宝玉の願いを使わせてくれるなら応援して上げてもいいかな」

「寝言は寝て言え。それにお前は何の願いを叶えるつもりだ」

「え~と⋯⋯バックも欲しいし~⋯⋯アクセサリーもいいかな~⋯⋯あっ! けど1番欲しいのは素敵な彼氏かな~」

「そうだな⋯⋯セレナはそうしないと一生彼氏が出来ないから宝玉に頼るのもわからないでもない」

「喧嘩売ってるの!」

「お前がだろ!」


 そして俺とセレナの取っ組み合いが始まる。


「サ、サラお姉さんどうしましょう」


 アイリちゃんは俺達の喧嘩を見てオロオロし困った表情になっている。


「良いんじゃない。いつものことだから⋯⋯それよりこのコンソメスープ美味しいね」


 サラに取って2人の喧嘩は日常茶飯事だったため1人優雅に食事を取っている。


「どうせバカ兄貴はエロい願いしかないでしょ! だから私が宝玉を使って上げるから絶対手に入れなさいよ!」


 こうして俺は当初の予定通りに行かず、セレナのせいで朝から余計な体力を使う羽目になったのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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