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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第13話 海賊

 ロトカは尻尾に違和感を感じた。


 まだ寝足りなかったが薄っすら目を開けると、鉄格子の隙間から隣の牢屋に尻尾が入り込んでいた。


 違和感の正体は何やら男がこちらに背を向けて私の尻尾を手に取って突いたり引っ張ったして遊んでいたのだ。


 「おっ!起きたか。お前さんの尻尾面白いな。帝尻類に似てら」

 「尻尾...?」


 そういえば尻尾の存在をすっかり忘れていた。自然と腰に巻きつけたままにしていた。これを攻撃に使えていれば...


 「なんだ、面白い顔して」


 「普通の顔ですよ」


 目の前の男が私の尻尾をムンずと遠慮なく掴み上げる。


 「先端だけ包丁みたいな形してて、ここだけ凄ぇ硬ぇんだよ。他の部分は柔けえのにな」


 そう言って男はコツコツ尻尾の先端を叩く。確かに硬い音がする。


 「っていうか尻尾返してください」


 「お、わりわり」


 そう言って私は尻尾を引っ込めた。


 「貴方は?」


 「俺はゼヘクって言うんだ。海賊やってんだ」


 しししっ!っと小悪党の様な笑い方をするものだ。歳は30代だろう。髭を生やして溌剌とした雰囲気の人間の男だ。


 月の薄灯しか無く、見えにくいが、髪は黒髪だ。肩まで届きそうなほどの長さで、暫く切っていない事が伺える。

 肌は別段薄黒い訳でも無く、どちらかと言うと白に近い。瞳は深い蒼だ。両方の耳には2つの蛇が絡み合ったような趣味の悪いイヤリング。上半身は砂埃で汚れ、くたびれた白いシャツを着ている。


 シャツの第2ボタンが空いている所から見える胸には何やら刺青が彫ってある。


 「海賊?海賊ってあの海賊?海をふらふらして略奪とかする?」


 「ふらふらってなあ。まあ合ってるか。わっはっは!」


 「それにしても爪も無いし。どこかに落っことして来ました?」


 「いんや。そうじゃねえ。拷問でな、相手の顔に唾飛ばしただけでこのザマよ。カリカリしすぎなんだよな」


 ゼヘクは何でもない様に笑いながらそう話す。


 「酒の話が増えたから良いんだけどな」


 全く悔やむ様子もなく、天気について話すような軽いノリでそう言う。


 拷問と言うからには無理矢理剥がされたのだろうが、痛く無かったのだろうか。


 「しっかし、俺のところにも獣人はいるが、初めて見るタイプだ。上半身は人間で腰から下が獣人とはっきり分かれてるは...サラブレッドか何かか?」


 「いや分かんないですよ。気付いたらこうなってました」


 「気づいたらって何だよ、ハッキリしねえな。それに綺麗な毛だなあ。カラスか、トラか...いずれにしても珍しい。街に出れば目立つだろう。こりゃ良い集合場所になりそうだ」


 失礼な男ですね。


 「そういえばここってどこなんですか?貴方の家では無さそうですけど」


 「当たり前だろ。自分家でなんで手錠なんかするんだよ」


 それはそうだ。


 「お前さんが連れてこられた時ぁ、寝てたから無理もないだろうな。まあ教えてやろう。聞いてションベン漏らすんじゃ無いぞ?取り敢えずアレンシアとミスランディアの間にストックス海があるよな?そこに浮かぶ島。ポート・ヴォルティアだ」


 「随分と変な名前の島なんですね?」


 「...なんか俺の想像していた反応と違うな。まさかこの島のこと知らねーのか?」


 「そんなに有名なんですか?」


 「お前さんどっから来たんだよ...?大陸の田舎者でも知ってるだろう」


 「どっから来たか...?簡単なようで難しい質問ですね。闘技場がどうとか、”竜の口”がどうとかって聞いたけど」


 「そりゃあれだ。アレンシアの海岸にある有名な闘技場だろう」


 そう言われてみれば塩風っぽかった気がするが...


 「自分が何処にいたか分からないなんて気持ち悪い奴だなあ。変なクスリでもやってんのか?」


 「私は正常ですよ。記憶がそこからしか無いからしょうがないじゃないですか」


 「どう言うことだ?」


 面倒くさいが、特に他にやる事もないのでゼヘクに今までの経緯を教えた。


 「お前さん見た目のわりに随分とまあえげつねぇ事するじゃねーか。貴族の目を抉るだあ?そんな事やりたくねえなぁ。わっはっは!」


 「そりゃあ私の言い分なんて碌に聞かず、体弄ってきたんですよ?そりゃあ頭にきて殺したくもなるってものじゃないですか?」


 「まあどんな理由にせよ、ここにぶち込まれるだけの理由はあるってこった」


 「ここはファイゼンっていう巨大監獄だ」


 「監獄ですか?」


 「そうだ。お前さんは知らなかったが、相当有名な監獄だ。なんせ超重罪人しか収監されねぇからな」

 

 「殺人、強姦、略奪行為、政府への著しい反逆とか、それも特別重い罪を犯した様な奴しか来れねえんだ」


 「気づいたら竜の口とか言う所に居ただけなのに?」


 「冤罪かどうかはもう関係ないのさ。ここに居るという事実しか無いからな」


 「おい、6022番出て来い」


 そう言われて牢屋の出口を見ると帽子を深く被った看守がカギを開けて私の方に呼びかける。


 「私ですか?」


 「貴様に決まっている。早く出ろ」


 なんて太々しい態度なんだ。


 「まあ頑張って来い。正気だけは保て。そうすれば逃げ出すチャンスはある」


 ゼヘクはこれから起こる事を知っているのだろう。しかし、それを聞く様な時間は無さそうだ。


「了解」


 私はこれから我が身に何が起こるのかと想像しながら、牢屋を出て行った。

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