第15話 そもそもの間違い
軍は暴力の塊をそのまま監獄に放り込んでしまった。
しかし、それもその筈。単純にロトカが弱いという評価を下したからだ。
看守所で戦った時も宝石を守る必要があり、更に空腹だったため、全力とは程遠かった。貴族に暴行を加えたと言っても他の囚人でも出来る。
そういった理由で軍はロトカを身元不明の罪人だとしか認識しなかった。その残虐さからファイゼンに送られることになったのだ。
多くの力に覚えのある罪人でも、ガタガタ怯える様になる程の監獄だったので、ここに送れば間違いないと判断したのだ。
危険度を正確に評価出来なかった。軍の失態ではなく、只々運が悪かった。
余りに正体身元不明のロトカを過小評価しすぎた。
その結果の一端がこの現場である。
獄中の生活が長い囚人程、逃げようとした者の末路がどう言うものかを知っている。
そういう者程、想定外の現実に一言も発する事が出来ない。看守達がただ一方的に蹂躙されているのだから。
「さて、まだまだ行きますか」
裸足で地面に広がる血潮を踏みしめながら看守達が来た道を戻っていく。
現場を見た者は誰も言葉を発さない。
角度や場所的な問題で、何かあった事だけを認識している者達が状況確認の為に、唖然とする者に声をかけるくらいだ。
どこが出口なのでしょうか。看守が来た方に向かってるんですけど。
只々牢屋と囚人が居るだけで肝心の出口がない....あ、あった。
曲がり角を左に行った時、明からにこのフロアの出口があった。大きな門で高さ5メートル、横幅3メートル程の、黒く、分厚い門だった。それが両開きで空いている。
そして門の入り口横一文字にズラッと、こちらに銃を向けた看守達が勢揃いしている。
「そんなの効きませんって」
「撃ぇ!」
誰かの合図で一斉に弾丸がロトカ目掛けて撃ち込まれる。
中には外れる弾丸もあるが、多くは命中した。
「だから効かないって言ってるのに...」
看守達が交代で銃を撃ち続けるので、連射出来ているが効き目が一切ない。
その間に数十メートルの距離を詰め、集団に殴り掛かる。100キロ近くある質量が突っ込んできただけでどんでもない威力になる。
多くの看守が吹っ飛ぶ中、数人は踏み止まり、斬りかかる。
が、ロトカの皮膚にかすり傷も付かない。
「コイツの硬さは異常だっ!」
「ど、どうしますか!?」
「我らの命に変えても脱獄を阻止するだけだ!」
リーダー格と思しき者と、踏み止まったは良いが、ロトカの恐ろしさに腰を抜かした若い看守という感じだ。
リーダー格は腹を決めているらしいが、若いのはそこまでの覚悟が無いらしい。
若いの以外の踏み止まった連中も死ぬ覚悟なんて出来てない、と顔に書いてある。
「漫才は他所でやって下さいよっ」
ロトカは適当に殴り、地面に転がして置いた。
「もうどうしようも無い連中ですね」
あまりの弱さに言葉を失う。
「さあ出口どっちですかね」
門の先は螺旋階段やら、特に続く道やら、恐らく囚人達が入れられる湯だった釜などがある。
はてさて...悩んでも仕方ありませんね。階段から下に向かってみますか。
ロトカは、すたこらさっさと監獄内に興味を示す事なく進んでいった。
そういえばゼヘクが後で逃げられる的な事を言ってましたが、どういう意味だったのでしょうか。
まあ逃げられればそれで良いですね。ゼヘクもアテが有りそうですし、ここはひとまずお先に失礼するとしましょう。
決して助けるのが面倒だとか、空腹だからだとかそういう理由ではありません。ぶっちゃけ死んでも良いと思ってるなんて、まさかそんな事。




