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【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第二章 メビュウム内海編~港を造って交易をおこなうことにした~

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第四十六話 炎獅子号④

ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!

ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。

こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

マグコミ様で連載中ですよ。



 アンの刃により、ゼゼの腹部が切り裂かれる。

「ゼゼ!」

 私は思わず叫ぶ。ゼゼは後ろに倒れ、刺された腹を押さえる。指の間から血が滲み出し、服を赤く染めていく。

 私は右手を強く握りしめた。全ては私の責任だった。


 たとえ子供であっても、武器を持ち立ちはだかる以上、斬れと命じなければいけなかった。決断しきれない私の甘さが、部下を損なう事態を招いたのだ。

 全ては私の不覚悟が原因である。


「……っ! この者を……」

「待ってください!」

 アンを斬れと命じようとしたその時、力強い声が制した。手に長い木材を持つジニであった。


「その命令は待ってください」

 ジニは腹部を押さえるゼゼと、血に染まった剣を手にするアンを見て長い息を吐いた。そして手に持つ木材をその場に捨てると、アンに向かって歩いて行く。


 ゼゼと同じことをするのかと思ったが違った。途中でジニは足を止めた。彼の足元には、銀翼号の船員が落とした剣が転がっている。ジニは足の甲に刀身を引っかけて、剣を蹴り上げて空中で柄を掴む。そして二、三回素振りをした後、剣を右手に携えアンに向かう。


「ジニ……駄目だ。あの子を殺さないで」

 ゼゼは痛みに顔を歪めながらも、同郷の幼馴染に懇願する。


「安心しろ、ゼゼ。今からは、誰も死にはしない」

 剣をだらりと下げたジニは、アンとその背にいるメアリーさんを見据えまっすぐに進む。その歩みはあまりにも無造作で、無人の野を歩むが如くアンの間合いに入り込む。


 アンが剣を振りかぶり、ジニに斬りかかった。

 ジニの胸が斬り裂かれ、銀翼号の甲板に鮮血が散る。

 誰もが息を呑んだ。だが斬られたジニは倒れない。攻撃を受けた瞬間、半歩下がり致命傷を避けている。斬られてなお踏みとどまったジニは、一歩前に出て剣を差し出す。そしてアンの首の前で剣を止めた。


 剣を突きつけられたアンは、慌てて後ろに下がる。

 斬られたジニは胸から血を零しながらも、アンとメアリーさんに向かって歩む。その腕は下がり、構えはせずに無防備なままだ。

 不可解なジニの行動に、アンも思わず後ろに下がる。だが背後には守るべきメアリーさんがいる。後退を続ければメアリーさんのもとに辿り着かれてしまう。追い返すには攻撃するしかない。


 アンは再度斬りかかった。対するジニは体を斬られるも致命傷は回避し、そして一歩前に出て、剣を突きつけてアンを下がらせる。

 そんなやり取りが五回程続いた。ジニは何度も斬られ、体中血まみれとなっている。しかし、倒れない。


「お嬢さん、これは……」

 私のもとにやってきたモーリス船長が、アンとジニのやり取りを見て呟く。

 ジニは斬ろうと思えば、いつでもアンを斬れた。しかし斬らない。ジニは斬らないつもりだ。


「ええ、手は出さないでください」

 私は手を固く握りしめ、ジニを見守る。ボレルとガットもジニがやろうとしていることを理解し、手は出さない。


「一体! お前は! 何が! したいんだ!」

 たまりかねたアンが、肩で息をしながら叫ぶ。当のアンも、ジニがその気であれば自分を斬れていたことに気付いている。


「お前を、斬りたくはない」

 血まみれのジニが口を開く。ギリギリのところで回避しているとはいえ、大量の血を失い顔は蒼白となっている。だが目は力を持ち、アンをしっかりと見据えていた。


「だが斬らせたくもない。なら、こうするしかない」

「ふざ、けるな!」

 叫ぶアンだが、その声に力はない。血まみれのジニに対し、アンは傷一つ負っていなかった。だがアンは、今にも倒れそうになっている。


 実戦での空振りは、予想以上に体力を奪う。ただの素振りと違い、相手を斬るつもりの一撃は全身の力を使うためだ。訓練を受けた兵士でも、実戦で空振りを続ければ疲弊する。体が出来ていない女の子であれば尚更だ。

 空振りを誘ってアンの体力を奪い去る。それがジニの狙いだった。だがこの方法は大きな代償が伴う。


 ジニの体から、大量の血が流れ落ちる。

 ジニはロメ隊の中でも、見切りを得意とする目を持っている。だが空振りを誘うには、相手が絶対に当たると思うほど深く踏み込まねばならない。それを完全に回避することは出来ず、僅かに刃が体をかすめるのだ。


 ジニの行動はまさに命がけなのだ。

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