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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第20話 私達の?強盗計画

 それから数日が経った。ロトカとお爺さんの奇妙な生活が続いていた。


 その内に生活のルーティーンが形成された。


 まず朝はファーレンに叩き起こされ、畑仕事を手伝わされる。


 「ほれ!さっさと起きないか!」


 「痛っ!女の頭を叩くなんて何考えてるんですか。仮にも客人ですよ!」


 毎日ロトカはファーレンに頭を杖で叩かれて強制的に目を覚ます。

 きっとファーレン爺さんは私が客人だと言う事をすっかり忘れているに違いない。


 しかも女なのにこの扱いは無いと思うんですが。そうロトカは言っているのだが、ファーレンは『盲目だからしょうがない』の一点張りで、行動を改めようとはしない。


 ロトカはファーレンが自力で椅子に飛び乗り、畑仕事など1人で生活をこなしていた実績を目の当たりにしている。

 それでファーレンは盲目であるという事、それは嘘ではないかという疑念をしばらく感じている。


 「早く起きないか!やる事は沢山あるのだぞ」


 「無理無理。眠すぎ」


 ロトカは他者との共同生活で非常に寝起きが悪く、起床直後は無口になるかタメ口で話す傾向があると言うことが判明した。


 「第一、日も出切ってないのに何するってのさ」


 「体操、食事の用意、畑仕事の準備、船の設計確認とか色々あるんだぞ!」


 ロトカは理解はできても納得は出来てなかった。もう一度寝たかったのだが、あと1週間の地獄だと割り切り、不満たらたらで起きる事が多いのだった。


 この辺りの地形は家から100m程後ろに浜無しの海岸がある。


 家までは芝生が広がり、家を境目として前方向にはあたり一面畑が広がっている。


 その奥に巨大な森が存在している。


 畑仕事と一口に言っても、その詳細は多岐に渡っている。

 雑草毟り、桑やスコップなどの手入れ、種まき、土を耕し、育成状況の確認(これはほぼファーレンが行う)、その他雑用などだ。


 畑では主食である小麦を半面、じゃがいも、人参、キャベツなどの野菜をもう半面で栽培している。食料はほぼ自足自給であるが、一度に一年分の食料を栽培するのではなく、半期ごとに分けて栽培しているらしい。


 ファーレン曰く、暖かい地域でしか出来ない方法との事だが何のことだかロトカは分かっていなかった。

 起床して、ファーレンを真似て簡単に体操をした後、この畑仕事に取り掛かるわけだが、ロトカの仕事は主に畑を耕す事だった。


 鍬で耕すのだが、これが結構辛い。主に精神的にだが。まず鍬が小さすぎて腰にくる。そして変化がない事に飽きてくる。


 その間、ファーレンは茶を啜っているのでは無く、経験者にしか判断できない作物の育成状況のなどを確認している。


 目立つ雑草をその都度引っこ抜きながら仕事をしている。当然畑が大きすぎるので、2時間や3時間で終わるものではない。


 ひと段落したら朝食を取り、少休憩したところでまた仕事を再開するのだった。ところでロトカは裸でいる事に遂に疑問を持ち、


 ファーレンから長袖の外套を借り、それを着ていた。真っ黒な外套でフードが付いていた。生地は薄手で滑らかな肌触りだ。ゆったりとしたものではなく、腰や袖にそこまで余裕はない。


 しかも黒いので遠目からみてスラっと余計に細く見える。


 軽く、着やすいので戦闘中も邪魔にならないのですぐにロトカは気に入った。しかしどう考えても丈がおかしい。ロトカは2m近い長身なのに関わらず、


 ちょうど良い長さなのだ。ファーレンとの身長差を考えるとこれは変だ。


 ロトカも奇妙に思い、質問した所、『妻が使ってたんだ』と言われた。


 今いない所を見ると...そういう事だろう。


 『どうせ誰も使わないし、使ってやってくれ』とも言われたが、気を使われている様で気が重くなった。命に変えてまで守ろうとは微塵も思わないが、そこそこ大切にしようと思うのだった。

 それにもう尻尾の部分に穴が空いてなかったので無理やり開けてしまった所だ。


 今のロトカの格好は黒いフード付きの外套を着て前を3つのボタンで閉めている。これで裸ではなくなったが、足元が寂しい。


 そう思い、ファーレンは何か無いか探したが、都合よくそんな靴はなく、裸足のままになっている。ロトカ自身も困った事はないので特に気にしていなかった。


 森を駆け回ってる時も不便さを感じた時はない。石ころや唐木を踏んでも平気なので、足の皮が厚いのだろう。


 午前中は畑仕事を手伝い、昼食を食べた後は森に入るのが日課だ。

 ロトカがこの島に滞在できるのは精々長くても2週間。その間に、今後ファーレンが暫く肉に困る事を少なくする為に狩猟をしてやろうと思ったからだ。


 目的の大部分は体と意識のすり合わせや運動の方だったが。金棒の扱いにも慣れてきた。

 初日こそただ力任せにぶん回して、なぎ倒す様な使い方だった。しかし今は微かに上達した。尻尾で器用に扱える様になったり、そこそこの精度で目標に投擲出来る様になっていた。


 初日に木を倒しまくったので、もう道を切り開く手間が省けて随分楽になった。そのお陰で少し脇道に外れたり、新しく奥道を開拓する事が可能になった。


 一方、相変わらず獲物捜索には難儀していた。襲ってくれればこれ程楽な事は無いというのに。そう常々思っていた。この森は獲物が少ないのかと言われればそんな事はない。むしろ過剰に多いくらいだ。3mを超える動物はザラに出てくる。長きにわたり、この島がほぼ無人島状態だった事の理由はそれもある。動物が強すぎて手出しし難かったのだ。


 そのため、ファーレンも慎重になりながらも浅い所までしか踏み入っていなかった。


 そんな事は梅雨知らず、ただ単に『この森には生き物が少ない』とロトカは勝手に思い込んでいた。


 ともかく日に日に獲物を捕まえる為に要する時間が伸びていき、日がすっかり暗くなってからの帰宅が当然になっていた。


 実際には大木で筋トレを行い、汗を流すなどをして時間が無くなっていくのだが。

 最初こそファーレンも心配していた。ファーレンが元々住んでいた地域には昔からこの島と森の恐ろしさが実しやかに口伝で伝えられていたからだ。


 この島がどの方角にどれくらい先にあるかは大昔の情報ではっきりしていた。しかし行けば帰って来られない呪われた島という認識が根付いたくらいだ。


 実際に肝試し感覚で行くような者たちや政府によって開拓の試みが何度か為されては居たが、ほぼ生還した者は居なかった。数少ない生還者が持ち帰った情報から天候が穏やかで豊かな森がある島が実在する事が知らされた。


 その知らせに皆沸き立ち、動物が異様に強く、ほぼ壊滅させられた悲しい事実などは目もくれなかった。それは偶然だと思い込んで。


 それからというもの何度も開拓の試みがなされたが、結果は変わらず、遂に頓挫した。肝試しで向かうような輩もすっかり居なくなった。向かった者たちも馬鹿ではないので、伝え聞いた情報や今までの事を考慮して、試行錯誤を行なったのだ。それでもなお状況を変えるに至らなかった。


 それから時代が過ぎ、帝尾類の生息域調査が進んだ事で、今まで生還出来なかった者たちはそもそも島に辿り着けなかった連中が殆どではないのか?という仮説が生じた。


 その仮説を解明する為に、態々軍艦を呼び寄せた。その軍艦は最新式のもので帝尾類に認識されないような工夫が凝らしてあった。そんな船が開発されたので、確実に島に上陸できる様になった。


 そんなこんなで半ば実験台としてファーレンはこの島にたった1人残されたのだ。


 そんな裏話があったりする。


 「帰ってきたか。今日は何か捕まえたか?」


 「今日はワニ捕まえてきましたよ。生意気にも私を見て襲ってきたのでね。体は大きいですが、かなり痩せてたんで空腹に耐えきれなかったんでしょうね」


 「お嬢さんの”大きい”は怖いな。捕まえてきてくれたのはありがたいが、明日も解体が大変そうだ」


 「私が毎回半分くらい食べてしまいますけど、残りの肉も結構な量ありますから、腐らないか心配ですね。干物にでもしますか?」


 「ああ、干物にすれば半年くらいは保つから大丈夫だ」


 ロトカの圧倒的な存在感に気圧されて、態々近づく様な動物が居なかったのだ。通った道もその残り香がこびり付いており、それを恐れてどんどん動物は生活圏を両脇に移動させていた。


 「さあ、私達の強盗計画について話し合いますか」


 「私を入れるんじゃない!」


 「やはり賞金首とやらを探して…いや。それだと面倒ですね。いっそ銀行を襲った方が良いですか」


 「聞いとるのか!もうお嬢さんがどうしようと止める事は出来ないだろうが。せめて私の名前だけは出してくれるなよ」


 「じゃあ、手っ取り早い宝石とか金品の集め方教えてくださいよ」


 「全く、聞く相手を間違えてるぞ。私のような一般人に何を聞いてるんだ」


 「じゃあ誰に聞けば良いんですか」


 「そんなの私が知るか!」


 「っはあ。素人の考え…というか思いつきはだな。賞金稼ぎ集団のギルドに入るとかかの。それか陸・海賊とか。真っ当な所なら探検者なんてのもあるな」


 「まあその辺は昨日も聞きましたよ」


 「だーうるさい!この辺しか思いつかんぞ。大金を手っ取り早く手に入れるなんて。もういっその事自分で掘ったらどうだ?女性がやる仕事ではないだろうが、お嬢さんは力が有り余ってるから問題ないだろう?」


 「それも考えましたけど、何処でも出てくるわけじゃないでしょうに」


 「ところがどっこい。ここから近い陸に宝石採掘で有名な国がある。取り敢えずそこに行ってみれば良いのではないか?」


 「なるほど、そんな所が…してその場所の名前は?」


 「エルドラ王国、だったか?エルトラ王国だったかもしれん。なんせ何十年も前も話だから今はどうなってるか分からんがな。まあ多分変わってないだろう」


 「ルビーとかエメラルドがわっさわっさ採れるんですよね?」


 「ああ、わっさわっさ採れるらしいぞ。まだ陸にいた頃、近所の友人がその国で富を拵えたと、友人の友人から聞いたな」


 「信憑性に欠けるのでは…?嘘だったら本当に共犯者としてお爺さんの名前をきっと挙げますからね。住所とかもついでにポロっと言ってしまうかもしれません」


 「じゃから何十年も前の話だと言ってるだろう!友人の話は別として、その国は確かに存在していたぞ!」


 「じゃあ一先ずその国に行ってみます」


 「そうかそうか。それが良い。ともかく、お嬢さんが犯罪に手を染めないで一安心だわい」


 ファーレンがお茶を一すすりしながら今朝の新聞を途中から読み始めた。


 一体目が見えないのにどうやって内容を把握しているのか。甚だ疑問である。


 『あわや大失態 破られた? 大監獄』

 アレンシアとミスランディア、両国が有する孤島監獄ファイゼンから脱獄者が出た。脱獄者は7日前に政府施設への不法侵入、公務執行妨害、貴族へ重傷を負わせるなど、残虐な事件を繰り返した者である。

 犯行はベルデ監獄署長が不在の最中に計画されたものだという見方が多い。というのも、脱獄が行われた時間にベルデ監獄所長と署僚達が不在だったからである。

 外部や内部に協力者がいた形跡は発見できておらず、脱獄者単独で行ったと見られる。ベルデ監獄署長の不在、監視システム切り替えの最中、閣僚の多くが出払っていたなどの隙が突かれた事がこの様な事態を引き起こした。

 当時現場には海軍大佐が派遣され、総指揮にあたっていた。その事もあり、脱獄者を監獄前の広場で激闘の末下した。戦いの後は深く残っており、広場は荒れ、周囲の家屋の多くは倒壊した。

 最終的に脱獄を赦しはしなかったが、この様な失態が2度と起こらない様に体制を一新させる必要があるのではないだろうか。


 ロトカの方のページにそんな記事が載っていた。記事の横の方には見覚えがあるあの広場の写真が載っていた。


 「レイグミシア…遠い国の話だな…」


 「あ、私のことが書いてありますね」


 「何を馬鹿な。この事件は約10日前だぞ?国の正確な場所は覚えとらんが、相当遠かったはず。そんな短期間で何千キロも移動できるわけなかろうて」


 そうは言いながらも、かつての変わった特技を有していた知人を思い出し、そんな奴もいるかもしれないと僅かばかり思った。


 「で、さっきの宝石の話に戻るが、もし無理そうならやはり探検者が手っ取り早いぞ」


 「探検者ですか」


 「そうだ。モンスター討伐だったり誰かの護衛だったり仕事に尽きんぞ。お嬢さんの腕っ節は相当なものだろう。大変だろうが,食って行くのに困らんと思うぞ」


 「う〜む」


 「普通はどのギルドも殺人など重犯罪を犯した者は入れないのだが、新聞記事が正しければお嬢さんは死んだことになっている。だから問題なく入れると思うぞ。ギルドは5つある。中でも一番大きなギルドはブルーゲイザーだったか。取り敢えずそこに行ってみると良いだろう…そうそう、私が大陸いた頃はクラッシュという若者の活躍がよく市政を賑わせていてだな…」


 ファーレンの昔話が始まった所でロトカは机に突っ伏して寝てしまった。

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