表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化決定】ロメリア戦記~魔王を倒した後も人類やばそうだから軍隊組織した~  作者: 有山リョウ
第二章 メビュウム内海編~港を造って交易をおこなうことにした~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/464

第四十五話 炎獅子号③

ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!

ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。

こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。

小学館ガガガブックス様よりロメリア戦記が発売中です。

BLADEコミックス様より、上戸先生の手によるコミカライズ版ロメリア戦記も発売中です。

マグコミ様で連載中ですよ。



 私とメアリーさんの話を聞いていたボーンが、僅かに身をたわめる。だが後ろに飛んで逃げようとした瞬間、足元に短剣が突き立てられた。ボーンが体を震わせ、葉巻の灰を零す。

 投擲用の短剣を投げたのは、メアリーさんに剣を突きつけているカイルだった。その左腕は懐から新たな短剣を抜いて構えている。


「逃しませんよ、ボーンさん。貴方はライオネル王国の貴族を殺害しようとしたのです。これは国際問題です。ヴァール諸島には責任をとってもらいます」

「おいおい、誘拐したのはメアリーだろ」

 ボーンはメアリーさんを指差して、責任をなすりつける。


「ですが裏で糸を引いていたのは貴方でしょう? なに、命は取りません。ハメイル王国から送られたという手紙をくれれば、解放しましょう」

 私は笑って答え、炎獅子号の船尾を一瞥した。

 炎獅子号の船長室には、私の誘拐を指示したハメイル王国の手紙があるはずだ。


「お前、最初からそれが目的で、捕まったふりをしていたのか!」

 額に汗を流すボーンに対し、私は鼻で笑って返した。


 現在ライオネル王国とハメイル王国は、魔王軍という共通の敵に対抗するため同盟を組んでいる。だがこの同盟は表面上のものであり、両国は手を取り合いつつも、足では互いを蹴り合っている。


 形だけの同盟にしか過ぎないが、しかしそれでも同盟は同盟だ。もしここで私の誘拐を示唆する手紙が出てくれば、ハメイル王国は国際的に非難されるだろう。手紙を確保出来れば、ハメイル王国に対する外交カードになりうる。

 私はその手紙を手に入れたかった。そのためにカイルをメアリーさんの船に忍び込ませ、自ら人質となり、ボーンがやって来るこの状況を作ったのだ。


「可愛い顔して、なんて嬢ちゃんだ……」

 葉巻を咥えたボーンが息を呑む。活路を求めて目を走らせているが、銀翼号の子供達は次々に海に投げ込まれて数は減り続けていた。炎獅子号の船員達は弓を構え戦闘準備に入っているものの、船長であるボーンが捕らえられていて手が出せない。


 ボーンはメアリーさんを丸め込むために、身一つで銀翼号に乗り込んで来た。今やそれが裏目に出ている。


「さて、メアリーさん。勝負はつきました。降伏してください。悪いようにはしません」

 私はメアリーさんに視線を移す。銀翼号の制圧は時間の問題だ。だがその前に降伏してほしい。子供達を海に落とさなくて済む。

 降伏を促され、メアリーさんの視線が彷徨う。


「まだです!」

 弾けたような声を上げたのは、顔に火傷を持つ少女アンだった。彼女は私やカイルではなく、ポーラさんに刃を向ける。


「カイル!」

 私はポーラさんを助けるように指示を出す。カイルは猫科の肉食獣のように体を跳ねさせ、ポーラさんの前に飛び出してアンの剣を防ぐ。


 ポーラさんは助かったが、メアリーさんはアンの背後に逃げる。またボーンも好機とばかりに、葉巻の煙を残して海へと飛び込み逃げていく。


 私はアンとメアリーさんを警戒しつつ、逃げたボーンの行方を目で追う。

 ボーンは泳いで炎獅子号へと向かう。炎獅子号の船員達は、ボーンの回収に動き始める。

 私は歯噛みした。ボーンを逃したのは痛い。だが今は銀翼号の制圧が優先だ。


「メアリーさん、もはや大勢は決しました。抵抗してどうなるというのです」

 私はアンに守られたメアリーさんを見る。彼女も劣勢を理解しており、視線が泳いでいる。


「アン……」

「駄目です!」

 口を開きかけたメアリーさんを止めたのは、剣を握るアンだった。


「まだです! まだ終われません! こんなところで、私達は!」

 アンの叫びは慟哭となっていた。


 銀翼号の各所からも、同じような声が上がる。子供達のほとんどは、劣勢を自覚して腰が引けている。だが何人かの子供は、頑なに戦うことを止めない。彼ら、彼女らは、まるで憎しみにしがみついているように叫んでいた。

 甲板に木材が投げ出され、乾いた音を立てて転がる。目を向ければゼゼがいた。


「アン、もうやめるんだ」

 武器として使っていた木材を捨てたゼゼは、無手となった両手を広げてアンに歩み寄る。

「ゼゼ! 馬鹿、やめろ!」

 ジニが叫び、ボレルやガットも息を呑む。しかしゼゼの足は止まらず、ゆっくりとアンに歩み寄る。


「もうやめるんだ。誰も君を傷つけたりはしない」

「来るな!」

 歩み寄るゼゼに、アンが剣を向ける。

 アンの目は憎悪に燃えている。だがその剣は震えていた。


「アン」

 ゼゼが名を呼び、さらに一歩踏み込む。すでにゼゼはアンの間合いにいる。いつ斬られてもおかしくはない。だがそれでもなお、ゼゼは一歩前に出る。次の瞬間、アンが叫び剣を突き出す。剣の切っ先がゼゼの腹部に突き刺さった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ