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第18話 そして洞窟へ

洞窟にはお宝があるといいなと思ってます。

 3人は魔物を倒し、安心したのかその場に座り込んでしまう。


「お疲れ~」

「良い連携だったぜ」


 サラとリョウが3人の戦いぶりを労う。


 たしかにリョウの言うとおり良い連携だった。おそらくオーク達が近づいてくる前に倒すと決めていたのだろう。

 長距離攻撃でノエルンがダメージを与え、反撃が来たらアイリちゃんが牽制する。そしてとどめは火力が高いエリカが刺す⋯⋯とても良い作戦だったが、やはりオークを倒した後がよくなかった。3人ともゴブリンの矢を受けてしまったし、これがもしもっと強力な攻撃だったら殺られていただろう。


「3人ともお疲れ⋯⋯だけどクエストはまだ始まったばかり、油断せずに行こう」


 俺の言葉に3人は頷く。

 今回の戦いでどこが悪かったのかなんて俺が言わなくてもわかってるだろうし、前衛タイプが誰もいなかったのに3人はよくやったと思う。


「ねえトウヤ」

「どうした?」

「ほらあれ見て」


 サラが指差す方を見ると3匹のオークが、俺達がこれから行こうとしている洞窟の方からこちらに向かってきている。


 仲間が殺られたことに気づいたのか⁉️


「今度は3匹ですか⋯⋯」

「確かに油断している暇はないね」

「もう1度私の魔法で⋯⋯」


 アイリちゃん達は立ち上がり、オーク達に向かって武器を構える。

 今度はさっきみたいに奇襲をかけることができないせいかまたは連戦すると思っていなかったのか3人の表情は暗い。


「トウヤ⋯⋯ここは私が頂いちゃってもいいわよね?」

「好きにしろ」


 サラが待ってましたとばかりに俺達の前に出て武器をアイテムボックスから取り出す。


 ミスリルでできた細剣⋯⋯レイピアだ。


「ちょっと先輩⁉️ サラ先輩1人で戦おうとしてますよ⁉️」

「う~ん⋯⋯サラなら大丈夫だろ? エリカはサラが戦ってる所を見たことないのか?」

「残念ながら⋯⋯ああ! もうサラ先輩がオークの所に!」


 意外だな。エリカはサラに心酔しているからてっきり魔物討伐を一緒に行ったことがあるのかと思っていた。


「先輩も早く戦って下さい!」


 エリカは俺を後ろから突飛ばし、戦うよう促してくる。

 しかしそうなやり取りをしている間に、サラはレイピアを前に突き出し一気に攻撃を仕掛ける。


「ライトニングスプラッシュ!」


 サラがスキル名を叫ぶとオークの身体の至るところに稲妻のような鋭い突きが放たれる。

 そしてオークはサラの攻撃の速さに何をやられたかもわからずHPを減らされ、声1つ上げないで消えていく。


「えっ? 今何が⋯⋯」


 見慣れている俺でさえ何とかサラの突きが見えるが、初見のエリカでは何をしているのかわからないだろう。


 残りのオーク2匹はサラのスピードに驚きを隠せないがすぐに立ち直り、手に持ったオノを振り回す。


「そんな攻撃当たらないわ」


 サラは一度は言ってみたい言葉を口にして、オークのオノを軽々とかわしていく。

 そしてオークが上段からオノを振り下ろしてきた攻撃をかわし、隙ができた頭部に向けてレイピアは突き刺し2匹目のオークを葬りさる。


 サラは最後のオークを仕留めるため高速で移動し距離をつめる。

 オークはスピードに乗ったサラを止めることなどできず、レイピアで身体中を穴だらにされ、その場に倒れて消えていった。


「さ、さすがサラ先輩です」

「まっ! ざっとこんなものよ」


 エリカは戦闘を終えたサラの元へと駆け寄る。どうやらオークを倒すサラの姿を見て、益々尊敬の念が深まったようだ。


「サラお姉さん凄いです」

「まるで風のようだったね」


 見た所アイリちゃんやノエルンも輝いた目でサラを見ている。


「サラ先輩にかかれば今回のクエストも大したことありませんね」

「エリカ⋯⋯さっきトウヤにも言われたでしょ。油断したらダメだって」

「はい。すみません」


 エリカってサラに対してはホント素直だよな。俺に対してももっと優しくしてくれればいいのに。だがそんなことを口にすると辛辣な言葉が返ってくるので黙っている。


「さあちゃっちゃとクエストを終わらせちゃいましょ」


 サラの言葉に従って俺達はオークがいるという洞窟へと向かうのであった。



「これがオークのいる洞窟ですか⋯⋯」


 エリカの言葉に皆の視線が洞窟に集まる。


「情報だとこの洞窟は一本道で100メートルほどの長さしかない。1番奥に広い空間があるからおそらくそこがオークの根城だろう」

「トウヤっち詳しいね」

「そうね。トウヤは下調べするが趣味みたいなものだから」


 俺がノエルンの問いに回答する前にサラが答える。


「パーティーの安全を護るのもリーダーの務めだろ?」

「別にリーダーじゃなくてもいつも色々調べてるじゃない。フレンドさんにでも聞いたのかな?」


 サラの言うとおり、フレンドにオークの洞窟に行ったことがある奴がいたのでメールで教えてもらった。


 命は1つしかない。調べることで生存率が上がるなら安いものだ。


「ねえ? それじゃあ回復アイテムとかもいっぱい用意してるの?」

「持ってるわよ⋯⋯トウヤは回復アイテムや転移の翼はアイテムボックスにいっぱい入れてるから」

「そうなんだ」


 やば! ノエルンと初めてあった時、転移の翼を持っていたことがバレるじゃないか。


「ふ~ん⋯⋯」


 ノエルンはニヤリと笑いながらグルリと俺の周りを一周し、耳元で呟いてくる。


「ウソつき」


 まあ嘘ついたのは本当だけどあの時ノエルンを1人おいていくわけにはいかなかったからしょうがないじゃないか。


「い、いや⋯⋯あの時は持ってなかったよ」


 俺はノエルンに嘘を突き通す。


「まあいいけどね。こ、今度お礼したいから時間をちょうだいね」


 ノエルンは顔を赤くし、照れながら約束を取りつけてきた。


「わ、わかった」


 そんな可愛い顔で言われたら断ることなんてできるわけないじゃないか。


 俺はクエスト中ということで嬉しさを隠しながらノエルンの言葉に頷いた。


「ちょっと先輩⁉️ 今がどういう時かわかっていますよね?」

「トウヤはリーダーとしての自覚がないのか」


 エリカはジト目でリョウは悔しそうな表情で俺を非難してくる。


「ほんと何やってるのよあんたは」

「お兄さん⋯⋯油断してはダメですよ」

「ご、ごめん」


 サラは呆れた様子で、そしてめずらしくアイリちゃんが少し怒った感じで注意してきたので、俺は思わず謝罪してしまう。


「そ、それじゃあ行こうか」


 俺はドモリながら締まらない口調で洞窟内へと向かった。



 洞窟に入るとジメジメとした湿気を身体中で感じる。そして暗くて視界が見えないため、アイテムボックスからたいまつを出して火をつけると辺りの様子が目に入る。

 本当はたいまつに火を灯すと相手からこちらが丸見えになり、攻撃される恐れがあるので使いたくないが、なにも見えないよりはマシだ。


「私スキルで暗くても見えるよ」


 ノエルンが洞窟内を見渡しながら話しかけてくる。


「それは心強い⋯⋯けど今回は一本道だし奇襲で襲われる可能性はないからたいまつを使って進もう」

「わかった」


 洞窟内の道は狭く地面は土になっており、高さと横の幅は5メートルほどしかない。これなら相手の数が多かったとしてもせいぜい1匹か2匹しか攻めてこれないはずだ。


「先頭を防御力が高いリョウ、2番目が夜目がきくノエルン、3番目は前と後をフォローする俺とアイリちゃんとエリカ、殿はサラで行こう」


 前方からしか敵は来ないと思うが、さっき倒したオークのように洞窟の外に出てる奴がいるかもしれないので後ろへの警戒も必要だ。


 俺達は慎重に洞窟内を進んでいると道が右に曲がっており、その先から光が見えた。


 俺は手に持ったたいまつを消して皆をこの場に待機させる。そして光がある方へとゆっくりと進んで行き覗いてみると広々とした空間が視界に入り、所々かがり火が焚かれていたので多数のオークの姿が見えた。


 1、2、3⋯⋯俺はオークの数を数えると全部で合計25匹いた。

 通常のオークは身長が2メートルほどだが、1匹だけ3メートルを越す個体がいる。


 ジェネラルオークだ。まさかこんな所にいるとは。

 通常のオーク10匹分の力を持つと言われ、鋼の筋肉は中途半端な攻撃や魔法を簡単に跳ね返す。


 クエストの内容にはジェネラルオークがいることなど記載されていないからこれはもう完全に依頼ミスの案件だ。


 偵察を終えた俺は皆の所へと戻り、声の音を出さないようにするためメールでジェネラルオークについて送信した。


「どうする? このまま引き返すのもありだと思うが⋯⋯」


 俺はみんなに意見を求めると⋯⋯。


「まあ撤退が妥当だな。無理して戦ってもいいことはないぞ」


 リョウの言うとおり、強力な魔物がいて今なら逃げることが可能なら戦う必要はない。

 しかしみんなの顔を見てみるとリョウの意見に対して僅かだが不満そうな表情を浮かべている。


「でも⋯⋯このままオークを放っておくと私みたいに襲われる可能性があるよね」


 オークに命を奪われそうになったからなのか、ノエルンが悲痛の表情で訴えてくる。


「ジェネラルオークとまともに戦ったらこっちも無傷じゃ済まないぞ」


 死んだら元も子もない。時には退くことも必要だ。

 俺の言葉に()()()何も言えず、悲しげに俯いてしまう。そして残りの2人は⋯⋯。


「まともじゃないなら倒す方法があるんでしょ?」

「お前っていつももったいぶるよな」


 サラとリョウはこの状況をやれやれと言った様子で眺めていた。


 そうは言っても100%勝てるかはわからないから俺としてはなるべくなら1度退いて、準備をしっかりしてから戦いたい。


「えっ? ジェネラルオークに勝つ方法があるの⁉️」


 ノエルンが驚いた様子で話しかけてくる。


「まあ、あることはあるが⋯⋯」

「先輩⋯⋯だったら早く言って下さい。私達が落ち込む姿を見て楽しんでいるんですか」

「お兄さん⋯⋯いじわるです」


 俺に対して3人は非難の言葉を浴びせてくる。


 ア、アイリちゃんまで⋯⋯。ここはすぐにジェネラルオークを倒す方法を伝えよう。お兄さんアイリちゃんに怒られると心が痛いです。


「ごめんごめん。皆がリスクを負ってでも戦うか確認したかったんだ」

「はいはい。わかったから早く作戦を教えなさいよ」


 えっ? 俺ってなったばっかだけどこのパーティーのリーダーだよね? 早くも舐められているような気がするけど気のせいだろうか。しかし今は時間もないしそのことは後で考えよう。


「まずはリョウ」

「おう」

「ジェネラルオークに向かって突撃」

「ちょ、ちょっと待て! お前は俺に死ねと言ってるのか!」


 リョウの焦った姿を見るのは気持ちいい。さっき3人をパーティーに入れる話をした時、反対意見を出したことを俺のせいにした罰だ。


「焦るな。落ち着け。別に倒せと言ってるわけじゃない。何とかジェネラルオークを引き付けてくれ」

「だけど長時間は無理だぞ。なるべく短い時間で済むようにしてくれ」


 まあリョウなら多少無理なことでも何とかしてくれるだろう。


「次にアイリちゃん、ノエルン、エリカ」

「「「はい」」」

「3人は後方で遠距離からオークを攻撃。間違ってジェネラルオークは狙わないように」


 せっかくリョウがジェネラルオークを引き付けてくれた意味がなくなるから。さすがにジェネラルオークもダメージを食らったら攻撃してきた奴を狙うだろう。


「わ、わかりました」

「了解だよ」

「承知しました」


 先程の戦いを見る限り3人なら問題ないだろう。


「そして俺は3人の前に立ち、オークを近づけないようにする」


 さすがに接近戦になったら⋯⋯特にエリカは一撃食らっただけでも死んでしまう可能性があるので3人の護衛は必須だ。


「サラ」

「主役は最後に呼ばれるのね」


 何だか楽しそうだなこいつ。だがその姿は戦いの経験が少ないアイリちゃん達には心強く見えるだろう。


「そのスピードでオークを撹乱し、倒しまくってくれ」

「ふふ⋯⋯了解。私に任せて」

「だがジェネラルオークには攻撃するなよ」

「わかってるって。大丈夫よ」


 とにかくジェネラルオークはまともに相手をしてはいけない。もし戦ってしまえば今の俺達では殺られる可能性が高い。


「えっ? そうなると誰がジェネラルオークを倒すの?」


 ノエルンが頭にはてなを浮かべて問いかけてくる。


「それはもちろん全員で」


 俺の言葉にノエルンやアイリちゃん、エリカは首を傾げる。


「わかった! オークを全部倒してその後に皆でジェネラルオークを倒すんだね」


 ノエルンは得意気に作戦内容を語り始める。


「基本的にはその通りだ」

「先輩⋯⋯別にそれだと作戦ではありませんよね。期待して損しました 」


 エリカよ⋯⋯これで終わりだったらそんなにもったいぶって話さないぞ。


「だがその前にやることがある⋯⋯皆そこを退いてくれないか」


 そう言って俺はジェネラルオークを倒す準備を始めるのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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