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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第4話 間一髪

 女は早速、壁の前まで行き、足元にあった適当な骨を拾って突き立ててみる。


 すると、パキンっと乾いた断末魔を発して骨は粉々になった。


 今のじゃダメですか。

 骨といっても色々ありますし...今度は身長程もある肋骨はどうでしょうか?


 次は近くにあった大型の骨に検討をつけた。


 ミシミシっ!と足下の骨を潰してそこへ向かう。

 幸いまだ天井から細い火の光は届いているので、辺りは辛うじて見える。


 女は見当をつけた骨まで行き、右手の中指の第二関節で小突いてみる。

 するとさっきの骨よりは丈夫そうな音を出してくれている。


 これは良さそうな気がします。


 女はその肋骨を背骨から引っこ抜いて壁の前まで担いで行く。


 先ほどと同様に尖った先端から壁に垂直ではなく若干上から角度を立てて突き立てる。


 垂直だとせん断応力が大きくなり、上に乗った時にたわんで折れやすくなりそうです。なので若干斜め上から突き立てましょう。


 すると今度はカッ!という音を立てて刺さってくれた。

 女が上に乗って体重をかけても大丈夫だった。


 2時間位この作業をしていると、女に少しづつ骨選定に関する経験値が積まれていく。

 女は骨は基本的に大きい物の方が固くて丈夫な印象を持った。


 骨は一本一本持っては刺して、持っては刺しての繰り返しだ。

 刺さっても刺さらなくてもまた降りて骨を見つけにいかなくてはならない。そしてまた骨を上って上にいかないといけない。


 女は横着な性格なのか、早く上に行く事を目標としているため、一段につき骨は1本しか刺していない。大きい骨が多いので横になって乗れば両足で立ち、さらに一段上の骨を持つ事で姿勢は安定すると考えたからだ。


 「ふう。ようやく半分ほどですか」


 女は更に3時間程同じ作業を繰り返していた。

 この暗い空間で同じ作業の繰り返しだと精神的にも体力的にもキツくなってくるのであろう。


 水なんて無いですよね。...いや、よく分からない血液なら垂れてきてますが。


 女は上から垂れてきている目の前の血液を見る。

 先ほどよりも明らかに細くなっており、熱を帯びてきていた。


 女は自分の水分が失われた体にとってその血液は天の恵みに思えてきた。

 

 そう思ったら既に女の体は動いていた。そしてその垂れてきた血液に舌を突き出して舐めてみた。


 意外といけます...やっぱまずい。


 幾らまずくても液体は液体だ。しかも血液の約半分は水分で構成されている筈だ。いつ出れるかも分からないこの状況下で飲まない理由はない。


 そう考えた女は吐き気を催しながら、飲んでゆく。


 血液を飲んだ後、床に座り小休憩をとっていた女に対して更に追い討ちがかかる。


 天井から指していた光が急に無くなったのだ。

 これでは真っ暗に元どおりだ。作業は出来ない...までもいかないものの効率は著しく低下する。


 やっと暗い中にも視界が慣れてきたのに、ここまで暗いと慣れるも何もないですね。


 しばらく待っても結局光は指して来なかった。


 このままやっていくしかありませんか。


 女は腹を鳴らしながら作業を再開していく。

 天井に小さく見えた穴に真っ直ぐいけるように、骨を刺して行った。なので見えなくとも、近くまでは行けるはずだ。


 女は延々とその作業を行う。降りては探して戻ってさして、降りては...


何時間、何日か続けた後、ついに女は100メートル近い壁面に骨を刺し終えた。


 頭が何かにぶつかったので、これが天井ですかね。


 暗くてよく分からないが下まで100メートル位あると女は認識した。


 落ちても何となく大丈夫でしょうが、怪我はしたくないですね。


 天井の中央にあったであろう穴までは15メートルくらいあると女は推測する。まだ側面からジャンプで行ける距離ではない。


 天井に対して下から骨を振り上げる形で指していく。一本だけ刺さっていれば片手で掴んで、もう片方で骨を天井に刺す事ができる。


 天井には骨を10数本差し込んで、ようやく下から見ていた穴に到着した。手で穴の感覚を確認したのでそう分かった。


 しかしここまで来て女はようやく気がついた。穴が小さすぎることに。

 10センチ四方くらいしかない。腕だけでも途中までしか入らないだろう。


 女は気落ちして全身の力が抜けてしまった。

 空腹と寒さでエネルギーが足りず手から力が抜けて100メートル下の骨の床にグシャっ!と落ちた。


 何だったんだ自分の苦労は。と軽く絶望する。


 「うわっ!」


 突如上の天井が開いて大量の光が差し込み、上から骨の塊が一気に降り落ちてきた。

 この瞬間、全身に力が入り、気がついたときには女は側壁に刺した骨を猛スピードで駆け上がっていた。

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