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第14話 やはり女の子の気持ちは俺にはわからない

女の子は難しいものです。

「シ、シーラ姉さんこんにちは」

「こんにちは」


 別に何も悪いことはしていないのに、何故か俺は挨拶で声がどもってしまった。


 それにしてもシーラ姉さんの修道服姿は相変わらず綺麗だ。どこぞの誰かがシーラ姉さんのことを聖女と言っているのを聞いたことがあるが、あながち間違いではないな。


「昨日も言ったけど時間が空いている時でいいからまたうちに来てね」

「昨日も? うちに?」


 シーラ姉さんの言葉を聞いてかエリカが何やら呟いているがよく聞こえない。


「わかってる。必ず行くよ」

「必ず行く!?」


 エリカが声を上げるとさっきまで俺から離れていたのに、何故かこちらへと近づいてきた。


「あら? そちらは⋯⋯とても可愛い娘ね」


 シーラ姉さんの目に俺の隣にきたエリカが視界に入る。


「トウヤくんもしかしてデートだった?」

「いや違うよ、サラの後輩のエリカさん。今日はお昼を一緒に食べてただけだよ」


 デートだとエリカが緊張してしまうから⋯⋯レストランスクイズィートでそういう取り決めになったからな。


「何言ってるんですか先輩⋯⋯今日はデートじゃないですか?」


 そう言ってエリカは俺の左腕に自分の腕を絡めて来た。


「えっ?」


 あれ? 今日はデートじゃないって話だよね?


「まあそうなの⁉️ 貴女みたいな素敵な人がトウヤくんの彼女なんて嬉しいわ」

「そんな⋯⋯彼女なんて⋯⋯」


 エリカは顔を赤くして身体をくねくねと動かし始めた。


「じゃあ2人の邪魔になっちゃうから私行くわね」

「あっ? ちょっとシーラ姉さん⁉️」


 しかしシーラ姉さんは俺の言葉が聞こえていないのか、そのまま後ろを向いてどこかへと行ってしまった。


「さあ⋯⋯行きましょう先輩」


 エリカは俺の腕を放し、今のシーラ姉さんとのやり取りが何もなかったかのようにスタスタと歩き始める。


「ちょっと待て。エリカは俺に何か言うことがあるんじゃないか?」

「先輩こそあの綺麗な人は誰ですか?」

「あ、あの人は俺とサラの昔からの知り合いで教会のシスターをしているシーラ姉さんだ」

「先輩はああいう人が好みなんですか? 仮にもデートをしている女の子が横にいるのに鼻の下を伸ばしてデレデレしていました」

「してないしてない。それより今日はデートじゃないだろ?」

「ま、まあそうですけど」

「シーラ姉さんに誤解されてるぞ」

「先程先輩が私をからかったのでイタズラをしただけですよ」


 イタズラって⋯⋯エリカは真面目なイメージだけどそういうこともするんだ。


「けど俺はいいけどエリカは彼氏がいるなんて思われたら嫌だろ?」

「せ、先輩は別にいいんだ」


 エリカみたいな可愛い娘だったら彼女と思われても悪い気はしないからな。


「と、とにかく私はそろそろ仕事なので家まで送ってください」

「家まで?」

「そうです。最後までしっかりエスコートして下さいね⋯⋯先輩」


 何だかエリカの勢いに押された感じになったが、俺はエリカの言うとおり家まで送ることにした。



 エリカの指示に従って中央通りから北に歩いていくと5分くらいでレンガ作りの一軒家が見えてきた。


「私の家はここです。先輩⋯⋯どうぞ中へ入ってください」

「えっ? 中に⋯⋯」


 まさかいきなりエリカの家に誘われるとは⋯⋯実はまさかエリカは俺の嫌いなビッチなのか⁉️


「いや、さすがに家に入るのは⋯⋯こういうのはもう少しお互いを知り合ってだな⋯⋯」

「な、何を考えているんですか! 私はそんな軽い女じゃありませんよ! もういいからとにかく中に入ってください!」

「お、おい!」


 俺はエリカに背中を押されて家の中に入る。


 ひょっとして家に両親や兄弟がいるのか? それはそれで気まずいぞ。


「おかえりなさい」


 家に入ると予想外の人物が三つ指をついて俺達を待ち構えていた。


「ノエルン⁉️」

「何ですかノエルンって?」


 エリカがノエルンの呼び方について聞いてくるが、ノエルは構わず言葉を続ける。


「お風呂にしますか? ご飯にしますか? それとも私にしますか?」

「じゃあとりあえずノエルンで」

「じゃあってそんな酒場みたいなノリで言わないで!」


 前に会った時も思ったがノエルンは良いボケ役になりそうだ。


「何なんですかこのやりとりは」


 エリカが俺達の漫才を見て呆れた顔を浮かべている。


「ノエルンがボケてきたから突っ込まなきゃ悪いなと思って」

「さすがトウヤくん⋯⋯いいノリだったよ」


 そして俺とノエルンは右手を上げてハイタッチをする。


「先輩とノエルさんって本当に出会ったばかりなんですか?」

「「そうだけど」」


 俺とノエルンの声が重なる。


「実は昔からの友人だったのでは?」

「一昨日が初対面だよ」


 確かに息が合う気がする。女の子でこんなに話しやすいのはサラ以外で始めてかも。


「もうエリッちが変なボケを言うから肝心なことをトウヤくんに言いそびれちゃったじゃん」

「ボケたのはノエルさんですよね!」


 エリカは肩でハアハアと息をしている。この2人は親戚だと言っていたけど仲が良さそうだな。


「トウヤくん」


 突然ノエルンの顔がキリッとなり、真面目な表情になる。


「改めて一昨日オークから助けてくれてありがとう。そしてごめんなさい。私のせいでエリッちとのデートに遅れて」

「デ、デートじゃありませんから!」


 デートだったりデートじゃないと言ったりエリカさんは忙しいな。


「落ち着けエリッち」

「誰がエリッちですか!」


 ひどい⋯⋯ノエルンはエリッちって言っても注意しないのに。


「ちょっと2人とも真面目な話をしているから茶化さないでほしいな」


 俺は最初にボケたのはノエルンだろと突っ込みたかったが、大事な話っぽいので堪える。


「くっ!」


 エリカも俺と同じ事を思ったのか、ノエルを非難するのを堪えていた。


「でも2人の様子を見ていると仲直りできたみたいで良かった」

「それがまだエリカが怒ってて⋯⋯」

「あ、あれは先輩がデート中、他の女の人にデレデレしたり⋯⋯わ、私のことを不細可愛いって言うからぁぁぁっ!」


 エリカは不細可愛いって言われたことをそんなに気にしてたのか。


「やっぱりデートだったのね。でもねエリっち⋯⋯男の子っていうのはね可愛い女の子には意地悪なことを言いたくなるのよ」

「ノエルさん⋯⋯」

「だからさっきの私のボケにトウヤくんはとりあえずノエルンでって意地悪な言い方をしたの」

「私のことじゃなかった!?」


 エリカは冷静で真面目なタイプかと思ったけどけっこう感情表現が豊なんだな。そしてノエルンの大事な話しはいつ始まるのだろうか。


「それでトウヤくん⋯⋯昨日サラっちがここに来たときにも話したけど私をトウヤくんのパーティーに入れてくれないかな」

「ノエルンを俺達のパーティーに?」

「私、どうしても天へと続く島で宝玉を手に入れて叶えたい願いがあるの」


 ノエルンがこれまでにないほど真剣な顔で俺を見つめてくる。

 それほど叶えたい願いがあるのか。


「どうして俺達のパーティーに?」


 もし本当に願いを叶えたいのであれば俺達より、もっと高ランクのパーティーに入った方が宝玉を手に入れる可能性が高くなるはずだ。


「単純にトウヤくんが強いと思ったから」


 まあ俺達のパーティーはギルドにほとんど行ってないから、どれくらいのランクに位置するかわからないけど少なくとも弱くはないと思う。


「それに⋯⋯信用できる人と天へと続く島に行きたい」


 それは重要なファクターだ。

 特にノエルンは可愛いから、変な男とパーティーを組んだら襲われるかもしれないし、もし宝玉を手に入れることが出来ても裏切られて持ち逃げされる可能性がある。


「先輩⋯⋯私からもお願いできせんか?」


 エリカからも頭を下げられる。


 ん? ということはエリカもノエルンの叶えたい願いを知っているということなのか?


「わかった。ただ俺の一存では決められないからサラともう1人のパーティーのリョウに聞いてみる」

「あ、ありがとうトウヤくん!」


 ノエルンは俺の返答を聞いてよっぽど嬉しかったのか目に涙を浮かべていた。


 これでアイリちゃんに続いてノエルンもか。


「あっ? 先輩⁉️ 私もパーティーに入れて下さいね。まさかノエルさんは良くて私はダメなんてことはありませんよね?」

「えっ? エリカも?」

「こう見えて私は魔法が得意ですから⋯⋯絶対先輩達のお役に立って見せます」


 こうして俺は3人の女の子からのパーティー申請をたった1日足らずで受けるのであった。

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