第22話 入国
「っふう。やっと着きましたか。おえっ」
ロトカは主に精神的にボロボロになり、ようやく大陸に着いた。
どこを見渡しても海、海、海。荒波で上へ下へと揺られ平衡感覚が狂ったり、と散々な目にあってようやく着いた。
ファーレンが言っていた5日ちょうど要した。
最初の方は目新しく航海を楽しんでいたが、1時間後にはすっかり飽きていた。
当初ファーレンが怖がっていた帝尾類には遭遇しなかった。ロトカは見たいと思っていたので、少しがっかりだった。
陸が近づくと大型の漁船なども見かけて、声をかけられたりした。どの船もロトカを心配して声を掛けていた。
ただ、ここまで来たからには自力で陸地まで行きたいと思ったロトカはそういった申し出を断った。
ロトカは満身創痍でやっとこさ見えた港で降りた。人も船も多かったので、それ程目立ってはいなかった。
ようやく陸地…
港に着いて大の字になり、大地の有り難みを噛み締める。もう酔わなくて良いと思うと喜びも一塩だった。
食料は多めに渡されていたが、始終気持ち悪くて食欲がなかった所為で、まだ半分くらい余っていた。
「嬢ちゃん大丈夫かい。地面に寝っ転がって。気分でも悪いのか?」
明らかに漁師だろう様子のおっさんがロトカに話しかける。
「えぇ。ちょっと酷い船旅でしたから…」
「あぁ。船酔いか。酔う前の対策はあるんだが、後になってからはどうにもならんなあ」
正直、声が頭に響くから止めてくれと言いたかった。
「時におじさん、この国は何て名前ですか?エルトラ王国?」
陸に着いた興奮で忘れていたが、目的地通りの場所につけたか気になりますね。
「何だ、お嬢ちゃんエルトラ王国に行きたかったのか?エルトラは隣の国だ。ここはサンダーバーグ王国の首都リニアだ」
どうやら違った様です。
「大国エルトラと比べると見劣りするが、食は負けないぞ。あと冒険者のレベルも悪くないしな」
「ありがとうございます。おいしょっと」
ロトカは酔いが引いてきたので、立ち上がった。
次はまず風呂屋と服屋に行こうとロトカは考えた。服屋とフォーゲイザーとやらのギルドの場所を聞いてその港を後にした。
ロトカがファーレンから貰った木舟はおじさんに譲り渡した。
港は大小様々な船が停泊しており、波に揺られてぷらぷかと揺られていた。おじさんと似た様な海の男達が捕まえてきた魚を下ろして、大きな作業用倉庫に持っていかれる光景が彼方此方で見られた。
その港から少し歩くと目抜き通りらしき通りに出た。軒は左右に並んで食事処や小物、魔道具、八百屋など店が様々軒を連ねている。ただの住宅は一つもなかった。
天下の往来は日が高いこともあって、老若男女が行き来している。特に冒険者と一般人の装いの差が一目瞭然だった。時折、モンスターを荷台に乗せたパーティも見られる。ギルドに向かっているのだろうか。
そんな中でもロトカは人目集めた。整った容姿も理由の一つだが、ボロボロのコートと靴を着ていたからと言うのが大半だった。
運悪くロトカ到着した国サンダーバーグは物価が多少高い、ちょっと裕福な国だった。なので見窄らしい服を着ている人はこの首都にはあまりいないからロトカが浮いて見えるのだ。
なんか見られてる気がしますね…早く風呂屋に行きましょう。
風呂屋はおじさんに聞いていたから場所自体に迷う事はなかった。大通りに面してはなく、左折した通りに大きな店構えであった。
風呂屋に入るのに銅貨5枚を要求された。ロトカは物価が分からなかったが、ファーレンから貰った財布から銅貨っぽい硬貨を出してから受付に渡した。
代わりにタオルを貰った。中は個室になっていて脱衣所とシャワー用の部屋に分けかれていた。
体がベタついてしょうがなかったロトカは素早くコートを脱いで中に入った。
思えばパンツも履いてなくて、裸の上にコート。街でバレたらまた捕まってしまう所でしたね。
シャワーを浴びながらそんな事を思っていた。
ロトカは10分くらいお湯を浴びて、備え付けのシャンプーで体を洗ってさっぱりして出てきた。
次は服屋ですね。
ちょうど同じ通りにあった女性ものを扱っていそうな服屋に入った。
係員はロトカのコートの下が裸だと知って、ビックリしていた。
「そんな…酷いです。昨夜変質者に剥ぎ取られて…」
ロトカの小芝居に係員は引っ掛かり、急に優しくなった。
取り敢えず下着一式とズボンと上を買った。
何だか下着を勧めてくる時の係員の目が怖かったですね。
係員は足が綺麗な黒毛だから…とか最近は〜とか理由をつけてレースのパンツや殆どヒモの様なパンツを勧めてきた。
最終的に外見を一切気にせず履きやすかった黒いパンツを選んだ。
ブラの方に関しても係員はロトカに合うやつを山の様に持ってきてあれこれ試着する様に勧めていた。
ズボンと上に関してはロトカの要望で紺のビジネスパンツと白のシャツに決まった。尻尾ある獣人用の物があるらしくそれにしてもらった。
今のロトカは港に着いた見窄らしい格好とは全く異なっていた。パリッとした装いでご機嫌良く悪魔の様な尻尾を左右に揺らしてギルドに向かった。
ギルドはファーレンに勧められたブルーゲイザーにする事にした。
「ちょっとそこのお嬢さん良いですか?」
「…はっ!お姉様!」
「お、お姉様?だ、大丈夫ですか?」
主に頭の方が。
「あんっ」
ロトカが女子の頭に触れると変な声を出して体を震わせた。
天下の往来で喘ぎは止めてください。
「何て綺麗な御手。ささ、お姉様そんな物騒な金棒なんて置いて私とお茶に行きませんこと?ちょうど美味しいケーキ屋さんを見つけたんです」
「い、いや。そうではなくてですね…道を聞きたいだけ何ですよ」
「道?ああ、ケーキ屋さんへの道ですね。ご心配なく。存じていますので、案内させて頂きます」
「いえ、ケーキ屋ではなくてですね。ブルーゲイザーのギルドの場所なんですが…」
ロトカは何とかギルドの場所を聞き出した。しかしそこからが大変だった。
最後には抱きしめられて『行かないで!』と泣きながら懇願してきた。何かの痴話喧嘩だと思われたが、何とか引き離し逃げきった。
なんか変わった子に声を掛けてしまいましたね。目も怖かったですし、最後は体まで弄られて。いやあ。相手は選ぶべきですね。
ギルド自体はかなり近かった。そしてデカかった。
まあとっとと受付を済ませてしまいましょう。




