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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第21話 船出の日

 ファーレンとロトカの不思議な共同生活は5日目になろうとしていた。


 「叫べぇ〜、狂えぇ〜、軋れぇ〜、嬲れぇ〜、堕とせぇ〜、せ・ん・め・つ」


 ロトカはブンブン鍬を振り回しながら、地獄の公爵に成り切ったかの様に振る舞い歌う。


 「何だその物騒な歌詞は...歌うならもっと愉快なものにしてくれ。折角のいい天気が台無しになる」


 「人が折角気持ちよく歌ってたのに水を差すなんて」


 「お前は気持ちよくてもこっちの気分は沈み込んでしまうわ!」


 「ったく。これだからお年寄りは...最近の若者にはこんな感じのインパクトがある歌詞が流行ってるんですよ」


 「そうなのか?いや...幾ら若者でもここ迄私と感覚がズレるものだろうか?」


 「まあ諸説ありますがね」


 「…さっさと仕事をしないか!」


 「いたっ!女性を足蹴にするなんて、何考えてるんですか」


 「レディーとして扱って欲しいならレディーらしい振る舞いをしてくれ」


 「そんなに私の歌が気に入りませんでしたか...じゃあ、少しテイストを変えて...」


 「そうそう。そういう歌が良い。少し聖歌の様にも感じたが、綺麗な歌だ。何て名前なんだ?」


 「名なんてありませんよ。即興で作ったんですから」


 「素直に才能が爆発しとるな...それ私に教えてくれるか。歌のレパートリーを増やせるかもしれん」


 「歌集めなんて、随分と女々しい趣味ですね」


 「この島で1人きりで生活してると暇潰しを収集する事も楽しみになるんだ。畑仕事や休憩時間に歌でも口ずさめば、より集中できるってもんだ」


 「なるほど。そういう事なら。特に食料も世話になってますからね。歌の名前は勝手に決めといて下さい」



 「 『ネーデ エス ヴォルディ』とかでどうかね?生まれ故郷の言葉で『強く儚い少女の物語』という意味だ」


 「良いんじゃないですか?大体そんな感じの歌だったと思いますし」


 「よしよし。作者の許可が得られたぞ....さて、肝心の歌詞を教えてくれ」


 「え〜と、どんなでしたっけ...」


 即興で作ったが故に、作者であるロトカ自身も歌詞などあやふやになってしまっていた。


 ファーレンによって名付けられた、この歌は後に少しづつ広まるのだが、それは何十年も先の話だ。


 その広まった歌詞と最初にロトカが歌った歌詞が一致しているのかは誰にも分からない。



☆☆☆☆☆☆☆


 「順調に小魚の量が減っている。徐々に沖の方に戻り始めた様だ。順調順調」


 ロトカが孤島に飛ばされてから6日目の夕食時にファーレンはそう言った。


 「本当ですか!それは良かった」


 「このまま行けば予定通り明日、沖に出られるだろう。うんうん」


 「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」


 「い、いやそんな事はない。食料の減り具合が緩和されるとか物を壊されなくなるとか、微塵も思ってないぞ」


 図星を突かれたファーレンは慌てて話題を変える。


 「さ、さて。大陸までの航海について説明しておこう。前にも言ったが、大陸までは200キロくらいある。中々手漕ぎのボートで行くには相当な根気が要求される。ボチボチ行って、5日ってところか」


 「5日なら何とかなりそうですね」


 「それでも大変だぞ。普通、5日間も海の上で生活するなぞ、海軍や船乗りの連中しか出来ん。体力的にも精神的にもな。しかし、お嬢さんくらいの体力ならそこは問題ない。方角に関しても大陸は相当大きいから何となく方向さえ合っていれば必ず辿り着ける」


 ファーレンは机の下から古びた大きな羊皮紙を取り出した。それは近隣諸国の地図だった。


 「今自分たちがいるのは、この小さなゴマ粒の様に小さい島だ。帝尾類がいるのはここと大陸のちょうど中間辺り、範囲にして10キロの区間によく現れる。そこの区間は海淵が有るらしく、それと関係しているらしい。よう学者の言うことは分からんがな」


 何故盲目なファーレンが地図でこの孤島をピンポイントで分かるのかが不思議だがそれは置いておく。


 「木船は私が作ったものだが、安心してくれて構わない。元々、造船関係の仕事をしていたからな」


 「そんな仕事してたんですか」


 「まあな。しかし、道具もあまり揃っとらんから、素人が作るよりはマシと言えるレベルになっている。決して力づくで扱うなよ?」


 「今更ですが、船を私が使ってしまったら無くなっちゃうじゃないですか。お爺さんはどうするんですか」


 「別に私が使うために作ったのではない。体力的にもたどり着かんだろうしな。ただ、腕が鈍らないようにする練習で作っていたんだ。まさか本当に使う日が来るとは」


 木船はロトカ自身見たことがなかったが、少なくとも自分が作るよりも信頼できそうだった。 


 「まあ最初は私とて、望んでこの島に来たわけではない。実験的に送り込まれたのだ。元々、大陸の方に住んでいた。そこで少し、海軍と揉めてなあ。処刑される予定だったが、ここに飛ばされる事になったのだ」


 「なんだ。お爺さんもやんちゃだったんですね。生きてりゃ犯罪の一つでも犯しますって」


 「勿論冤罪だ!腹もそりゃあたったさ。しかし、今更しょうがない。それに軍とて大陸の末端の連中まで監視や指示が行き届いているとは思えん。私が気に食わんのは海軍ではなく、私らの村に常駐していた極一部の奴らだ。それに今更帰ろうとも思えん。この島での生活もだいぶ慣れた。新聞はくるし、販売人も来るしで、退屈せんぞ」


 昨日から疑問に思っていたが、新聞?販売人?そんなのがこの孤島に来るとは思えない。


 「どう考えても、お爺さん1人のためにここまで来るには赤字でしょうに」


 「まさか船か何かで来ると思ってるのか?」


 「それ以外に何が?」


 「...お嬢さんはどこかの国のお姫様だったのか?世間知らずにも程があるんじゃなかろうか」


 「新聞は勝手に送られてくるのだ。机の上にな」


 「販売人は?」


 「月に一回くらい、こんな所まで足を運んでくれる変わり者がいるんだ。有難いことにな」


 「暇な人もいるものですね」


 そう言っていた時に、机の上にポンっと新聞が煙と共に現れた。


 「来たか。ほれ、見ただろう?こんな感じで現れるのだ」


 そういってお爺さんは新聞を表紙から目を通していくのに夢中になってしまった。


 「こんな事が?全く、不思議ですね」


 「そりゃあ、不思議な鉄塊(グレア)のおかげだろう」


 「何ですかそれ」


 「まあ形とか色はそれぞれなんだが、食べれば変わった能力が手に入るんだ。そんな不思議な物体がグレアだ」


 「へえ。私もいつか食べてみたいですね」


 「食べるのは良いんだが、よく考えてからにした方が良い。色々副作用があるからな」


 「いつだか言ってた火を吹く人とかも、グレアのお陰ですか?」


 それからも色々話をしてから寝た。


 「舟は大丈夫そうだ」


 翌日の朝、ファーレンは海に舟を乗せて最終確認をしていた。


 「あっちに着いたらこの舟は誰かにあげてくれ。陸の上には持っていけんからな。それでこれが食料だ。肉の干物と飲み水、野菜とかが入っとる。お嬢さんの食べる量を鑑みても5日は十分保つ」


 「分かりました」


 「ただ飲水は大切にせい。もし無くなっても海水は飲んじゃダメだぞ。逆に体に悪い。それから方向に迷ったら太陽の位置を参考にしろ。一応知ってると思うが、太陽は東から西に行くぞ。曇っていたら雲の向きを見るんだ。雲は今の時期、大陸の方から吹く風に乗って移動しておるからな。それから…」


 それからファーレンの注意事項が延々と続いた。


 「分かりましたよ。昨日も聞きましたし。ちゃんと覚えてます。あ、この金棒は持ってって良いですか?」


 「ああ、私には持てんからな。それと金も渡しておこう。生活費としては半月分位しか無いが、0よりマシだろう」


 「どうも。いやいや。それではボチボチ行きましょうかね。2週間お世話になりましたね」


 「うむ。では気をつけてな」


 互いに少し湿っぽくなってしまい、その雰囲気を無くすために素っ気ない挨拶になってしまった。


 ロトカは金棒とファーレンに貰った荷物を持って木舟に乗り込んだ。


 舟を出してからロトカは振り返りはしなかった。

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