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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
35/37

第34話 棺桶の鍛冶屋

ちょこちょこ書いてます。

変なところは後から修正します。

 ロトカはフェン達の依頼選びを見届けた。


 「今日は混んでて、手続きが終わるまでちょっと時間かかるらしいぜ」


 「しょうがないですね、これだけ混んでたら」


 受付まで行ったロイが状況を報告する。


 歩くスペースがない、ワケではない。しかし受付が4人に対して明らかに冒険者の数が多い。


 男女比は7対3といった所だろうか。

 男は黒や茶色などが多い。中には赤なども居るが、女性冒険者の方がちょっと明るい防具を使用している。


 「じゃあ、待ってる間にロトカとアイナをちょっと案内しようか」


 アイナはついさっきギルドに来てフェン一行と合流した。


 「それはありがたいですね」


 「全然大丈夫ですよ。モンスター譲って頂きましたし、寧ろ足りないくらいです」


 という訳でギルドを出た。


 「よく行くのはどんな店ですか?」


 「鍛冶屋、料理屋、武具屋、薬屋、居酒屋、大抵のものはあるぞ。女がよく行く所は正直よく知らん。フィーネとサラに聞いてくれ」


 「僕も女性が行く様なお店はよく知らないな。服屋とかだと思うんだけど…一応、デザート屋もあるんだけどね」


 ロイとフェンには女性が行く様なお店に心当たりは全く無かった。


 「私は鍛冶屋に興味ありますね」


 「鍛冶屋か。んなら行くか」


 「そうだね。ちょっと寄ってみようか。24時間やってるからいつ行っても誰かしらいるさ。こんな昼前なら賑わってると思うよ」


 「…暑いから嫌い」


 「サラは防具預けてたじゃないですか。ついでに取りに行けますよ」


 「もう強化が終わってるか微妙なところ」


 結局一行は鍛冶屋に行く事に。





 「棺桶の鍛冶屋はここ一箇所だ」


 正面の横幅が50m、奥行きは100mはある大きな建物だった。耐火処理された木材を使用した建築物だ。色は深い茶色で見るものに年月の経過を感じさせる。


 入口は等間隔に3つある。高さ4mはある大きな入口だ。冒険者が使用する様々な大きさの武器の搬入にも耐えうる大きさだ。


 「凄い大きいでしょ?工房と受付が合体してるからね」


 外にも金属を叩く音色が漏れている。


 中に入ると受付の奥に炉が幾つもある。そこで溶かした金属と鍛冶屋が戦っていた。


 溶鉄の場合20m離れる程度では熱気を直に感じる。鉄よりも融点が高い金属も扱っているので、室内はもの凄い熱気になっている。


 「…設計ミスとしか思えない。入りたくない。鍛冶屋の感覚は狂ってる」


 「失礼だな。そうは言うけどよ、客用に熱対策はしてるんだぜ?」


 「ラットンさん!お久しぶりです」


 「おう。久しぶりだな」


 横からヌッと出てきた男はラットンというらしい。

 鍛治士らしく腕が太く、前掛けをしていた。


 「受付と工房の間に断熱性が高い素材を使用して仕切りをしてるんだ。それが無かったらもっと熱いぞ。それから工房内も通気を良くして、外に出来るだけ熱気を逃してるんだ。その熱で大浴場の湯を沸かしてるんだぜ?感謝してほしいぜ」


 「受付の人たちは熱さに慣れてるんでしょうね。汗一滴かいてません」


 受付は男女共にいるが、誰も汗はかいていない。


 「あの制服が特殊なんだ。それに熱を通さないインナーも着てるからな。これが高いこと高いこと」


 ロットんは解説を一通り終え、ロトカを見た。


 「取り敢えず、新入り。ようこそ、棺桶工房へ!ここを拠点にする冒険者たちの武具類の強化・整備メンテナンスや新規作成を担当してるぜ。俺たちが勝手に作った完成品は武具屋に並んでるから暇な時にでも見てくれ」


 「…で、私の腕装甲ガントレットは?」


 「サラのやつか。生憎まだ出来てなかったと思うぜ。まあ担当は俺じゃねぇからなぁ」


 ぶつぶつ言いながらラットンは受付の方へ確認しに行った。


 受付はせっかちな冒険者の対応も良くしなければならない。その為、内心面倒だと感じているが対応はお手のものだ。


 「私の金棒も強化出来ませんかね」


 ロトカが背負っている金棒を摩る。


 「金棒も出来るだろうが、今使ってる母材とか知ってるのか?」


 ロイはぶっきらぼうにロトカに問う。


 「さっぱり。元はと言えば貰い物ですから」


 「母材は知らねぇとどうにもならん。まあちょっと金はかかるが、頼めば調べてくれるぜ」


 「強化するには母材、つまりどんな金属が武器に使われているかを知る必要がありますから」


 「結構面倒なんですね」


 「面倒も何も、武器は金属が最重要。素材は次らしいぜ。腕のいい鍛治士なら金属だけでも中々の武器を作ってくる」


 初心者冒険者にもこの事はよく知られた事実だ。

 武器や防具にとって最重要なのは金属である。モンスターの素材ではない。


 割合としては6、7割は金属で決まると言われている。


 「硬さ、脆さ、切れ味、重さとか何を好みにするかによります。やっぱり人によってこだわりが違いますから」


 ロトカはフェン、ロイ、フィーネ、サラの4人がかりで情報を叩き込まれる。


 「他にも素材の収集であったり、費用集めが大変なんだよ。ローンを組んでる冒険者もいるんだ。かくいう僕もそうさ…」


 フェンが遠い目をしている。一体いくら残っているのか。


 「そもそも強化って具体的にどんな事なんですか?イメージは分かるんですけど」


 「モンスターに攻撃し続けると油や血で切れ味が低下して、いずれ皮膚や鱗を撫でるだけになるだろ?武器の強化をすると武器の硬さ、切れ味上限を向上できる。それから重さとかも変更できるな」


 「…あと裂傷とか凍傷、火傷とかの付帯効果や属性効果の付与が出来る」


 「武器で火傷を負わせるってあんまりイメージつかないんですが。そんなに熱かったら使用者も火傷しそうな気が」


 「…武器全体が熱くなる訳じゃない。モンスターの血液が武器に付着すると切先だけ熱を帯びる様になる。熱を帯び始める時間、火傷の深度とかはちゃんとした強化を行えば基本的には向上していく」


 「差を感じる為には相当強化しないとね。だから付帯強化と属性強化、両方とも継続的に武器を強化する必要があるし、お金も相当必要なんだよ」


 兎に角、武器の強化には

 性能強化

 付帯強化

 属性強化

 の3種類あるという事であった。


 「単純に強化という場合だと”性能強化”のケースが多いですよ」


 そこでラットンが受付から戻ってきた。

 サラの依頼の進捗確認をしてきた様だ。


 「やっぱサラの腕装甲はまだ時間かかりそうだったわ」


 その報告を聞いたサラはがっかりした。


 「そう落ち込むな。まだ期限前だったしよ。一応、担当者とかは決まってるからもうちょい待っててくれや」


 ラットンがサラの肩をバシッと叩く。


 「で、進捗だけ聞きにきた訳じゃないんだろう?新人の案内か」


 「こちらのロトカさんとアイナちゃんの案内です。お二人とも棺桶が初めてなので」


 「おーそうか。工房の中も案内してやるよ。ちょうど休憩時間だからな。その代わり、勝手に道具や素材に触るなよ?怪我して怒られるのは俺なんだからな。で、誰が入りたい?」


 ラットンは善意で案内を申し出たが、手を挙げたのは一人だった。


 「なんだ皆、意気地がないなぁ。じゃあロトカだけだな」


 ラットンはため息をついた。


 「じゃあついて来い」


 ロトカだけがラットンの後に着いて行った。

 受付端にある戸口から奥の工房へ入る。


 途端にロトカの額から汗が噴き出す。日焼けの感覚を数倍にした様な環境だ。


 「あっつい!」


 「この環境が重要なんだ。熱くないと金属が溶けないからな」


 ラットンがロトカの様子を伺って、熱の重要さを説く。


 「見ての通り、炉は全部で13機ある。扱う物によって使い分けてんだ。基本的に工房で火が消えることは無い。24時間無休でフル稼働してんだ。大体休ませた方が返って炉の調子が悪くなったりする」


 それぞれの炉は完全に独立しており、規模が様々であった。


 「それでも依頼数に対して工房が小さくて追い付いてないのが現状だな」


 左右2列にそれぞれ6機、最奥の中心に1機という配置である。

 各炉のそれぞれの加工場所は仕切りで区切られている訳ではないが、境界線が引かれていた。各炉に複数人が付き、作業を行なっている。


 「加工場所を専門用語で切鉄きりがねってんだ」


 各切鉄はかなり広く、大きな武器でも回転させたり、移動させることに不自由ない。


 狭いと隣接する切鉄に居る鍛治士に物が接触する可能性があり危険極まりない。従って、安全面からしてもどうしてもスペースが必要になる。


 ラットンは進んでいき、3番炉に行って、鍛治士に声をかけた。


 「おい、ナイア!これちょっと借りるぞ」


 ラットンは武器置きに固定されていた大きな大刀を持ち上げた。


 3番炉にはナイア1人だけだった。

 ナイアと呼ばれた鍛治士は女だった。工房全体を見ると女鍛治士は少数だがいた。


 ナイアは肌が焼けていた。作業の邪魔にならないショートヘア、線は細いが上腕二頭筋が出ていた。


 ナイアは炉の調整を行なっていて、首だけ縦に振った。


 「例えばこの炉では、この長剣ツーハンドを強化してるんだ。この長剣は依頼じゃなくて、鍛冶屋が作った物でな?それを購入した冒険者が強化を依頼してきたと、そう言うわけだ。依頼者名は言えんが」


 長剣は名の通り長く、上身が1.5mはあった。身幅は3cm、柄には包帯が巻かれていた。包帯は巻き替えているのか、それとも使い始めてから期間が経過していないのか不明だが、比較的白かった。


 刃は熱と聞いて想像する様な典型的な鉛色をしている。


 「綺麗な色艶だろ?母材はヤング鋼を使ってるんだ。んで今から熱処理をして母材の組成を変えるところだ」


 「組成を変える?強化すると言う事ですか?」


 「結果はそうだな。同じ鉄でも温度変化の速さや添物によって硬さが変わるからな。あ、添物ってのは母材の組成を変える為に必要な素材のことだ」


 ラットンの解説に熱が入る。


 「とにかく組成を変えるために、添物が必要で、その添物としてお前達が取って来るモンスターの素材の出番って訳だ。例えばヤング鋼の組成をラライナイトからセンライトに変えるために、この【火惰竜の火吹袋】が必要不可欠なんだ」


 「この火吹袋に空気を吹き込んで、火を出す。その火の成分が作用してヤング鋼を鍛えると組成がセンライトに変わる。即ち硬度が向上するって寸法さ」


 「素材を武器に使うイメージがし難いんですが」


 「まあ見た目からは分からんから当然の疑問だ。冒険者の中には自分の命綱だってのにそういうのに疑問を持たん奴もいる」


 ラットンはけしからんとばかりに言う。


 「お前たち冒険者はモンスターを倒し、素材を取ってきてくれるよな?鱗、牙、爪、翼、皮、角、偶に星片ほしくずとかだな」


 星片とはモンスターから稀に取れる素材である。

 本当に稀で入手出来るのは冒険者人生で3回くらいが平均であった。勿論、購入すれば別だが。

 

 強化の素材としては極めて相当な部類である。


 ロトカは実物は見た事なかったが、存在は知っていた。


 「そんな所ですね。防具なら素材を使うイメージがしやすいですけど、武器に鱗やら翼を使う理由がいまいち分かりません。冒険者の武器を見ていても、装飾に使われてる程度にしか」


 「装飾に使われる分も勿論ある。だが、大半はしっかり強化に使われてるんだ。”液化”という技術があってだな。素材をまず液体化するんだ」


 「そんな事が?」


 「ただ素材に熱を加えるんじゃないぞ?それだと焦げるだけだ。”珀油はくゆ”を使うんだ。ざっくり言えば珀油と一緒に素材に熱を加えれば、液体化するのさ」


 ラットンは作業台にある小さな小瓶を掴む。


 「これは…何だったか。確か【虹大蜘蛛の鋭爪】の溶液?」


 「虹大蜘蛛アルカンは正しいけど、老練個体」


 ナイヤがボソッと訂正する。


 「珍しいな、老練個体だったか。まあ、こんな感じで茶色っぽい色になるんだ、これは結構サラサラした方だな」


 ラットンは小瓶をフリフリして粘度を確かめている。


 「淡い茶色で綺麗なもんですね」


 「そうだろ。溶液の色は素材や鍛冶屋によって違うからどんな色になるかは分からないのさ。素材を液化したコイツを燼油じんゆと呼ぶ」


 「燼油って燃えた残り物の様なイメージですが、縁起?というか鍛治士的にはどうなんですか」


 「特に気にして無いな。親の親、そのまた親の代から同じ名前だし。燼油を作る過程で素材は珀油に溶け出し、最後は燃えた灰塊になる。だからそう呼ばれてんだ…っとまあ、俺も偉そうに解説したが、あんま分かってないんだよな。研究者じゃないしなあ。頭で考えるよりも体使ってやる方が好きだしな」


 ラットンが豪快に笑い、仕事中のナイヤが煩そうに顔を顰める。


 「つまり整理すると、母材と組成の強化先に合った素材が必要不可欠って事ですか」


 「そうだ。母材が良ければ強いモンスターの素材が必要な傾向があるな。今回の場合は火吹袋だけで良かったが、複数必要になる事もよくある。鉱石だったり、植物だな。その辺を覚えておけ」


 ラットンの説明が一区切り終わったため、ロトカは武器の強化を依頼した。


 「ロトカの武器は金棒か。母材は…何だろうな。鉄では無さそうだし…」


 ラットンは表面を引っ掻いたり、指でノックしたりしている。


 「俺レベルでは外面だけでは、判断できないな。金属はどれも同じ様な外見してるし」


 「それはカルマン鋼だ」


 「親方。いつの間に…なんで分かるんですか?」


 「そりゃあみりゃ分かるだろ。経験だ、経験。話を戻すが、中層のモンスター相手なら十分持ち堪えられるだろう。カルマン鋼を使ってるここの冒険者はある程度いるからな。強化する予定なのか?」


 「ええ。出来るなら」


 「そうか。俺はここの工房長のバーリーだ。金は貰うが見合う仕事はしてやれるぜ。必要な素材は教えてやれるが、自分で調達するか、工房に依頼しろ」


 「お前の休憩時間は終わるだろ。さっさと客を送ってこい」


 そういってバーリーは工房の奥へ行き、作業中の鍛冶屋に話しかけていた。


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