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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第19話 夕食

 「とってきましたよ」


 「遅かったな。っておいおい!そのまま入ろうとするな、家が壊れる!」


 ロトカは無理やりに、巨大な猪を入り口から入れようとしていた。長方形の木枠がある玄関は歪んで、メキメキと音を出して軋んでいる。


 「外に置いといてくれ。明日解体するから」


 「そんじゃあよろしくお願いします」


 「全く、何という大物を捕まえてくれたんだ」


 「『大物を頼む』って言うから、張り切ったのに」


 「限度があるだろ、限度が!腐らなきゃいいが…干物にでもするか」


 「大丈夫、3日あれば食べられますから」


 「流石に3日じゃ無理だろう。まあ良い、手洗って来なさい」


 机には庭で取れたのだろう、野菜で作ったサラダ、オニオンスープやパンなどが入った皿が綺麗に並べられている。


 だが、到底年寄り一人で食べられない量だ。


 お爺さんは働き盛りの女性の食べる量など分かりはずもないので、かなり多めに用意したのだ。


 本来肉も少量で済ましているが、わざわざ貯蓄しておいた分を切り崩してまで並べていた。


 「そんなに急がなくても誰も取りゃせん。というかスプーンとフォークを使え。手がべとべとになるだろう...全く、最近の若いもんは手で食うのか?」


 「いやぁ、よく分かりませんよ。最近生まれたばっかですからね」


 「どう見ても成人しているように見えるが」


 「気が付いたら薄気味悪い地下に居ましてね、そこより前の記憶がないんですよ」


 「それは最近生まれたというよりも記憶喪失というやつじゃないのか?」


 「いや、記憶喪失じゃないと思ってますよ。何も思い出せないし、何かを忘れている気もしませんし」


 「それは記憶喪失なら当然だろう」


 「そんな事どうでも良いんですよ。記憶はなくても私が生きてることは確かなんですから」


 「まあ本人が気にしていないのならいいが」


 「そうそう。死ぬこと以外は些事だから。刹那を生きようじゃあないですか」


 「…お嬢さん、長生きしなさそうだな」


 ロトカはお爺さんと話をしながらも、器用に山ほど盛られたサラダを平らげていた。


 「やははは。食べ方は汚いが、見ていると私も食欲が湧いてくるようだ」


 「食べることは生きる事だ、と誰かも言っていましたから。長生きしたいならもっと食べる事ですよ」


 ロトカはお爺さんに肉を分けた分を少し入れた皿を差してやる。


 「今日は少し多めに食べるとするか」


 お爺さんも受け取らないのは気が引けたため、今日だけでも...といつもは食べない量を食べる。


 「あの森は横一直線、同じラインから綺麗に始まってるけど、不自然じゃあないですか?」


 「ああ。気づいたか。私もずっと不思議に思っている。私がこの島に来てからずっとな」


 お爺さんはロトカから受け取った小皿にフォークを指し、肉を一切れかじる。


 「しかも、30年前から広がっていない。そのまんまだ。全く謎だな」


 「そもそも、私は森に頻繁に行くわけではない。小ぶりの猪や鹿を罠にかけるのがやっとだ」


 「何年か前に意を決して森の奥に行ったことがあるぞ。先に進めば進むほど、森は深くなり、木々は太くなっていく。動物の強さも比例して強くなっていく...うかうか入り込んだら、私なんぞ殺されてしまうと実感したぞ。」


 「まあそうでしょうね」


 「...だからあの森についてはほとんど何も知らんのだ。森は不思議で神聖な場所とされているし...触らぬ神に祟りなしだ」


 「そんな物騒な森なら、なんで私を行かせたんですか」


 「いや、お嬢さんが行きたそうだったしの。それに強そうだったからな。それに私も奥までは入らない方が良いと止めたじゃないか」


 「まあ止められても肉を取りに行ったでしょうけどね」


 「で、どの辺まで行ったんだ?」


 「さあ?具体的な距離は分かりませんけど。何か小さな湖があるところまでは行きましたよ?水が透き通っていてとても神秘的でした」


 「はて...そんな湖があったとは。そりゃ知らなかった」


 「話を聞いている限り,普段お爺さんが行かない様な奥地でしたからね...動物も骨がある奴が何体かいましたよ.羽が生えた大蛇に,牙の長いマンモスとか...」


 「よく生還できたな...もう少し慎重に進めなかったのか」


 お爺さんは呆れた様子でそう言う。


 「そういえば、帰ってくる時に沖の方で船を何隻か見たと思うんですが?朝方に行っていた帝尾類とやらに襲われないんですか?水平線辺りだから3キロ先くらいではないんですか?」


 「確かに水平線辺りなら大体3キロくらいで、帝尾類のいる海域だな。それにしても、暗いのによく見えたな」


 「まあ薄らとですけどね?」


 「それは恐らく海軍の軍艦だ」


 「海軍?」


 「海軍が帝尾類の様な海の怪物を遠ざける特殊な技術を保有している事は有名だからな」


 海軍と聞いてロトカはあの槍女を思い出す。奴も海軍なのだろうか? 


 「海軍って何してるんですか?」


 「こら!机に足を乗せて物を食うな!…何って、全ての海を守り、海賊を退ける事だろ」


 「宝物とか沢山持ってますかね?」 


 「多少は持ってるだろうが、海賊の方が溜め込んでいるだろう。それ目当てで海賊してるのが大半だろうからな。というか何でそんな事知りたがる?」 


 「そりゃ宝を集めたいからですよ」 


 「落とした物を食べるな!なんだその漠然とした目標は…まさか奪う気か?」 


 「その必要があれば」 


 「やめておいた方がいい。お嬢さんが腕が立つのは十分かったが、海軍は半端じゃないぞ。強さは青天井だからな」 


 「何で分かるの?」


 「儂は大昔に大佐に会ったことがあるが、オーラを感じたぞ。圧倒的強者のな。正直怖くてしょうがなかった。大佐でそのレベルならもっと上は計り知れない」


 それにだ...と先を続ける。


 「略奪を続けられても、悪名が広がるとともに懸賞金をかけられるだろう。そうすれば賞金稼ぎも軍も本腰を入れて捕らえようとしてくる。どっちに捕まっても待つのは暗い未来と冷たい牢屋ぞ。考え直す事をお勧めする。それに一度懸賞金が付けば、安心して寝れる日は一瞬もなくなるぞ。やっと安心して寝れるとしたらそれは捕まった時だ」


 「大丈夫ですよ。その時はまた逃げますから」


 「そんな簡単に逃げられたら世の中犯罪者だらけだ…それに盗人にでもなれば親や友人、悲しむ者がいるのではないか?」


 「生憎、そのどちらもいませんねぇ。居たこともないので感覚としてどういうものかも良く分かりませんし、この野望がなくなることは考えられません」


 ロトカは机に脚を載せながらソーセージを齧る。


 「友人がいないとは…」


 「そんなかわいそうなものを見る目で見ないでください。いいんですよ。居なくても。生きて行けますから」


 「殺伐とした考え方だな。まあ、確かに友人はいなくても心臓は鼓動を続けるだろう。しかし、友というのは苦楽を共有し、別つことで人生に彩を与えてくれるものだ。何も多い必要はない。少なくてもよいがいるに越したことはないと思うぞ」


 「そんなものですか」


 「そんなものだ」


 「では、私とお爺さんは友人という事になるんでしょうか」


 「それはどうだろうか。まだ1日もたっておらんし、私は迷惑しか掛けられておらん。ピザはないのか、肉を食わせろだの。こんな図々しい奴はなかなかおらんぞ」


 「ひどい言われ様ですね...っふう。流石にお腹いっぱいになりましたね」


 テーブルに山とあった料理は全て無くなっていた。二人で食べたのではなく、9割以上はロトカ一人で平らげた。


 「よくもまああれだけの量を食べたな。ちょっと多すぎたかもしれないと思ったくらいなんだが...」


 お爺さんは半ば呆れている。


 「そいうえばその外套、ボロボロだし少し臭うぞ」


 他人から"臭う"と言われて、少しだけロトカは羞恥を覚える。女としての感覚は失っていない。


 「良かったら、新しいのをあげるぞ」


 「そんなのあるの?流石にお爺さんと私じゃサイズが違いすぎると思いますけど」


 「妻のものがある。妻も儂よりかなり大きかったからちょうど良いと思うぞ。明日の朝に用意してやる...もう今日は寝て明日に備えるぞ、畑仕事に肉の解体、時間はいくらあっても足りんからな」


 ロトカとお爺さんは皿の片づけなど、諸々の雑務を終わらせ、就寝する事にした。

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