第二十二話 メルカ島⑤
ロメリア戦記のアニメ化が決まりました!
ロメリア戦記がアニメになります。続報は判明次第、ご報告させていただきます。
こうしてアニメになるのも、応援してくれているファンの皆様のおかげです。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。
いつも感想やブックマーク、評価や誤字脱字の指摘などありがとうございます。
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「この屋敷の中庭に、島の男衆を集めましょう。女衆は別に集めて話をしてみてはどうです?」
二手に分かれるモーリス船長の提案に、私は首肯する。これがいい結果になるか分からないが、まずはやってみて感触を掴むしかない。
「よし、それならレベッカ」
モーリス船長は、部屋に残っていたレベッカさんに声をかける。
「お前は女衆に声をかけて集めてくれ。場所はそうだな……港の広場にある酒場がいいだろう」
レベッカさんはモーリス船長の指示に対し、三白眼を微動だにさせず頷く。
「そうだ、ロメ隊長。島民に対する演説ですが、俺にさせてもらえませんか?」
アルが前に出て名乗りを上げる。その顔は自信ありげな笑みを湛えていた。
「演説、出来るのですか?」
「ええ、任せてください。一つぶち上げてやりますよ!」
アルはぐっと拳を固めてみせる。
「ならロメリア様。女性陣の対応は僕に任せてもらえませんか? アルよりも多くの賛同を得てみせますよ」
レイが一歩前に踏み出す。
アルがレイを睨み、レイも見返す。互いの視線がぶつかり合い火花を散らす。
「ほぉ、煽ってくるじゃないか」
「ほら、僕のほうが人に好かれやすいし」
「おもしれぇ、どっちが多くの人を集められるか、勝負といこうじゃねぇか」
「望むところ! ロメリア様やっていいですか?」
アルとレイが二人して私を見る。私はため息で答えた。
「……まぁいいでしょうやってみなさい」
勝手に盛り上がる二人に対して、私は許可を出した。
今回は様子見だ。競わせるのもいいかもしれない。私は後方から、島民の反応を見ておこう。
「では二手に分かれましょうか」
私はそれぞれに人を割り振った。ラディック邸で男性陣の勧誘をするのが、私、アル、ポーラさん、ジニの四人。レイと共に女性陣の勧誘をボレル、ガット、そしてゼゼに任せる。
「よし、行こう!」
レイが意気揚々と、食堂から出ていこうとする。その背をボレルとガットが追い、レベッカさんが続く。そして最後にゼゼが足取り重くついて行く。
私は出発する彼らの背中を、視線で追いかけた。
どうにも気になった。レイが上手く女性を勧誘出来るかどうかも気になるが、それ以上に気掛かりなのが、ゼゼの態度だった。
メルカ島に来てからというもの、ゼゼの様子がおかしかった。
ゼゼはいつも底抜けに明るく、人の気持ちを和らげる天性の素質があった。だが島に到着してからというもの、太陽が陰ったように暗くなっている。
「ジニ。ゼゼの様子がおかしい気がするのですが、何か分かりますか?」
私は残っているジニに尋ねた。彼はゼゼと同郷で仲がいい。なにか知っているかもしれない。
「ロメリア様も気付きましたか」
ジニはため息を吐いた。彼もゼゼの変化に気付いている。
「多分ですけど、島で見た子供ですよ」
ジニに言われ、私は港で見た子供達を思い出した。まだ五歳ぐらいだろうか、歳の割に手足が細く痩せていたのが印象的だった。島の経済状態が悪く、食料が不足しているのだろう。
「ゼゼは怪我をしていたり、痩せている子供を見ると駄目なんですよ」
ジニは俯き苦しげに顔を顰めた。
「ロメリア様だから言いますけど、ゼゼの父親はいい人間ではありませんでした。母親が病死してからはジニをよく殴り、食事も碌に与えませんでした。ゼゼには妹がいたんですが、幼い頃に死んでしまって……。痩せた子供を見ると、妹のことを思い出すんでしょう」
ジニが教えてくれたゼゼの過去は、驚きのものだった。普段明るいゼゼが、過酷ともいえる子供時代を過ごしていたとは想像もしなかった。
「まぁ昔の話ですから、大丈夫だとは思うんですが……」
ジニが呟きと共に目を伏せる。ジニの言うように、時間がゼゼの心を癒したと思いたい。しかし心の傷は治ったと思っても、小さなきっかけで簡単に開く。全てはゼゼ次第だった。




