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revol†  作者: HP3
1章 Red Cross Hearts
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第1話 とある警備兵

 「今日もうるせえな」


 レイグミシア王国軍務庁治安維持課ローレンシア隊に所属する特殊警備上等兵、オリスがそうボヤいた。


「当たり前だろ。場所が場所なんだから」


 その愚痴に対し、オリスの同僚であるキリアンがそう言う。

 両者のこの短い会話の最中にも、上から人々の大きな歓声が聞こえて来る。それに対して時折、上のレンガの天井から足元に伝わってくるドシン!という振動を感じる。


 「おっ!今のやつは大きかったな」


 「あぁ。かなりの大物と戦ってるらしいな」


 周りは劣化して黒ずんだレンガの壁に覆われており、側壁に松明が2つずつ差し込んである。辛気臭い雰囲気が漂っている。それに加えて肉が腐った独特の匂いも鼻の奥に感じる。


 「今日はアレンシアの死刑囚とリノブルムが戦ってるからなあ」


 「なんでスケジュール把握しているんだ...」


 「なんでって、そりゃあ仲間に賭けてもらってるからさ。どうだ?お前も賭けるか?」


 「今からじゃ遅いだろ。というかそもそも俺は賭け事は好かん。もっと特殊警備兵らしくだなぁ...」


 「だぁあー!もううっさいうっさい。分ぁーってるって!説教垂れやがって。ちゃんとしたって給料変わんねえんだからいいだろーが」


 「まあそうだが...そういう小さな所から直さねば行動は変わってこない。俺が上司になったらこき使ってやるからな」


 「へいへい。せいぜいその日が来ない事を神サマに祈るとしよう...」


 ドシン!うぉぉぉおお!!!!!


 「おぉ!決着ついたらしいな」


 「だな。死刑囚も助かったな」


 この2人だけがこの場所の警備を受け持っているわけでは無い。他の何人かとローテーションなのだ。しかし7年の経験により足に伝わる振動と歓声の大きさ、タイミングで決着が着くいたかくらいは分かるようになっていた。


 「おっ。真面目なキリアンが罪人の方を持ってら」


 「まあな。最終的には...なあ」


 死刑囚が頑張って目の前の敵を倒したところで死ぬ運命からはほぼ逃れられない。

 その事を当然王国の警備兵は知っているので同情したのだ。


 「それにしてもアレンシア鉄鉱監獄とは...随分大物の死刑囚の様だな」


 「ったりめーよ。あのアレンシアだぜ?あんな所に打ち込まれる位なら舌を噛んで死んだ方がマシさ」


 「俺も見た事は無いが噂だけなら同感だな」


 「行ったとしても来る日も来る日も鉱山を掘り続ける毎日だろうしな。それに加えて男しかいないからなあ。別の所を掘られたりするらしいぜ」


 オリスの卑猥な話にキリアンは眉を顰めた。


 「そんな話は聞きたく無い」


 「なんだよつまんねぇな」


 喋りがいが無いとばかりにオリスが腰に刺してあった剣を掌に乗せて遊び始める。


 「剣で遊ぶとは、それでも特殊警備兵か!」


 「うおぉ!」

 

 あまりの大声にオリスは驚き剣を地面に落とす。流石に鞘はしてあったので刃に傷は付かなかった。


 「剣は私達の誇りだぞ!それを落とすとは...」


 「トイレトイレーっと」


 キリアンの話が長引きそうだったのでオリスはさっさと剣を腰に刺してトイレに逃げていく。


 「ったく真面目すぎて狂ってんじゃねーか?アイツと一緒だと肩が凝ってイケねえ」


 「聞こえてるぞ。全く...」


 当然だが特殊警備兵とは名前の通り、特殊な警備兵のことを指す。


 どういった点で特殊なのかと言うと警護する場所が特殊なのだ。この2人が守っているのはただの闘技場の地下では無い。竜の口と呼ばれる焼却炉を守護しているのだ。


 闘技場では毎週土日に何戦か行われる。一戦で死刑囚が相手にしなければならないモンスターは一体とは限らない。何十体もいる場合もある。そうなってくると死刑囚が殺すモンスターの数が100体を超えてくる。


 通常、モンスターを倒して得られる素材は貴重な物で、皮や肉と言ったものは全て、余すところなく取引される。

 しかし宗教上の理由から穢れた存在だと考えられている闘技場のモンスターの素材は取引しないことと数十年も前から決まっているのだ。


 では死体はどうするのか?そのまま放置する訳にも行かない。ここで焼却炉が出てくる。


 昔は遠くまでわざわざ運んで捨てていたらしいが、死体の解体で素材が奪われる事が多々あった。それら問題と輸送費などを鑑みて、闘技場の地下に焼却炉を作ってしまえば高額な輸送費の発生と素材が盗まれるという問題もなくなり、万々歳である。

 

 この理念の元に50年程前に作られたのが竜の口、と呼ばれる大きな焼却炉だ。 

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