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中心部

 そうしてご先祖に言われた通り、沼の中央まで泳いでみると、周囲の風景が様変わりした。


 朽ち果て、腐り落ちて、白骨化した様々な魔物たちの死体が埋まっている。

 悪魔や、妖鬼や、翼竜――俺が見たこともないような魔物の死体まである。

 まるで魔物たちの墓場だ。


(そいつらはただ魔物ではないぞ。千年前、我がヘイムダル領を蹂躙しようと押し寄せてきた魔王どもの軍勢……その成れの果てだな)


 ご先祖がドヤっとした感じで話しかけてきた。

 まあそりゃそうだよな。

 見た感じ数百以上の魔物の死体があるし、これは素直に凄いと思う。領地の危機を救ったにも関わらず、褒めてくれる人はいなかっただろうし。


 あれ?

 ……ってことはこいつらさっきのスケルトンたちみたいに俺に襲いかかるんじゃないか。それってかなりまずいんじゃ。


(心配するな。そいつらはただの物言わぬ屍だ。お前を取って食おうなどとはせんよ)


 ご先祖の言った通り、魔物たちの死体が動き出す気配はなかった。

 ほっと胸を撫で下ろす。

 いくら配合の力があるとはいえ、これだけの数の魔物を相手取るとなると、俺も無事で済むとは限らなかった。


 それにしてもこんな魔物どもの墓場に俺を連れてきて、ご先祖は何がしたいのだろう。

 本当にこんな場所に、外に出るための何かがあるのだろうか。

 まさか自分の手柄を自慢したいだけだったのか?


(そんなわけがなかろう。ほれ、目的のものが見えてきたぞ)


 特に目を惹かれたのは、中心に横たわる、巨大な骸骨。

 腕も脚も、太い。

 骨の一本一本に至るまでがでかく、俺の腕くらいある馬鹿でかいサイズをしている。

 まるで巨人族のようだ。


(あんまりじろじろと見るな。この助平!)


 怒られてしまった。俺には白骨に欲情する趣味はないのだが。

 って……あの骸骨もしかしてご先祖なの!?


(そうだが、何かおかしいか?)


 いやいや、おかしなことだらけですよ。

 明らかにサイズが巨人みたいだし、それに比べたら俺の身体は普通だし。


(そんなことはどうでもいい。お前、何か気づくことはないのか?)


 俺は動揺治まらぬまま、ご先祖の白骨死体を再び観察する。

 頭蓋骨の上には、馬鹿でかい図体に見合った巨大な冠がつけられている。

 魔力を増幅するような腕輪やら首飾りやらで、全身という全身が、がんじがらめになっている。


 その姿はまるで鎖で身動きを封じられ、牢獄に繋がれているかのようだ。

 数百もの魔物から領地を守るという功績を上げているにも関わらず、こんなところに野ざらしにされているなんて、悲しいな。


 ……ん? いま、何か光ったような?


 ふと俺の視界を過ったのは。

 ご先祖の肋骨――胸のあたりに、光り輝く石のようなものが目に入った。


(それはこの死者の沼の要石だ)


 要石?


(沼を維持するための核――いわば心臓。それを破壊さえすればこの沼は亡者諸共消えてなくなる。そうすればお前も晴れてニブルヘイムから出られるはずだ)


 え?


(何を驚いている。お前は、一刻も早くこの沼から出たいのだろう?)


けれど核とか心臓とか……そんな大事なものを破壊してしまってご先祖は大丈夫なんですか。


(私のことはいい。お前は、お前の未来を考えろ)


 いやいや、待ってくださいよ。そんなことが出来るわけがありません!

 あなたは、初めて出会ったばかりの俺に優しく声をかけてくれた人だ。

 こんなに優しくしてくれたのは……あなたが初めてですから。


(そう、か。優しくされたのは初めて、か。我が一族のせいで、ヘイムダル家のせいで……今までお前には不自由な思いをさせて悪かったな)


 そのことはいいです。

 ご先祖は悪くないって、俺さっきそう言ったじゃないですか。


 あなたはかつて千年前も魔王の軍勢からヘイムダルを守るためにその身を犠牲にした。今度は俺のために、その身を捧げるというのですか?


(出会ったばかりの私にそのような気遣いをするとは優しい子だな、お前は。……そんな優しい子が死んでしまう未来の方が私には耐えられぬ)


 でも、でも……!


(お前はこんなところで死んでいいのか? お前はまだ若い。外の世界に行けば、いくらでも楽しいことは待ち受けている。こんな臭くて陰気な場所で、私と付き合う道理はない。それに――)


 それに、とご先祖は言った。


(私はもう……疲れた。いい加減終わらせておくれ)


 ご先祖……!


(さあ、我が子孫アルマよ。私を切り裂き、その手で未来を切り拓け!)


 俺は右腕を勢いよく振りかぶり、渾身の力で核を殴りつけた。


 すると核から亀裂が走り、そこからまばゆい光が漏れた。

 力が溢れ出そうとしている。この死者の沼にブルへイムを形作っていた魔力だ。


 目を焼くような光が弾けて、そして――

 世界は輝きに包まれた。


※配合要素があまりなくてすいません。

これからたくさん出していけたらなと思ってお話し組んでいます。


面白いと思ったら評価、応援、感想を頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

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