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ご先祖の声

「あれ……おかしいな」


 何度目になるかも分からない配合を繰り返し、迫り来る死者共を吸い込んでいるけれど――


「最初のときのように、力がみなぎってくる感覚がない……どういうことだろう」


 てっきり配合すればするほど俺の力が増すのだと思っていたが、そんなことはなかった。

 同じ魔物同士だと効果が出ないのだろうか?

 別の魔物を吸い込まないと意味がないのか?

 それとも何か別の条件があるのか?


 ……分からないことだらけだ。


「この力……色々と試す必要がありそうだな。強い魔物を配合して、さらに強くならなければ」


 だが困った。

 力を試そうにも俺の周囲には骸骨しかいない。というか俺に近寄ってすらこなくなった。

 俺の力に恐れをなしたのだろうか。


 それとも俺が死者の身体になったから仲間だと思われているのだろうか。

 どうもあいつら生きている奴にしか手を出さないっぽいし、アンデット化した俺を見ても興味を示さないし。


 もっと沼の奥に進んでみれば他の魔物がいるだろうか。

 期待を込めて、沼の中心に進んでみよう。

 そう考えて沼の深部に潜ろうとしたときだった。


(ほう、まだ生きている者がいるとはな。いつもなら沼の亡霊共に八つ裂きにされているはずだが、今宵の獲物は随分と活きが良いようだ)


 声が聞こえた。

 いや、聞こえたというよりかは頭の中に声が響いたような、不思議な感じだ。

 って、この沼に誰かいるのか? 俺以外の何者かが?

 だが周りを見回してもそれらしき影は見当たらなかった。

 一体、何者なんだ? どこにいる? 姿を現してくれ。


(そうだ。お前の心に直接語りかけているからな)


 なぜ俺の考えが分かった!?

 ま、まさか俺の心を読んだのか?


(ええい、その程度で驚くな。うるさい奴め)


 あ……すいませんでした。


(ふむ。お前、いまでこそ亡者のような身なりをしているが……配合とかいうスキルのせいでそうなっただけで、元の姿はれっきとした生きた人間だな)


 え、なんでそんなことが分かるんですか?


(私には鑑定のスキルがあるからな。見ただけで大抵のことはお見通しなのさ)


 鑑定というと、一目見ただけで相手の情報ステータスが見えるっていうあのスキルか。

 そのスキルを持っていれば神官長か、未来を見通すとされる占星術師や、王国の要人として召し抱えられたり、将来の安泰が約束され、重宝される。


(さて。お前は一体、何者だ?)


 俺の名はアルマ・フォン・ヘイムダルっていいます。


(……ヘイムダル? いま、ヘイムダルと言ったか?)


 はい、そう言いましたけれども。


(たまげたな。……まさか我が子孫と、この死の沼で相見える日が来ようとは)


 し、子孫? いま子孫といいましたか!?

 たしかこの死者の沼ニブルヘイムは大昔に祖先が創り出した沼だ。その身を犠牲にした禁呪で、迫り来る魔王の軍勢を飲み込んだという言い伝えがある。

 まさかあなたがその……沼を創り出したっていう祖先なのか?


(いかにも。それは私だ)


 ……マジか。本当に俺のご先祖だったとは。

 というかご先祖、ずっと今まで生きていたのか。

 たしか何千年も前の話だったはずだ。


(私のことはいい。そんなことよりも我が子孫よ。なにゆえお前はこの沼に来た?)


 あー……なんというか。

 その、実は尊敬するご先祖とお話ししたくて、その思いが溢れ出すあまり、つい沼の中まで追いかけてしまいました。


(見えすいた嘘はやめよ)


 す、すいませんでした。


(我が子孫ならこの沼の恐ろしさを知っていたはずだ。……まさかとは思うが、身投げしに来たのか? 自分の命を粗末にするとは感心せぬな!)


 違います。

 そうじゃなくて無理矢理突き落とされたというか。


(……突き落とされただと? どういうことだ、詳しく話してみろ)


 やっぱり、そうなりますよね。

 ご先祖にまで、俺が役立たずで能無しだと知られて、愛想を尽かされるのは嫌だったけれど……いつまで隠し通せることじゃないよな。


 俺は渋々と、これまでのことを話した。


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