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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第二章 ロベルク地方編~軍事同盟を作って、魔王軍の討伐に乗り出した~
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第五十六話 老骨

ロメリア戦記がめでたく出版の運びとなりました

ありがとうございます。これもひとえに読者様のおかげです。

これからもよろしくお願いします。


 カーラが塔から出て行き、一人残されたカルスは何故こうなったのかが分からなかった。

 十分な数と戦力で兵士を送り出したはずだった。仲間の領主達もその作戦に同意していた。だが、結果兵士を無駄に死なせ、仲間には非難され、カーラにも見限られた。


 どこで何を間違えたのか、それがわからない。

 不意に体が重く感じられた。

 着慣れたはずの鎧が重い。鎧の重さなどこれまで感じたことがなかったのに。

 その時になって、カルスはある事に気付く。


 もしや、自分は老いたのか?


 若い頃であればこんな事はなかった。これまでも敗戦や手痛い失敗は経験している。

 だが若い頃の自分なら、すぐに善後策を考えて行動に移しているはずだった。少なくともこんなところでうなだれていたりはしなかった。


「そうだ、ソネットだ」

 今頃になって、カルスは姪っ子の安否に思い至った。

 自分は失敗して敗北した。この城館も落ちるかも知れない。ミカラ領は没落するだろう。

 だが後継ぎであるソネアやソネットがいれば、家の再興も叶う。姪を助け出すことこそ、いま自分がやるべき事だ。


「この事をすぐに思いつかんとは。しっかりしろ!」

 カルスは自分自身を叱咤し、直ぐにソネットを探しに行こうと塔を降りようとしたが、またすぐに後戻りをする。武器を忘れていた。本当に自分はどうかしている。

 剣を手に取り塔を降りる。そのころになると、表門では火の手が上がり始めていた。


「おのれ、もう魔王軍が来たのか」

 カイル達のことを知らないカルスは、魔王軍が火を放ったと思い込み、中庭を目指した。

 だが少し走っただけで息が切れてきた。

 全く情けない。たいして走っていないと言うのに。

 老いた体に歯噛みしながら息を整え、城館の窓から中庭を見る。


 中庭では、逃げようとするミカラ領の住民たちが小さな裏門に殺到していた。そして炎を背に魔王軍の兵士が五体、中庭に入り込んでいる。魔族を前に見慣れぬ黒ずくめの兵士二人が対峙していた。

 カルスは中庭に出る扉を目指し、扉の陰で息を整えて剣を抜いた。


「魔族共め」

 今こそ汚名を濯ぐ時。あの魔族を倒せば、住民たちが逃げる時間が稼げるだろう。

 カルスは中庭に飛び出そうとしたが、その瞬間、頭上から何かが降り注いだ。

 駆けだそうとしていたカルスは、慌てて足を止め城館の中に戻る。


「なんだ、これは? 魔法か!」

 矢か何かだと思っていたが、足元を見てみると。黒い棘が付いた礫が、中庭の地面に落ちていた。

「あの魔族が放ったのか?」

 カルスは中庭で、杖を持つ魔族を見る。


 昔戦場で似たようなものを見たことがあった。礫を飛ばす魔法の一種で、それほど強い威力は無い。だが今回の場合、範囲が異様に広かった。礫は中庭全体に降り注いている。

 それに威力は弱いといっても、盾や兜、鎧などを装備している兵士の場合であり、防具を身に着けていない一般人には、空から降り注ぐ凶器だ。中庭にいた多くの住民が倒れ、傷つきうめき声をあげている。


「たった一人で、この広範囲に魔法を放ったというのか?」

 カルスは信じられなかった。

 以前に見た魔法では、魔法使いは数人に降り注ぐ量しか生み出せていなかった。

 それを中庭全体に放ったということは、あの魔族は、魔法使い十人分の力を持っているということになる。

 それにこの魔法は本来、広範囲に攻撃するものではない。範囲を狭め、対人攻撃用の魔法だったはずだ。

 もしあの数の礫を、対人用に放たれたら――


 カルスの背筋に寒気が走った。

 原型すら残さぬ無残な姿になることが、容易に想像がついたからだ。

 しかしそれだけにあの魔法使いは危険だった。なんとしてでも倒さなければならない。

 卑怯ではあるが、後ろから襲い掛かれば、あるいは……


 カルスは再度剣を握りしめたが、踏み出した瞬間、赤ん坊の鳴き声が耳に届いた。

 声の方に目を向けると、倒れた住民の中に、侍女服の女が倒れていた。

 確かカーラがそばに置いていた、キュロットとかいう者だ。

 カルスは歯噛みしながら、魔王軍の兵士と倒れた侍女を見比べた。迷った末にカルスは侍女の元に走った。


 中庭では、多くの住人が倒れていた。頭を撃ち抜かれ即死している者もいるが、大部分は怪我を負いながらも生きていた。

 侍女のもとに駆け寄る。侍女は顔に礫が当たったらしく、顔が血で覆われていた。しかし息はあるようで、荒い呼吸音が聞こえた。赤ん坊の泣き声は、倒れた侍女の下から聞こえてくる。


「大丈夫か」

 侍女を助け起こし、赤ん坊を確認する。侍女が胸に抱いていたのは、間違いなく姪のソネットだった。

 カルスは姪を胸に抱き、倒れた侍女を立たせようとしたが、侍女は気を失っているらしく立てない。


「おい、無事な者はいるか? 怪我人を助けるんだ! 動ける者がいれば、怪我人をとにかく城館から運び出せ!」

 カルスは声を張り上げる、城館にはまだ兵士が残っていたはずだが、ここにいるのは住民ばかりだった。兵士たちは先に逃げてしまったらしい。

 カルスの声に何人かは立ち上がるが、自分で歩くのが精いっぱい。ほとんどの者は立ち上がる事すらできなかった。


「ほれ、しっかりしろ。立つんだ、這ってでも逃げろ」

 カルスはうめいていた男に手を貸し、無理やり立たせる。痛いのはわかるが、ここで倒れていては死ぬだけだ。



おかげさまで、ロメリア戦記が発売されました。

発売記念として、何かしようと思たのですが、あんまりいいアイデアが浮かびませんでした。

とりあえず安直に人気投票と、質問に答えるコーナーにしようと思います。

活動報告にコーナーを作りますので、投票や質問をしてください。

人気投票では、投票が多かったキャラの登場シーンが増えるかもしれません。(あくまでかもだけど)

質問コーナーはネタバレになることと、個人的なこと以外は答えます。

それでは、これからもよろしくお願いします。


追記、ダンジョンマスターマダラメの更新は明日となります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 橋を爆破した身なりのいい男たちがアホ領主たちだとすると それより先に逃げたはずのキュロットを追い抜いた…ということかな。 どんだけ逃げ足が速いんだ(´⊙ω⊙`)
[気になる点] 駄目な人類に代わって主人公達が活躍する物語かと思ってたけど、これから先もずっと痛い目に会い続けるのかな…
[一言] 老いを自覚してなかったのか
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